「無許可スナック摘発報道への申立て」に関する委員会決定
2012年11月27日 放送局:株式会社テレビ神奈川
勧告:放送倫理上重大な問題あり(補足意見・意見付記)
テレビ神奈川が2012年4月、神奈川県警による無許可営業のスナック摘発と女性経営者の逮捕を現場で取材し、4月11日夜の『tvkNEWS930』でニュースとして放送したことに対し、この女性と家族から「軽微な罰金刑にもかかわらず、顔のアップ映像や、実名、自宅の住所等まで放送したのはプライバシーの侵害」等として申立てた事案。
2012年11月27日 第47号委員会決定
放送と人権等権利に関する委員会決定 第47号
- 申立人
- スナック経営者とその家族
- 被申立人
- 株式会社テレビ神奈川
- 苦情の対象となった番組
- 『tvkNEWS930』(月-金 午後9時30分~10時)
- 放送日時
- 2012年4月11日(水)
午後9時35分頃から1分9秒
本決定の概要
テレビ神奈川は2012年4月11日夜の『tvkNEWS930』内で、神奈川県警によるスナック女性経営者の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)違反の無許可営業の現行犯逮捕を実名、年齢、住所とともに放送した(以下、「本件放送」という)。冒頭にアナウンサーの「カメラは強制捜査から逮捕の瞬間までをとらえていました」とのコメントがあり、摘発現場を撮影した映像の存在を強調した構成だった。全体が1分9秒で、そのうち本人とはっきりと分かるかたちで、この女性経営者を写し出した映像が計4回37秒あった。顔のアップ映像や警察の車に連行される場面も含まれていた。
また、テレビ神奈川は本件放送を同社が運営するニュースサイトに動画とともに掲載した。ニュースサイトの項目は1週間で自動的に削除されたが、同社のサイトおよび、facebookページ、twitterアカウント等を通じて当該動画と静止画を閲覧できる状態が1か月以上続き、この女性経営者から抗議があるまで放置されていた。
本委員会は、女性経営者とその家族から本件放送によってプライバシー、肖像権を侵害され、名誉を毀損された等の申立てを受けて審理し、決定に至った。決定の概要は以下の通りである。
現行犯逮捕の事実を放送した本件放送の内容に誤りはないが、事案は風営法違反の中でも悪質性の比較的軽微な「無許可営業」(最終的に罰金50万円の略式命令)である。本件放送は、映像の存在を強調し、繰り返し女性経営者の映像を流した。その結果、この女性に対する過剰な制裁的・懲罰的効果が生じ、本人とその家族に精神的苦痛を与えた。この点で、本件放送は、プライバシー等に関する明確な権利侵害は認められないものの、「報道の自由」という観点を考慮しても、放送界がこれまで積み重ねてきた事件報道のあり方をめぐる議論を十分に踏まえた形跡はなく、人権への適切な配慮を著しく欠いており、放送倫理上重大な問題がある。
また、同社のサイトにテレビニュ―スがそのまま掲載され、かつ長期間閲覧可能な状態で放置されていた点、サイトの管理に問題があった。今後、適切な管理を行うことを要望する。
(決定の構成)
委員会決定は以下の構成をとっている。
I.事案の内容と経緯
- 1. 申立てに至る経緯
- 2. 放送内容の概要
- 3. 申立人の主張
- 4. 被申立人(放送局)の答弁
II.委員会の判断
- 1. はじめに
- 2.「報道の自由」の観点
- 3. プライバシー侵害と名誉毀損について
- 4. 肖像権をめぐって
- 5. 放送倫理上の問題
- 6. 抗議に対する対応
III.結論
- 補足意見
- 意見
IV.審理経過
2013年2月26日 委員会決定に対するテレビ神奈川の対応と取組み
目 次
- 1.広報及び放送対応
- 2.社内での報告・周知等
- 3.申立人に対して
- 4.番組審議委員会への対応
- 5.意見交換会の実施
- 6.報道部内での対策
- 7.動画配信について
- 8.放送倫理向上に向けた取り組みについて