放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第152回

第152回 – 2009年8月

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案のヒアリングと審理

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理 ……など

「割り箸」事案の当事者に対するヒアリングと詰めの審理を行った。「派遣法」事案は論点を絞り込んで審理し、次回委員会でヒアリングを実施することになった。このほか、「拉致被害者家族からの訴え」事案については事務局から資料説明を行った。

議事の詳細

日時
2009年8月18日(火) 午後3時~8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案のヒアリングと審理

この申立ては、東京在住の勤務医とその家族から訴えてきたもの。TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月13日に放送された割り箸事故をめぐる判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると主張している。
審理入りしてから6回目となる8月18日の委員会において、申立人、被申立人(TBS)から直接意見を聞くヒアリングを行った。申立人側は、医師本人は事情があって出席せず、家族3人が出席した。一方、TBS側は担当プロデユーサーら3名が出席した。
席上、申立人は「本番組でTBSが設定した事実関係は、民事裁判の判決の事実認定と著しく齟齬するので不正確である。このことは判決要旨をよく読んでいないことに起因する事実誤認、もしくは担当医師や病院を痛めつけるための一部捏造である」と述べた。これに対し、TBSは「今回の放送は医療現場と、患者が求めている医療について、いろいろな問題を抱えている中、その一端をしめす例として割り箸事故を取り上げた。裁判の対象となった医師あるいは病院に対して、何らかの攻撃をする意図は元々ない。また申立人が指摘している事実認定の部分については、判決要旨をベースにVTRを構成したもので誤りはない」と主張した。
ヒアリング終了後、審理を行い、「委員会決定」案の作成作業に入ることとした。次回委員会では、「委員会決定」起草案を基にさらに審理を重ねる予定である。

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについての3回目の実質審理が行われた。
この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したが、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、当の元労働次官と経済学者らが「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込んだなどの表現を多用し、2人が派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで2回の審理で、各委員の意見がほぼ出そろったことから、この日の審理では、起草委員がまとめた「論点整理」に基づき、申立人が強く主張している、「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りした捏造報道であり、派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込み、派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃された」という点などについて検討した。 この結果、次回委員会で双方へのヒアリングを行い、問題点を詰めることになり、起草委員によってヒアリング項目の策定を急ぐことになった。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

2009年4月24日深夜と5月29日深夜に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下、「家族会」)から申立てがあり、8月4日の委員会で審理入りが決まった。18日の委員会までにテレビ朝日より「答弁書」が提出されたが、この日は他事案の審理もあり、事務局からの資料説明のみとし、実質審理を次回に持ち越した。
4月24日の上記番組で、田原氏は拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。この発言について、家族会は「根拠なく2人を生きていないと発言した。人の生死についての安易な発言は、名誉毀損やプライバシーの侵害以上に重大な人権侵害である」などと主張し、田原発言の放送での撤回と謝罪などをテレビ朝日に求めている。
これに対し、テレビ朝日は「答弁書」で、「社として確認できていない内容が生放送され、拉致被害者のご家族や関係者にご不快の念を抱かせたこと、視聴者の方々の誤解を招いたことをまことに申し訳なく存じている。そのため、5月29日深夜に、当社、および田原氏の謝罪を放送した」としている。

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の通知・公表

上記事案の「委員会決定」を8月7日に通知・公表したが、その概要とテレビ対応および新聞記事についての資料を事務局が配付し、当該局であるTBSが決定内容を伝えたニュース番組と『サンデージャポン』(当該番組)のビデオを視聴した。堀野委員長は「TBSの放送は大変ていねいだった。記者会見では熱心な質問が出て、新聞でも多くのスペースを割いて報道された。4月から新体制になった委員会の最初の決定として、良かったのではないか」と述べた。

その他

次回委員会は9月15日(火)に開かれることになった。

以上