第147回 – 2009年5月
「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理
「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など
3件の審理事案のうち、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案と「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の実質審理が始まった。「派遣法・登録型導入報道」事案については、事情により今月は審理を見送った。
議事の詳細
- 日時
- 2009年5月19日(火) 午後4時~7時
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理
「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理
「派遣法・登録型報道」事案 審理日程の検討
4月の苦情概要
その他 - 出席者
- 堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員
「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理
先月の委員会で審理入りが決まり、今月から実質審理が始まった。
この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
番組は2008年10月19日放送のTBS「サンデージャポン」。「申立書」によると、子どもたちが並んでいる映像は行政代執行前日の記者会見で撮影されたもので、この映像をもとにコメンテーターらが「無理やり並べさせられてかわいそう」などとストーリーを展開させており、ねつ造以外のなにものでもなく、訂正放送も全くおざなりだとしている。そして、具体的な事実誤認とコメンテーターの誤った発言に触れた訂正放送と名誉毀損の具体的内容に触れた謝罪の放送などを求めている。
TBSは審理入りの決定を受けて「答弁書」を提出し、この中で「理事に直接謝罪し、事実誤認に関しては、訂正・お詫び放送を行ったことから当社としては意を尽くしたつもりでおります。」としている。当日の委員会では、同録ビデオを改めて視聴したあと、各委員がビデオ部分とコメンテーターによるスタジオトーク、訂正放送について意見や感想を述べあった。
委員会は、申立人の「反論書」とTBSの「再答弁書」の提出を受けて、6月の委員会も審理を続行し、その次の委員会でヒアリングを行うことを決めた。
「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理
先月の委員会で審理入りが決まり、今月から実質審理が始まった。
申立ては、東京都在住の勤務医らから、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故をめぐる判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、信用を失墜した。さらに申立人本人及びその関係者に事前に取材することもなく、一方に偏った不公平な報道であると訴えてきたもの。これに対しTBSは、医療事件をめぐる刑事判決と民事判決を比較しながら、医療機関には「最善の注意」を果たしてもらいたいとの観点から放送したもので、名誉を毀損したとの認識はない。また、医師側への「事前取材」がなかったとの指摘については、刑事と民事の判決を比較するに際しては必要不可欠なものとは考えてはいないと反論している。
委員会では、まずTBSから提出された同録ビデオを視聴した上、医師側から提出された「申立書」とTBS側から出された「答弁書」をもとに論点を整理し、議論に移った。この日の議論では、番組全体の内容と論調、スタジオでのゲストやコメンテーターの論評などについて意見が交わされた。この結果、申立人側から提出される予定の「反論書」、これに対する被申立人側からの「再答弁書」の提出を待ち、次回委員会でさらに論点を絞って審理を進めることとなった。
「派遣法・登録型報道」事案 審理日程の検討
この事案については先月の委員会で審理入りが決まったが、申立人側の事情を考慮して今月は審理を見送ることとし、今後のスケジュールについてのみ検討した。
なお、「サンデープロジェクト」はテレビ朝日と朝日放送の共同制作であることから、この事案の当該局はテレビ朝日と朝日放送の2局とすることになった。
4月の苦情概要
4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
(個人又は直接の関係人からの要請) - 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・71件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)
その他
- 「徳島・土地改良区横領事件報道」事案で、「重大な放送倫理違反」という「委員会決定」(3月30日に通知・公表)を受けたテレビ朝日で、5月14日に決定内容についての研修会が行われ、講師を務めた三宅委員長代行及び事務局より報告があった。
この研修会は「委員会決定」に対する局側の理解を深めてもらうとともに、局の現場の声を聞いて意思疎通を図る目的で開かれた。当該番組である『報道ステーション』のスタッフなど約80人が参加し、三宅委員長代行がパワーポイントによるレジュメを示しながらわかりやすく解説し、質問や疑問に答えた。三宅代行は「新しい試みであり今後の参考にしてほしい」と報告した。
報告を受けて堀野委員長は「『委員会決定』は局が姿勢を変えたり、考えたりしていく始まりであり、今後はこうして欲しいという趣旨からも、この試みを続けていく意味があると思う」と語った。 - 次回委員会は6月16日に開かれることとなった。また、6月29日に臨時の委員会を開くことを決めた。
以上