青少年委員会

青少年委員会 意見交換会

2016年10月14日

意見交換会(立命館アジア太平洋大学)

◆概要◆

青少年委員会は青少年にとっての放送番組の向上を目指すとともに、「視聴者と放送事業者を結ぶ回路」としての機能も担っています。その活動の一環として、10月14日(金)の午後2時15分から5時までの間、立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)A棟3階第1会議室において、同校の学生と意見交換会を行いました。
意見交換会には、同校から7カ国12名の留学生を含む22名の学生、青少年委員会からは汐見委員長、最相副委員長、稲増委員、専門家として宇治橋祐之氏(NHK放送文化研究所・メディア研究部主任研究員)が参加しました。また、オブザーバーとしてNHKおよび在大分の放送局から6人が参加しました。

当日は意見交換に先立ち、BPOの役割や設立経緯について説明した後、同校の牧田正裕社会連携担当部長からあいさつがあり、その後、参加者全員が自己紹介を行い、稲増委員の司会進行で活発な意見交換が行われました。意見交換にあたっては、宇治橋氏から適宜、各国の放送事情などについて解説があったほか、在大分局からもそれぞれの実務経験を踏まえた発言がありました。
意見交換では、まず人気バラエティー番組でのお笑いタレントの"罰ゲームシーン"を視聴したうえで、学生たちから自身の感想や出身国での一般的な捉えられ方などについて発言がありました。その他、日本の放送と自国の放送の違い、日本のアニメや性的表現、ラジオなどについて意見交換しました。
汐見委員長からは「青少年委員会は本当に青少年にとって良い番組とは何だろうと考え続けています。子どもの頃に見たテレビが一生を方向づけることもあるはずです。そうした番組を作る力は放送局だけではなく、視聴している皆さんの様々な意見の中で作られていきます。放送は日本の文化です。それを外国の方が見たときにどう評価するのかとても興味がありました。いい機会になりました」との感想がありました。
最後に最相副委員長から「日本が自慢できるものは長らく技術に偏っていましたが、近年、テレビは素晴らしい番組をたくさん作り輸出してきました。皆さんも母国に持ち帰れるような、自慢できるような番組を探していただけたらと思います」と閉会のあいさつがありました。
意見交換の概要は次のとおりです。

【罰ゲームシーンについて】
「面白い番組だ。自国でもこのようなシーンが放送されているが、家庭に悪い影響を与えるとはとらえられていないと思う」(インドネシア)、「このような番組があれば自国でも人気が出ると思う」(シンガポール)など、番組の面白さに注目した好意的な意見が寄せられた一方、「このような番組は来日して初めて見た。とても面白いが、お笑いタレントの人たちが本当に危険かどうか判断しかねるので、もう少し軽めの罰ゲームでもいいのではないか」(メキシコ)、「バカバカしい内容で笑わせるのではなく、意義のあるお笑い番組を放送してほしい」(ベトナム)などの意見もありました。
日本人の学生からは「罰ゲームを見て、面白いという気持ちより怖いという気持ちの方が勝った」「自分が見る分には面白いと思うが、幼稚園児や小学生が真似するおそれがあると思う。親子一緒に視聴する必要があるのではないか」など、留学生に比べて"罰ゲーム"への否定的な意見が目立ちました。また、「BPOには『バラエティー番組などでの過激な演出がいじめを助長する』との意見が寄せられることが多いようだ。私はそうは思わないのだが、放送局の人はどう考えているのか」との質問があり、オブザーバーからは「直接的にはつながらないと個人的には思うが、乱暴な行為への抵抗感が薄れることも考えたい」などの発言がありました。

【日本の放送と自国の放送の違いについて】
「日本の番組はクリエイティブだ。アイデアが非常に面白い」(インドネシア)、「中国系なので、自国では中国の番組を良く見ていた。中国の番組と比べると日本の番組は真面目だ」(マレーシア)、「日本のドラマは恋愛ものだけではなく幅広い。見ると頑張ろうという気持ちになれる。人生のレッスンになるような番組が多い」(ベトナム)、「NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見て、頑張ろうという気持ちが湧いてきた」(インド)など、コンテンツの素晴らしさに触れる意見が多く寄せられました。報道については、「日本のメディアには自由がある。自国の放送は政府が管理しているので、政治に関するニュースが少ない」(ベトナム)「地震や台風などの災害時に文字情報などを有効に利用していて驚いた」(メキシコ)などの感想がありました。

【日本のアニメや性的表現について】
「自国で日本のアニメを見て日本の文化を学んだ。学校を舞台にしたアニメでは桜の季節に入学式があることや、正月に書初めをしていることなどを知り興味が湧いた。インターネットを通じて視聴している人が多いようだ」(メキシコ)、「自国で見ていた日本のアニメに少し性的なシーンがあり、親に注意されたことがある」(ベトナム)、「日本で制作されたアニメで仮に乱暴な言葉や性的な言葉が使われていても、自国で放送する際には違う言葉に翻訳されるので、特に問題にはなっていない」(インドネシア)、「胸を誇張したアニメキャラクターなどの存在には驚いた」(メキシコ)、「宗教的な問題で婚前交渉が許されない国の人も留学しており、日本の放送に驚いていた。しかし、彼らは人や国によって性的表現に対する意識や厳しさは違うことを理解し、それが日本の“当たり前”だと受け止めている」(日本)などの発言がありました。宇治橋氏からは「日本の放送の性的表現が各国と比較して緩いかと言うと一概には言えない。例えばヨーロッパではあれば裸のシーンは意外と多い面もある。それぞれの国の文化的、宗教的背景があり、その捉え方による」との解説がありました。

【ラジオについて】
「バイクツーリングが趣味なのでラジオをよく聴く。天気や災害情報を入手するのにとても役立っている。また、色々な音楽が聴けるのも魅力だ」(スリランカ)、「アメリカに留学した際にNHKの英語ニュースを聴いていた。日本での出来事を知りつつ勉強にもなり、とても便利だった」(日本)、「自国で大地震があった際、停電などでテレビが見られず情報が入らなかった。津波という現象を知らない人も多く、水が引いた海に入って多くの人が亡くなった。電池でも聴けるラジオがあれば津波の情報も入手できたと思うので、被害者数も相当違ったのではないか」(スリランカ)、「車を運転する際に音楽だけでは寂しいので、トークもあるラジオ番組を聴いている」などの意見がありました。委員からは「先日は大分でも大きな地震があったので、災害に対する不安を持っている留学生も多いと思う。阪神淡路大震災や東日本大震災では避難やライフラインの確保にラジオが大変役立った。ピンポイントで大事なことを伝えるのに適したメディアがラジオだ。外国語によるコミュニティーFMを自ら立ち上げることも考えてはどうか」などの発言がありました。

以上