放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第61回

第61回 – 2012年6月

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

新聞の番組欄や番組内テロップなどで、話題の「占い師」が出演するかのように表示し、実際には別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン ……など

第61回放送倫理検証委員会は6月8日に開催された。「宅配の水」利用客として登場した女性が、宅配水メーカーの経営者の親族だったことが判明した日本テレビの『news every.』について、まず審議が行われた。担当委員から、担当ディレクターを含む11人に対して実施したヒアリングの内容が報告され、1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちが繰り返された原因や背景について意見交換が行われた。その結果、論点がほぼ整理できたため、次回の委員会で意見書をまとめることになった。また、日本テレビのバラエティー番組『緊急放送!芸能★BANG ザ・ゴールデン』で、新聞の番組欄や番組内テロップに、芸能ニュースで 話題となっている「占い師」が出演するかのように表示したにもかかわらず、実際には別の「占い師」が出演したために、多数の苦情が寄せられた問題について、委員会としてどう取り扱うべきかの討議がおこなわれた。

議事の詳細

日時
2012年6月8日(金) 午後5時~9時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

『news every.』は4月25日放送の特集企画で、福島第一原発の事故の影響で懸念されている水道水の安全性の問題を検証した際、最近「宅配の水」として利用者が急増しているボトルドウォーターについても取り上げた。この中で、利用者として紹介され、子どものためにも宅配の水のほうを選ぶとコメントした女性が、一般の利用客ではなく、宅配水メーカーの親族(会長の三女で社長の妹)だったことが判明し、委員会が前回審議入りを決めた事案。
2011年1月8日に放送された『news every.サタデー』で、ペットサロンやペット保険を取り上げた際にも、一般利用客として紹介した2人の女性が、運営会社の従業員だったことが発覚した。委員会は、事実を正確に伝えておらず、また、公正性が損なわれている点で放送倫理の違反があるという意見書を公表し、当該局も再発防止策を策定実施したにもかかわらず、なぜ類似の過ちが繰り返されたのかが、論議の焦点になった。
「ペットビジネス」事案を担当した2人の委員が今回も担当者に指名され、この企画の取材・制作にあたった2人のディレクターをはじめ、内容をチェックしたプロデューサーや、宅配水メーカーの関係者から聞き取りをした報道局幹部など、あわせて11人からヒアリングを実施した。
ヒアリングは、「ペットビジネス」事案を教訓に、取材対象企業の関係者をユーザーとして扱わないことや対象企業に安易にユーザーの紹介を依頼しないと定めた当該局の「企業・ユーザー取材ガイドライン」がどこまで浸透・機能していたのか、編集・制作段階での局内のチェックはどのように行われたのか、などを中心に進められ、それをもとに問題点を整理した意見書素案が委員会に提出された。
意見交換の結果、今事案の論点はほぼ整理できたため、次回の委員会で意見書をまとめ、7月いっぱいを目途に通知・公表することになった。

新聞の番組欄や番組内テロップなどで、話題の「占い師」が出演するかのように表示し、実際には別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』

芸能記者などが出演して芸能情報をバラエティー手法で伝える日本テレビの深夜レギュラー番組『芸能BANG+!』が、5月4日のゴールデンタイムに『緊急放送!芸能★BANG占い・離婚・・・渦中のアノ人が記者軍団と激突SP』のタイトルで2時間スペシャルとして放送され、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動にまつわる話を大きく取り上げた。
新聞の番組欄で、「今夜遂にスタジオへ・・・オセロ中島騒動の占い師が謎の同居生活全貌激白」と告知した。さらに番組内ではオープニングから45分以上にわたって同様のスーパー、ナレーションなどを繰り返し、女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように放送した。
しかし、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んだことのある別の占い師の女性だった。放送後、当該局に対して多数の抗議が届いたほか、BPOにも視聴者からの多くの意見が寄せられた。
委員会は、当該局からの報告をもとに討議を行ったが、虚偽の事実を告知して視聴者を誤解させたという意味で審理案件ではないかという意見から、騙されるということも含めてバラエティーのカテゴリーの中に含まれるという意見まで、幅広い意見が出て議論が長時間交わされた。今回の委員会では結論に至らず、次回の委員会で更に討議を続けることになった。

【委員の主な意見】

  • 新聞の番組欄でも番組中のテロップでも嘘をついている。結果的にではなく、意図的に嘘をついている。これは時間泥棒ではないか。
  • こうしたバラエティーの場合、これもギャグの範疇という事案はなくはない、しかしこの放送の場合はどう考えてもそうはみられない。
  • 作り手のモラルの問題である。視聴者に対する目線が、視聴者を低く見て馬鹿にしているのではないだろうか。
  • 全体として占い師に騙されてはいけないという啓蒙番組のようにとれなくもない。最後の占い師の部分もそれなりに面白い。
  • 騙されることも含めてバラエティーというカテゴリーに含まれる。視聴者との間で、騙し騙されるという関係自体がバラエティーという番組の一つのスタイルである。
  • 騙し騙されるという関係については、制作者と視聴者が了解しあってなければならないはずだが、この番組ではそれがない。
  • この番組は、オセロ中島騒動の占い師という現実の情報をとりあげている。そう考えると情報番組という側面がある。とすれば視聴者に嘘をついて引っ張るようなことをしてはいけないというしかない。
  • 視聴者は、この番組を見るときに、芸能ニュースを見ようとしたから怒ったのではないか。騒動についての情報を占い師本人から知りたいと思って見たから、期待が裏切られたということになった。
  • 裏番組の制作者は、この番組を許せないと思う。裏番組の制作者にとってこの番組は公正ではない。

以上