在京局報道担当者との意見交換会・勉強会 概要
青少年委員会は11月25日、「報道における青少年の扱いについて」をテーマに、在京テレビ各社(NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、東京MXテレビ)との「意見交換会・勉強会」を千代田放送会館で開催しました。各局からは、報道・情報番組の担当者など23人、青少年委員会からは汐見稔幸委員長ら7人の全委員が参加し、論議が交わされました。また、高木光太郎・青山学院大学社会情報学部教授をお招きし、ご講演いただきました。
司会役は渡邊淳子委員が務め、まず、事件関係者である青少年にインタビューする際に留意している点などについて、各局から説明がありました。各局からは、「原則として、中学生以下の場合は保護者の了解を必要条件としている。それ以上の未成年者についても必要な配慮をしている」「近年、SNSが社会に浸透していることなどから、取材する側、される側の想像を超えて情報が拡散することもあり得るので、さらなる配慮をしている」「青少年が被害者や目撃者である場合は、事件の全体像などを視聴者に伝えるために必要不可欠な場合のみ行うこととしている」などの発言がありました。
続いて、高木光太郎青山学院大学社会情報学部教授から、「子どもへのインタビューをめぐって~法心理学の視点~」と題する講演がありました。高木教授からは、刑事事件裁判での供述の信用性を心理学的に評価してきた立場から、「十分な知識がない人が子どもに話を聞いた場合、子どもの記憶が変わってしまうことがあることから、イギリスでは全警察官が子どもから適切に話を聞くための訓練を受けている」「小さい子どもは、自分の記憶、伝聞情報、空想を明確に区別していないと言われており、思い込みや大人の意見への迎合性が強いため、聴き取りに際しては一定の技法を用いることが重要である」など、子どもから話を聞くための技法や事例などについて説明がありました。また、「スピーディーかつ的確に子どもを取材する方法について、各局の現場における研究を進めてほしい」との提言がありました。
その後の意見交換では、各局から、青少年へのインタビュー取材に細心の注意を持って臨むのは当然のこととしたうえで、「青少年が事件・事故の被害にあった際、当該被害者の人物をよく知る同級生などにインタビューを行うことがあるが、具体的な事件・事故の輪郭について視聴者に関心を持ってもらうための1つの材料と考えて実施している」「青少年への取材に限らず、少しでも多くの事実を集め、客観的に判断して報道することが基本姿勢である」などの考えが示されました。そのうえで、「取材時以上に、テレビで放送する際の影響は大きいので、その段階でもあらためて、当該インタビュー映像の使用について検討する必要があろう」「記者やデスクとの意思疎通を日常的に図っておきたい」「記者などへの事前教育を行ったうえで、取材をしっかりさせたい」など、青少年への配慮についての意識をより高めていきたい旨の発言もありました。
一方、委員からは、被取材者の年齢を考慮したPTSDへのさらなる配慮や、取材後のケアの充実を求める意見がありました。
汐見委員長からは、「取材する側には視聴者に事実を伝える義務があるが、一方で取材される側にも様々な権利がある。真実の追及に取材は不可欠だが、取材される側の論理も念頭に置いて行うことが、ますます求められていることを認識してほしい。また、高木教授の講演を聞いて、取材する側には一定のスキルが必要だと実感した。今回の意見交換会・勉強会が、放送局の若い人たちへの教育を行う上でのきっかけとなってくれれば幸いだ。これからも放送局と青少年委員会が議論しながら、より良い放送のあり方を探っていきたい」との、まとめの言葉があり、2時間30分にわたる話し合いを終了しました。
以上