放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第151回

第151回 – 2009年8月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

6月29日に続いて臨時の委員会開催となった。8月7日に通知・公表が行われる「保育園」事案の「委員会決定」について最終確認が行われた。「割り箸」事案と「派遣法」事案の実質審理が行われ、「割り箸」事案では次回委員会でヒアリングが行われることになった。また、審理要請案件「拉致被害者家族からの訴え」について審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年8月4日(火) 午後3時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

本事案の「委員会決定」の通知・公表が8月7日に行われることになり、その最終確認が行われた。
本事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを、2008年10月19日のTBS『サンデージャポン』で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
* 8月7日、TBSに対し、重大な放送倫理違反があったとして、「勧告」が通知された。「委員会決定」の全文はこちらへ。)

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

本事案は、東京都在住の勤務医とその家族から、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害されたと申し立てられたもの。
8月4日の委員会では、番組の同録DVDを改めて視聴し、起草委員から提出された論点整理を基に、特に放送倫理上の問題点などについて審理を行った。次回、8月18日の委員会では、申立人、TBS双方に対するヒアリングを行い、直接意見を聞き、さらに審理を進めることとした。

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、この事案の審理入りが5月の委員会で決まっていた。この間、審理事案が多いことや申立人の都合などにより当事案の審理が遅れていたが、この日は6月委員会に次ぐ2回目の実質審理を行った。
この中では、申立人が強く主張している、「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りした捏造報道であり、派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込み、派遣切りなどの雇用不安を産みだした犯人だと攻撃された」という点などについて検討した。
この結果9月15日の委員会で双方へのヒアリングを行い、問題点を詰めることになった。

審理要請案件~拉致被害者家族らからの訴え

この案件は、2009年4月24日と5月29日に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の拉致問題についての発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下、「家族会」)と、その支援団体である「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(以下、「救う会」)から申立てがあったもの。
8月4日の委員会では、申立人から提出された「申立書」および「関連資料」、テレビ朝日から提出された「交渉の経緯と局の見解」、「関連資料」ならびに「番組同録DVD」をもとに、本件申立ての審理に入るかどうかを慎重に検討した。この結果、本件を家族会からの申立てとして審理に入ることを決定した。
4月24日放送の上記番組で、田原氏は北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「二人が生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。これに対し、家族会と救う会はテレビ朝日と田原氏に対し、「何の根拠もなく2人を生きていないと発言した。人の生死についての安易な発言は、名誉毀損やプライバシーの侵害以上に重大な人権侵害である」と抗議した。テレビ朝日と田原氏は文書と5月29日放送の上記番組とで謝罪し釈明したが、申立人らは納得せず、その後も双方の間で話し合いの場が持たれたが決着がつかなかった。

7月の苦情概要

7月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・45件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 放送人権委員会では、放送人権委員とBPO加盟各局との間での意見交換会を、毎年各地区で開いているが、今年は九州・沖縄地区の放送局を対象に、福岡で12月2日に開くことが決まった。事務局より報告し、了承された。
  • 『放送人権委員会判断基準 追補2009』がこのほど発行され、事務局より報告した。去年6月に発行された『BRC判断基準2008』に続くもので、2008年4月から2009年3月までに審理した4事案について示した判断基準をまとめた。サイズはB6変型版で71ページ。新たに「テレビ番組の文字情報によるインターネット配信」などの判断基準が盛り込まれている。加盟各社に配布するほか、入手希望の方には郵送料実費負担で頒布する。 (詳しくはトピックスへ)
  • 次回委員会は8月18日(火)に開かれることになった。

以上