放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第62回

第62回 – 2012年7月

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』 …..など

第62回放送倫理検証委員会は7月13日に開催された。
「宅配の水」の利用客として登場した女性が、宅配水メーカーの経営者の親族だったことが判明した日本テレビの報道番組『news every.』は、2回目の審議が行われた。1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちが、なぜ繰り返されたのかを中心に検証した意見書の修正案が了承され、7月中に通知・公表を行うことになった。
日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』の新聞の番組欄や番組内のテロップなどで、話題となっている占い師が出演するかのように告知しながら別の占い師が出演した事案についても、前回に続いて討議した。その結果、視聴者の信頼への裏切りという、放送倫理の根本に関するところで問題があるとして審議入りを決めた。
また、フジテレビ『めざましテレビ』の「無料サービスの落とし穴」という企画コーナーで、電話セールスのトラブルは局側の演出よるものだった等の不適切な取材・表現があった事案について討議。取り扱いについては次回委員会で結論をだすことになった。

議事の詳細

日時
2012年7月13日(金) 午後5時~9時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議案
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

4月25日に放送された原発事故後の「飲み水の安全性」の特集企画の中で、「宅配の水」の利用者として紹介された女性が、一般の利用客ではなく、宅配水メーカーの経営者の親族(会長の三女で社長の妹)で執行役員の妻であり、大株主でもあったことが判明した事案。
2回目の審議で、担当委員から、1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちがなぜ繰り返されたのかについて、分析・検証した意見書の修正案が委員会に提出された。
意見交換の結果、若干の補足を加えることでこの修正案は了承され、7月中に当該局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』

日本テレビは5月4日のゴールデンタイムに、深夜のレギュラー番組『芸能★BANG+!』を『芸能★BANG ザ・ゴールデン』として2時間放送した。この放送では、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動を大きく取り上げた。新聞の番組欄での告知や番組内のスーパー、ナレーションでは、女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように表示したが、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んだことのある別の女性占い師だったという事案。
前回の委員会の後、日本テレビは委員会に対して、追加の資料として『芸能★BANG ザ・ゴールデン』問題の反省をもとにした全社的な取り組みを示すとともに、別紙として、経営トップからの社員への指示、その後開かれた研修会での社員の意見などを報告した。
委員会はこれらをもとに、前回に引き続いての継続討議を行った。バラエティ-番組の演出をめぐる放送倫理が問題となったこの事案の扱い方の難しさを中心に長時間に渡る討議がなされた。そして、視聴者からの信頼という放送倫理の根本を裏切っていることから、審議に入らざるを得ないという結論に達し、次回の委員会で審議を行うことになった。

【委員の主な意見】

  • 前回の討議でもあったが、具体的に放送基準などの何に当たるかというのは非常に難しい。
  • 要するに視聴者に対してフェアでないということ、視聴者を大事にしていないということで、まさに倫理の問題だと思う。
  • 今回のケースは、制作者の意図に反して「誤解」された事案ではなく意図的に視聴者の「誤解」を狙った「虚偽」だと考える。
  • ここまでレベルの低い案件はBPOが審議する前に局の内部で対応し、けじめをつければよい。委員会がわざわざ意見を述べるほどの奥行きのない事案だと思う
  • 本来は、本当にタレントと同居していた占い師の出演がだめになった段階で、この企画は占い師の登場を前提としないで、霊能者や占い師に騙されてお金を取られた出演者のトーク番組に変えてしまえばよかった。問題の占い師は出演しないことになったのに、変えられないまま最後まで行ってしまったとしか取りようがない
  • このケースが誤解をねらった確信犯ではなく、視聴者がそのように受け取るとは考えなかったというならば、コミュニケーション能力の低い制作者で、それだけで失格だ。

不適切な取材・表現があったフジテレビの『めざましテレビ』

問題となったのは6月6日放送の「無料サービスの落とし穴」という企画コーナーで、ディレクターが実際に化粧品会社の無料サンプルに応募、その後かかってきた電話が36分間も続いたと放送したが、実は電話のやりとりの大部分は番組側が意図的に質問を重ねて会話を引き伸ばしていたという事案。また無料カットサービスを受けた美容室では、客になってくれた女性にマイクをつけ美容師との会話を録音した。
当該局は6月13日の同番組内でお詫びコメントを放送。7月9日には検証委員会に自主的に報告書を提出した。そのなかで、あたかも一方的な勧誘が長く続いたようになった点、さらに隠し撮り・隠し録音について社内規定に沿った許諾手続がとられなかったことに問題があったと自ら認めた。取材先にも直接陳謝したという。委員会は様々な角度から意見を出し合ったが、取り扱いは次回委員会で結論を出すことにした。

【委員の主な意見】

  • こちら側で質問を作って、結果的にできた36分を証拠に、ひっぱり電話が向こうからあったように表現する部分は悪質。
  • サンプルを送るだけだから、先方はセールストークをする理由はほとんどない。それを迷惑電話がくるという企画に合わせて撮ろうとするからむりやり引き伸ばすことになる。
  • モザイクが一般化し、水際で隠せばなんでもOKという雰囲気が怖い。
  • 原則、盗聴はするなと局の内規にあるが、なぜそのような内規があるのかを理解していないから、これは例外だと思いこむ。
  • 技術がよくなり、いまは秘密の意識なしに音が録れてしまう。
  • 放送局であることを明かさずに取材することは多いので、隠し録音が「いけない」と言われると逆に萎縮する懸念がある。
  • 自分の企画にはめこむ形で隠し撮りを利用しているが、これが一般化して隠し撮り自体がタブーだという流れになることは危険。そうなると表玄関からしか取材できなくなり、撮れるものも撮れなくなる。

以上