放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第153回

第153回 – 2009年9月

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

「派遣法」事案の当事者に対するヒアリングと詰めの審理を行った。「割り箸」事案の審理では「委員会決定」案の内容について検討した。また、「拉致被害者家族からの訴え」事案については本格的な審理に向け、論点の整理を行った。このほか仲介・斡旋解決事案についての報告があった。

議事の詳細

日時
2009年 9月15日(火) 午後3時20分~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、 小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについて、申立人・被申立人からのヒアリング(事情聴取)を個々に行い、これを受けての4回目の審理が行われた。
この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したもので、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、元労働次官と経済学者、当時の労働省事務官の3人が「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと盛り込んだ』などの表現を多用し、派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで3回の委員会では、双方から出された文書や放送同録、当時の資料などにより審理を続けて来たが、9月15日には申立人・被申立人を呼んで、個々に事情を聴取するヒアリングを行った。
ヒアリングではまず申立人の3人が出席、「インタビューの切り貼りなどによる捏造」と「『ひっそりと盛り込んだ』などの表現で、元労働次官と経済学者の2人を個人攻撃した」という2点を中心に主張した。
一方、被申立人のテレビ朝日・朝日放送からは、番組プロデューサーやチーフディレクターら4人が出席した。そして「申立人ら多くの関係者の取材を通じ、多角的に検証し事実を基に放送したもので、インタビューの切り貼りという指摘も当たらず、事実の捏造などは行っていない。また「登録型」がいつの間にか派遣法に盛り込まれた様子を『ひっそりと』と表現したもので、申立人を個人攻撃しているものではなく、論評の範囲内と考える」と主張した。
委員会はヒアリングの後、最終判断の方向付けを協議、「委員会決定」案の作成作業に入ることを決めた。次回委員会ではこの「委員会決定」案について検討される見込み。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

9月1日の起草委員会でまとめられた「委員会決定」案が提示され、審理を行った結果、数カ所にわたって修正を加える必要があるとの結論に達し、再度、次回委員会で「委員会決定」修正案を基に審理を行うこととなった。
この申立ては、東京都在住の勤務医とその家族から、TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月13日に放送された、割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたものである。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

この事案は、2009年4月24日深夜と5月29日深夜に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から申立てがあったもの。
申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」は既に提出されていたが、前回の委員会の後、「答弁書」に対する申立人側の「反論書」と、「反論書」に対する被申立人側の「再答弁書」が提出され、双方の主張が出揃った。
これを受け、この日の委員会では本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記の仲介・斡旋解決事案について報告し、了承された。
「匿名を要求したのに実名放送された」との訴え 在京テレビ・キー局が2009年4月に放送した”介護保険”をめぐる報道番組で、取材された人(東京在住)から、「匿名を求めたのに実名が放送されたため、世間に知られたくなかった母親の病状が明るみに出てしまった」とテレビ局に抗議があった。
テレビ局は、「母親の映像を出さないことを了解した時点で、顔出し取材に応じ介護の実態を話してくれた長女の実名を出すことは、承認されたものと思って放送した」と釈明した。しかし長女は納得せず、謝罪と再放送の際は匿名にするよう求めた。
テレビ局は3日後に再放送を行ったが、その際、名前の部分を平仮名に変えただけで放送したため、長女はさらに憤慨し、誠意ある謝罪と、映像を再び使用しない約束を求め、放送人権委員会に訴えた。 放送人権委員会では、テレビ局に対し、被取材者を傷つける意図がなかったことや、その取材のあり方、放送のあり方について誠意を持って説明し、納得してもらうよう話し合いを勧めていた。この結果、9月に入って、テレビ局から相手方に対し下記の内容の文書が示され、長女もこれを納得、この事案は解決した。
文書で示された内容は、このような問題の再発防止のため、1)取材協力者に対し、撮影取材が始まる前に番組の趣旨を十分説明する。2)実名か匿名かの事前確認を徹底する。3)苦情に対しては取材担当者レベルでなく、速やかに責任者を集めて真摯に検討し、責任者が直接誠意を持って説明する。の3点となっている。また、テレビ局は、番組の再放送に当たっては、取材協力者の了解なしには行わないことも約束した。

(放送2009年4月 解決9月)

8月の苦情概要

8月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・11件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・ 103件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

事務局から以下の報告が行われた。

  • BPOの各委員会が公表した「見解」や「勧告」の内容について、テレビ・ラジオ会員各社に理解を深めてもらい、日々の放送活動に生かしてもらうことを目的に、新たに「BPO事例研究会」がスタートすることになり、事務局より報告した。 11月26日に第1回が開かれる予定。
  • 次回委員会は10月20日(火)に開かれることになった。

以上