青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第86回

第86回 – 2008年1月

子どもポルノに関する状況について

中学生モニターについて …など

1月22日に開催した今年度第9回青少年委員会(通算86回)では、継続審議となっている子どもポルノについて、ECPAT(エクパット)/ストップ子ども買春の会共同代表・宮本潤子氏を招き、子どもポルノ、特に男児ポルノに対する世界の潮流や日本の現状についてレクチャーを受けた後、質疑応答を行った。また、1月分の中学生モニター報告を基に審議したほか、中学生フォーラムと調査・研究について検討した。

議事の詳細

日時
2008年1月22日(火)
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題

ECPATについて

ECPATは、1990年にタイのチェンマイで開催された「現代奴隷制の中の子ども達」という国際協議会の決議に基づき、アジア観光における子ども買春根絶国際キャンペーン=ECPAT(End Child Prostitution in Asian Tourism)としてスタートした。その後、国際ECPAT(End Child Prostitution,Child Pornography And Trafficking in Children for Sexual Purposes 国際事務局:バンコク)が設立され、現在は国連NGOとしてアジアや欧米諸国を中心に世界的な活動を展開している。ECPAT/ストップ子ども買春の会は、ECPATの日本での活動を担う公式関連団体として1992年に発足し、子ども買春・子どもポルノ根絶の活動を行っている。

今委員会では、宮本潤子氏に子どもポルノ、特に男児ポルノに対する世界の潮流や日本の現状について話を聞いた。

子どもポルノに関する状況について

(宮本潤子氏レクチャー概要)

子どもに対する性的暴力については、1990年のチェンマイ会議から20年近い活動の中で、国際世論も高まり、子どもの権利条約が発効されるなど改善された部分はあるが、インターネットの発達や各国の事情によりさらに悪化している状況である。

日本でも、子どものポルノグラフィーは昔からあったが、インターネットの発達で最悪な状況を作り出している。インターネット上の子どもポルノに関するサイトがどのくらいあるのか、正確な数字を出すことは難しいが、いくつかの調査からも近年増えていることは確かである。

子どもポルノの状況が年々悪化していることの最も大きな理由は、子どもポルノに対する法整備が世界的に遅れていることである。ここ数年の日本におけるインターネット上の子どもポルノの特徴の1つは、出会い系サイトを利用した児童買春による性的虐待を撮った画像が多く出回っていることである。一旦インターネット上に出てしまった画像は、どんどん複製され増え続けていく。最近ではIT業界も協力的で、削除するなどしているが全く追いつかない状態である。

また、子どもを盗撮したものが野放し状態になっていて、これも深刻な問題になっている。盗撮された側が訴えれば何らかの動きができるが、自分の子どもが盗撮されていること自体知らず、盗撮物がどんどん出回ってしまっている。

(男児ポルノの画像等がどの程度流通しているのか、また男児が被害者となる事件はどの程度起きているのか)

日本の子どもポルノの場合、ほとんどの被害者が女の子だったが、最近の新聞等の報道をみると男の子の被害も増えてきている。

現在、日本の子どもポルノの全検挙件数のうち、男女別の被害件数、被害者の数は出されていない。

ただ、日本のインターネットホットラインセンターに寄せられた通報によれば2割弱が男児ポルノである。また、英国の子どもポルノに焦点を絞ったインターネットのホットラインでも、男女の割合は2:8という数字が出ている。

昨年の7月、男児ポルノサイトとしては国内最大級のものと思われるサイトが神奈川県警に摘発され、3年間で684万件のアクセスがあったことが分かった。このアクセス数の多さを見ても、男児が子どもポルノの被害者となるケースが増加傾向にあることが分かる。

(男児ポルノの被害とテレビ、アニメ、DVD、インターネット等との因果関係はあるのか)

はっきり断定することは難しいと思うが、臨床心理学者のエセル・クエール氏は講演の中で、「子どもを性的対象とするような犯罪傾向がある人やこういった行動に関心のある人の場合、子どもポルノの写真等を見ることによってその傾向を増長させることは、イギリスの関係者の研究でも裏付けることができる」と発言している。つまり、直接の原因ではないが画像を見ることによってその種の犯罪を犯す可能性が増大することは確かであると言っておられる。

子どもポルノを見ることと実際に接触犯罪を犯すこととの間には、すぐの因果関係は必ずしも出てこないが、受動的に見続け習慣化することで犯罪に至る可能性が増すということである。

また、子どもポルノ、子ども買春といった子どもに対する性的虐待を行っている人の大多数は、医学的な意味での小児性愛者ではない。”状況的性搾取者”という、いわゆる普通の性的指向を持った人達が子どもポルノを求め所持しているわけだが、このことを問題にすべきと考えている。

(子どもポルノに関して、日本は世界と比較してどのような位置にあるのか)

日本ではインターネットを通して簡単に子どもポルノを購入・入手し所持することができるため、ほかの先進諸国からは、日本は子どもポルノの製造を禁止しながら、消費を禁止していないとして、規制が求められている。

