放送人権委員会

委員会決定

2019年度一覧

「放送によって人権侵害を受けた」という申立てにより審理を行い、その結果を「委員会決定」として公表、掲載しています。

第71号 - 2020年2月14日 放送局:テレビ東京

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」に関する委員会決定

見解:要望あり
テレビ東京は、2018年5月16日、『ゆうがたサテライト』内で、オウム真理教の後継団体であるアレフの動向に関するニュースを放送した。その中に、アレフの信者である申立人が登場する部分があったが、申立人の顔にはボカシがかけられていたものの、音声の一部が加工されていなかった。
申立人は、再三撮影をしないよう訴えたにもかかわらず無断で全国放送され、肖像権とプライバシーが侵害された、さらに、取材や編集の方法において放送倫理上の問題もあるとして、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
委員会は、審理の結果、プライバシー、肖像権の侵害はなく、放送倫理上の問題もないと判断した。
ただし、委員会は、放送内容に高い公共性・公益性があるとしても、個人のプライバシー保護を徹底させることは、放送の目的と何ら矛盾することではなく、両立しうることであると考える。それは本件ニュースにもあてはまるとして、テレビ東京に対して、ボカシの濃さや音声加工についての技術的な処理の問題、事前のチェック体制など段取りの問題、プライバシー保護に対する関係者の意識の問題など、種々の観点から再発防止に向けた取り組みを強めることを要望した。

第70号 - 2019年10月30日 放送局:NHK

「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」に関する委員会決定

見解:問題なし
NHKは、2019年1月21日に「ニュースこまち845」(秋田県ローカル放送)で、情報公開請求などで明らかになった、過去5年間の県内国公立大学での教員のハラスメントによる処分に関するニュースを放送した。この中で県内の大学(放送では実名)で起きた3年前の事案について、匿名で「男性教員は、複数の学生に侮辱的な発言をしたことなどがアカデミックハラスメントと認定され、訓告の処分を受けた」と報じた。
この放送について、男性教員は「不正確な情報をあたかも実際に起きたかのように報道された。正常に勤務ができなくなった」として、NHKに対して謝罪を求め、委員会に申立書を提出した。
申立人は本件放送について「事実と異なる内容」と主張しているが、申立人が大学当局からハラスメントを理由に訓告措置を受けたこと自体は、申立人も認めている。
もし本件放送で「男性教員」が特定できるとすれば、その者の社会的評価を低下させる。しかし、本件放送には、大学名と男性教員であるということ以外、申立人に関する個人情報は含まれていないことなどから、申立人に対する名誉毀損は成立しない。また社会的評価をさらに低下させる新しい情報があったとすれば、名誉毀損が成立する可能性があるが、本件放送にある言動の具体例もとりわけ新たに申立人の社会的評価を低下させるものとは考えられない。したがって、この点でも申立人に対する名誉毀損は成立しない。
本件放送は、情報公開請求を通じて得た情報をもとにニュースとして伝えたものである。NHKの担当記者は大学当局に数回にわたって追加取材を行っている。放送倫理に求められる事実の正確性と真実に迫る努力などの観点に照らして、本件放送に放送倫理上の問題もない。