第155回 – 2009年11月
「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理
「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理 ……など
「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理が行われ、来月の委員会で当事者へのヒアリングを実施することが決まった。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の実質審理が始まった。このほか、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案で勧告を受けたTBSから「委員会決定に対する対応と取り組み」が提出され、事務局から報告した。
議事の詳細
- 日時
- 2009 年 11月17日(火) 午後4時~7時45分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理
「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理
「保育園イモ畑」事案でTBSから対応報告書
「委員会決定」の通知・公表についての報告
10 月の苦情概要
その他 - 出席者
- 堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、山田委員
「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理
この事案は2009年4月24日深夜と5月29日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に重大な人権侵害と放送倫理違反があったとして、拉致被害者の家族で組織する「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から申立てがあったもの。田原氏は4月24日放送の上記番組で横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。
この日の委員会では先月に続き、 (1)田原氏の発言内容についてどう判断するか、(2)放送局側の対応と責任についてはどう考えるか、の2点を中心に各委員が意見を述べ、突っ込んだやり取りを交わした。この結果、来月の委員会で申立人、被申立人の双方に対するヒアリングを実施し、それぞれの主張について詳しく尋ねた上でさらに議論を深めることとなった。
「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理
この事案は本年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。前回10月の委員会で審理入りが決まり、今月から審理を開始した。
放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
委員会では、事務局が双方から提出された書面をもとにまとめた論点を説明した後、番組の趣旨と放送内容をめぐって意見を出し合った。
次回の委員会も審理を続ける。
「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案でTBSから対応報告書
本事案で重大な放送倫理違反があったとして今年8月7日に勧告を受けたTBSは、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめ、通知から3か月後の11月6日に委員会に提出した。事務局からその内容について報告し了承された。
(TBSの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第40号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)
「委員会決定」の通知・公表についての報告
(1) 「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案
10月30日に行われた上記事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局から、その概要とTBSをはじめとしたテレビの放送対応及び新聞記事の資料を配布し、報告を行った。またTBSが『みのもんたの朝ズバッ!』(当該番組)で決定内容の報告とお詫びを放送した同録DVDを視聴した。
(2) 「派遣法・登録型導入報道」事案
11月9日に行われた上記事案の通知・公表について、事務局から、その概要を次のとおり報告し、これを受けたテレビ各局の放送内容及び新聞記事をまとめた資料を配付した。
通知の席で今回の決定について申立人は、「派遣切りなど現状の雇用不安については、1985年の派遣法成立には何も問題がなかった。今日の事態を招くことになったのは、その後の99年の原則自由化、2004年の製造業への解禁などによる。自分たちの主張を認められなかったのは残念だ」と述べた。
これに対し堀野委員長は、「公の立場にある人への判断であり、本人にとってはきついものになったとは思う。しかし、決定についての批判・論争は大いにやって然るべきだと思う」と語り、委員会決定は決して一方的なものでなく、意見交換することが大切だとの考えを示した。
またこの決定を受け、当該番組のテレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』は、11月15日の番組の最後の部分で、これについて約2分間伝えたが、委員会ではこの同録DVDを視聴した。
10 月の苦情概要
10 月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・ 5件
(個人又は直接の関係人からの要請) - 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・ 77件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)
その他
- 事務局より下記のとおり報告し了承された。
九州・沖縄地区のBPO加盟各社を対象に12月2日福岡で開かれる「放送人権委員会委員との意見交換会」への出席者が32社・86名となった。当日は放送人権委員会の活動と役割について堀野委員長が基調スピーチを行うほか、取材・放送に係わる人権や放送倫理上の問題について、各局報道・制作現場関係者と放送人権委員との間で討議を行う。 - 次回委員会は12 月15 日(火)に開かれることになった。
以上