また、インターネットでの子どもポルノは、コンピュータに取り込んだ写真を画像処理して変形させた”モーフィング”画像と呼ばれるものが多く出回っている。最近ではコンピュータ技術が進んで、部分的に非常に精巧に変えられるので、どこがモーフィングされているのか分からないものも多い。

こういったモーフィングされたものには、現行の児童買春・児童ポルノ禁止法の定義の狭さや弱さゆえに適用にならないことがあるが、明らかに子どもに対する人権侵害だと思われるものについては、ECPATとしてプロバイダーや業界に対して削除をするなどの要望をしている。

ドイツでは、単に子どもポルノを禁止するだけではなく、子どもを守るための青少年保護法という法律があり、その一つに、未成年の子どもを不自然に性的なポジションで撮影して見せることに対し、誰かに渡す、売る、プロモートする、などを禁止して子どもの性的搾取を防ぐ努力をしている。アメリカも子どもの性的虐待に対しては、連邦と州のレベルで次々と法律を改正しているようで、日本とは法整備の速さが違うという印象を受けた。

日本の子どもポルノに関する対応について、ほかの先進諸国からの要請として、インターネット悪用への規制が強く求められている。この機会に子どもポルノの現状を広く知ってもらいたい。

【質疑応答】(▽委員、▼宮本氏の発言)

▽日本の社会の中で、男児ポルノの実態は一般的に知られていることなのか。
▼男児ポルノについては、特に知らない人が多いのではないか。日本の場合、1999年に「児童買春・児童ポルノ禁止法」ができ、”児童ポルノ”という法律用語は子どもへの性的虐待を意味しているが、それ以前はポルノ=わいせつ性の問題というふうに思われていた。また、子どもの虐待画像は商業目的だけで売買されているわけではなく、お金にかかわらずやり取りする者もいる。
▽子どもポルノの危機的状況について、日本のメディアに望むことは。
▼日本のメディアは、この社会が以前のように子どもの裸を自然でかわいいと言っているだけの社会ではなくなってきていることを自覚しなくてはならない。また、特にテレビには影響力があるので、そのことも自覚してほしい。テレビは比較的長い歴史の中で、改革するシステムを持ってきているので、事態を変えることはできると思う。特に思春期以前の子どもを出演させるときには、法律云々以前に、年少者への配慮を徹底してほしい。不自然に性的な写され方をすることで、子ども達は傷つくし、子ども自身そのことを感じていることを分かってほしい。番組の制作者は、メディアの中で「子どもの性」が商品として使われている現実を認識するべきだ。
▽青少年委員会としては、女児だけでなく男児の裸の扱いについて提言を行うことも考えているが、どこに基準を置けばいいのか。
▼テレビの制作者はその道のプロ達であり、いろいろな表現方法を選択できるはずである。工夫し、子どもの性的な尊厳を冒さない作り方を考えてほしい。テレビ局の自主的な取り組みとして、番組の趣旨に応じて、子どもに配慮するべき点を具体的に提示していくこともひとつではないか。

中学生モニターについて

今月は33人から、「年末年始の特別番組について」50件(1人で複数件の報告有)の報告が寄せられた。分野別ではバラエティーが断然多く26件、続いてドラマが9件、そして音楽番組が7件、情報・討論番組とラジオ番組が3件などと続いた。

局別では、フジテレビ系16件、日本テレビ系13件、NHK7件、テレビ朝日系6件、TBS系とテレビ東京系と東海ラジオが2件ずつ、福岡放送とCBCラジオが1件ずつだった。

・バラエティー番組について

バラエティーで一番多く3件報告が寄せられたのは『ガキの使いやあらへんで!!』だった。「この番組は本当に笑いました。有名な芸能人がやってきて、出演者を笑わせる番組で、笑いをこらえようとしても、どうしても笑ってしまいました」などと概ね好評だったが、罰ゲームについては意見が分かれ「麻酔をかけたという設定で、何をしても動かないようにして、スリッパでその人の顔をおもいっきりたたいたり・・・、こういう暴力のようなものは、もう少しひかえた方がいいのではないか」、「メンバーが笑うとおしりをいきおいよくたたかれるのが痛々しい。それくらいの罰ゲームは特に影響は無いが、おもしろい流れがとまるのは、あまりよくない」など否定的意見が2件、「この番組は特に罰ゲームが番組を面白くしていると思うので、必要だと思う」という肯定的な意見が1件だった。

2件報告があった3番組も概ね好評で『全日本仮装大賞』には「楽しんで見られる仮装の裏にはたくさんの努力があるのだと考えると、すごいなぁとつい感動してしまう」などの意見が、『超「ぷっ」すま』にも「普段は見られない、SMAP草薙剛さんたちの素顔が包み隠さず他のゲストたちによって引き剥がされていきます。これからもこんな面白くて、罰ゲームを気分良く感じられる番組は続けていってほしい」という意見が寄せられた。ただ『志村&所の戦うお正月2008』には1件、「大きな車でわざとせまい山道や駐車場を走行させ、何かわざと破壊している感じがして見ていてとても不愉快でした。おもしろい企画も結構ですが、もう少し世論や社会に与える影響を考えて欲しい」という批判があった。

