「機能訓練士からの訴え」 事案
委員会決定 第45号 – 2010年9月16日 放送局:TBSテレビ
見解:問題なし
TBSの報道番組『報道特集NEXT』が2009年4月と11月に放送した車イスの少女の普通中学校入学をめぐる問題を扱った特集について、映像に登場した少女の機能訓練士が無断で訓練の映像を使用されたとして肖像権や名誉、財産権等の侵害を訴えた事案。
2010年9月16日 委員会決定
放送と人権等権利に関する委員会決定 第45号
- 申立人
- (有)A
B
C - 被申立人
- 株式会社TBSテレビ
- 苦情の対象となった番組
- 『報道特集NEXT』
(毎週土曜日午後5時30分~6時50分) - 放送日時
- 2010年2月28日(日)(番組の後半の特集 約34分)
(1) 2009年4月11日
特集「車イスの少女が入学できない訳」19分20秒
(2) 2009年11月7日
特集「Dさん入学・・・豊かな教育」24分10秒
本決定の概要
TBSテレビ(以下「被申立人」という)は、報道番組『報道特集NEXT』において、2009年4月11日に特集「車イスの少女が入学できない訳」を、2009年11月7日に特集「Dさん入学・・・豊かな教育」を放送した。これらの番組は、普通小学校に通うことができた少女がなぜ普通中学校に通うことができないのかという企画意図に基づくものであったが、番組中、(有)A(以下「A」という)の代表者であるB氏、同社員であるC氏(以下三者をあわせて「申立人ら」という)が少女に機能訓練を行う映像が放送された。この映像は少女の両親が撮影したものであった。
申立人らは、4月11日の放送については、事前にB氏C氏両名の肖像を使用することについて被申立人が了解を得ておらず肖像権侵害にあたるとしたほか、申立人らの名誉、財産権(特許技術)、著作権、営業権を侵害したものと主張した。11月7日の放送については、放送前に被申立人から連絡があり一応の許諾を与えたものの、その後許諾を与えた前提に反する対応があったことから、結局、B氏C氏両名の肖像権、申立人らの名誉、財産権(特許技術)、著作権、営業権を侵害したものであり、いずれの放送も申立人らの活動を曲解させ、または、不法な説明があり、申立人らの活動を阻害するもので、申立人らの被申立人に対する善意を踏みにじるものであるとして、申立てに及んだ。
放送と人権等権利に関する委員会(以下「委員会」という)は審理の結果、以下の理由により、本件放送内容については名誉、肖像権等の権利侵害はなく、また、放送倫理違反にあたる点も認められないと判断した。
まず、B氏C氏両名の肖像の使用については、4月11日の放送については事後の承諾が与えられており、11月7日の放送については事前の承諾が与えられているので、いずれも肖像権の侵害があったとはいえない。また、放送において視聴者に申立人らの活動を曲解させるような内容や不法な説明があり、そのことによって申立人らの活動を阻害した事実は認められず、そのほか、申立人らとの対応のうえで、被申立人において申立人らの善意を踏みにじる行為があったとする点もこれを認めることができなかった。
ただし、被申立人においては肖像にかかわる権利処理について軽率なところがあり、その点において報道される側に対する配慮に欠けた部分があったと考えるので、この点については、今後の放送の糧として欲しい。
なお、財産権(特許技術)、営業権に関わる部分については、委員会の審理の対象とはならないので判断しない。
(決定の構成)
委員会決定は以下の構成をとっている。
I.事案の内容と経緯
- 1.申立てに至る経緯
- 2.放送内容の概要
- 3.申立人の申立ての要旨
- 4.被申立人(放送局)の答弁の要旨
II.委員会の判断
- 1.申立ての要旨(1)について
- 2.申立ての要旨(2)について
- 3.申立ての要旨(3)について
- 4.申立ての要旨(4)について