北海道地区各社との意見交換会(開催地:札幌)
放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会が10月24日、札幌市で開催された。東京以外での開催は、大阪・名古屋・福岡に続き4回目となる。
意見交換会には、北海道地区の全ラジオ・テレビ9局から、BPO登録代表者やBPO連絡責任者ら35人が参加。放送人権委員会側からは、飽戸弘委員長、竹田稔委員長代行、堀野紀委員長代行、五代利矢子委員、中沢けい委員、それに事務局の合わせて10人が出席した。
まず、飽戸委員長が「放送人権委員会6年と放送局への期待」と題して、名誉毀損に対して司法判断が厳しくなるなどの情勢の中で放送人権委員会が報道の自由を守るために放送界の第三者機関として設立された経緯、6年間の足跡、今後の課題等について講演。特に取材面では、メディアスクラム対応問題や、取材依頼の曖昧さがトラブルの原因になっていること、また番組制作上では、放送局のカルチャーと市民のカルチャーの差がもたらす対応のまずさがトラブルの元になっていること等を指摘した。その上で、「放送人権委員会は裁判所でも統制機関でもない、放送界の皆さんが作った『報道の自由を守っていくための機関』。自主・自律を成功させるためにも放送人権委員会の決定を有効に活用してほしい」と締めくくった。
この後、各委員が挨拶し、その中で、「最高裁の所沢ダイオキシン報道に関する差し戻し判決により、今後、裁判所は”一般視聴者が放送全体から受ける印象”という判断基準を採用して行くだろう。テレビ報道にとっては厳しい時代となる」、「人権擁護法案は仕切り直しとなったが、放送人権委員会を育てないと、また国家権力がやって来る」などの考えが表明された。
意見交換会では、放送局側から、メディアスクラム対応の申し合わせは「解除」が難しい、雑観シーンの映像で通行人や店にいて撮影された人からのクレームの増加、カメラアングルとモザイク処理の難しさといった悩みや、被害者報道、特に死者の人権をどう考えればよいのか、さらに、再現シーンの過剰演出や、取材対象者への説明不足によるトラブルなど、事例を含めて質問や問題提起が多数あった。
これに対して各委員からは、判例や法的見解、肖像権侵害の具体例等の説明やアドバイスがあり、視聴者の意識の大きな変化と放送局側の常識・認識のズレによるトラブルが増えている現状への警鐘、苦情対応のまずさなどの指摘があった。討議は所定の時間では足りないほどで、熱心な議論が続いた。