また17番組に1件ずつ報告があったが、6番組が大好評だった。『ぐるナイ最後の結果発表』は「家族みんなで楽しみながら見ていました。やらせではなく本当にガチンコでやっているという感じがしっかりと伝わってきて、見ている方がドキドキしました」、『ゴールドラッシュ2008』は「1分間という短い時間で、ネタが繰り出されるのでそのスリル感にも目がいってしまう。さらに、お笑いのジャンル(一発ギャグ、モノマネetc)が、ステージによって変わっているので、芸人のいろんな芸が見られる」、『はねるのトびら』は「私がマネしたいと思ったのは”回転SUSHI”の中でお笑い芸人が言っていたギャグだ。めでたいお正月くらいは幸せになれてマネしたくなる放送内容を放送してほしいものだ」、『小学校教科書クイズ』は「久々に真面目で楽しめた番組だった。現役小学生にとっては、”予習”としても使えたのではないでしょうか」、『これこそ!わが町 元気魂』は「やっていることが『出没!アド街ック天国』の最後のところ(その地域のCMを放送している)に似ていて、それのスペシャルのようだったのですが、見ごたえがあり最後まであきずに楽しく見ることができました」、『秘密のケンミンSHOW』は「47都道府県出身の芸能人が勢ぞろいして、その県ならではの方言や食文化、生産№1の物などを発表するという面白い方針です。同じ日本でも、まったく異なった面がたくさんあるんだなぁと思うと、とても不思議でおもしろいなぁと思います」などだった。

批判意見は4番組に寄せられた。『めちゃ2イケてるッ!』には「”シンクロナイズドテイスティング”というコーナーで氷と冷水のプールに落下した後、お湯に飛び込んでいる出演者を観客やその他の出演者は笑っています。そんな姿を見るととても辛くなります」、『愛のエプロン』には「魚や肉、野菜など農家の方たちが大切に育てたものを、あんな風にするのはどうかと思います。あのような料理を見ながら食事をするのは気持ちが悪いです」、『志村けんのバカ殿様』には「私はこの番組を見て、これこそテレビでは流さないほうがいい暴力シーン、性的表現なのではと疑問をもちました」、『理由ある太郎』には「テレビ欄を見て面白そうだなぁと思って楽しみにしていたけど、内容は少しくだらなく期待はずれなものだった」、などの批判だった。

・ドラマ番組

ドラマでは『のだめカンタービレinヨーロッパ』に4件、『あんみつ姫』に3件報告があり、いずれも好評だった。『のだめ・・・』には「舞台をヨーロッパにしたため、新しいキャラクター等も出てきて、新鮮で良かった。そもそもこのドラマの登場人物自体、個性的なのでパンチが効いててとても笑えたし飽きなかった」など、『あんみつ姫』には「展開が速く、あきさせないストーリー作りも良かったです。そして着物も少しくずしてあったり、現代版になっていて私たち若者世代でも楽しめるようになっていました。普通の連続ドラマでは見られないとても素敵なドラマでした」などの意見が寄せられた。

・その他の番組

その他で複数意見が寄せられたのは『NHK紅白歌合戦』5件、『ジャニーズ・カウントダウン』2件だった。『紅白歌合戦』は「約4時間、歌だけをながすことで改めて歌の力を教えてくれたことに、とても感動しました」などと概ね好評だったが、「つるべえさんは下品な言葉が多くイライラしました」という意見もあった。『ジャニーズ・・・』は2件とも「この番組を見ながら年を越すと1年が楽しく過ごせる気がします」などと好評だった。

2月のモニター報告は、2月中旬までひと月ほどの間に見た番組についての感想・批判・期待など。

中学生フォーラムについて

3月26日(水)に千代田放送会館で開催する第7回中学生フォーラムについて、小田桐委員から下記のとおり構成案などについて報告があった。

  • 第7回中学生フォーラムのテーマは、”バラエティー”に絞る。
  • 出演者は、中学生モニター15人、制作者側4~5人。司会は、木場弘子さん(キャスター・千葉大学特命教授)にお願いする。また、制作者のOBの出演も考えている。議論の展開によっては会場の保護者からも発言を求める。
  • モニターvs制作者といった構図ではなく、様々な議論を展開し、結論が出なくてもいいのではないかと考えている。
  • バラエティーの罰ゲームや笑いについて、お笑いタレントや制作者にインタビューを行い、当日、映像で流すこともひとつの案として出ている。
  • 会場のレイアウトは、出演者を真ん中にして、両側に参加者を配置する方法を考えている。
  • 出演者などの詳細な点については、次回委員会で報告を行うこととする。

調査・研究について

来年度の調査・研究については、橋元副委員長を中心に検討することとなった。

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