放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第59回

第59回 – 2012年4月

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

平成24年度地方局との意見交換会の計画

第59回放送倫理検証委員会は4月13日に開催された。
NHK松山放送局の県域ニュース番組『おはようえひめ』で2月16日、ニュースと関係のない不適切な架空字幕が放送された事案について、NHKから新たに提出された回答書をもとに2度目の討議を行ったが、審議入りしないことになった。
ただ、他局でも類似したミスが起きており、委員長コメントをBPO報告の議事概要に付け加えることにした。
また、事務局から平成24年度の地方局との意見交換会の実施に関しての説明を行った。

議事の詳細

日時
2012年4月13日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、立花委員、服部委員

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

2月16日、NHK松山放送局の朝のニュース番組『おはようえひめ』で「しまなみ海道」関連のニュースを放送中に、「窃盗の疑い 愛媛大学教授逮捕」という、ニュースと関係のないタイトル字幕が2秒間放送され、訂正とお詫びが翌朝までに3度放送された事案。
委員会の再質問に対し、NHKから事故原因の詳細な説明と再発防止の具体策があらためて提出された。回答書では、契約スタッフが作成した練習用字幕が消去されずに電子台本に残った経緯、最初のおわびでは字幕のような事実がないことを確認する時間がなかったために「関係のない字幕が表示されました。失礼いたしました」とお断りするのが精一杯であったこと、契約スタッフの監督責任体制に不備があったので改めること、今後は固有名詞を使わない例文の用意など練習マニュアルを見直すことにより同種の事案の再発防止を図ること、放送中の緊急回避操作を確認したことなどが示された。
討議の結果、事実に反する字幕の放送による被害は迅速な訂正により回復されているし、提示された再発防止策は適切で同類のミスは防げるであろうとの判断から審議入りしないことにした。ただ、不適切字幕が出ないような対策が「ぴーかんテレビ問題」以後もとられていなかったことは問題であり、さらに電子台本については予期せぬ事態に対応する方法が技術的に複雑な点を危惧する意見が出た。

【委員の主な意見】

  • 不適切字幕の防止策として練習用には固有名詞を入れないというのだから、この類の事故は防げると思う。
  • 字幕の事実関係の有無をすぐには確認できなかったためとりあえずのお断りを入れ、確認ができた後に名前を挙げられた大学の名誉についてお詫びをしたのだから、これでいい。
  • ネクスト画面にでた字幕を急遽削除すると画面上は消えたように見えるが、実際には削除されなかったというのは、レアケースとはいえ不親切なシステムだ。
  • 2種類ある字幕系統の仕組みを完全に把握しておかないと削除方法もわからないということか。
  • システム設計に問題はないか。普段使わない回避操作をとっさにやれというのは無理ではないか。
  • 事故が頻発するのは問題だが、技術は複雑化しており、絶対間違いのない放送を求めるのは過剰な負担をかける気がする。

また、委員会では、バーチャルスタジオを使った他局の番組で最近、間違った映像が出てしまった事例についても意見が交わされた。昨今はコンピューター技術が番組制作に深く関わっており、誤字幕、誤映像等のミスが生じた場合の対応を再点検する必要があるのではないかという意見があがった。「ぴーかんテレビ問題」を契機に委員会として「提言」をおこなって注意喚起をしたにもかかわらず、同種のミスが散見されるので、委員長コメントを出すことにした。

■委員長コメント

最近、電子台本とかバーチャルスタジオとかネット上の動画の利用といった放送技術がさらに進化し、またより広く利用されるようになったことに関連して、誤って放送局が意図しなかった不適切な結果を招いてしまった事案が、委員会で討議の対象となったり報告されたりした。進展を続ける放送技術に、放送をする人間側が十分に対応できていないのではないかと思われる現象が見られるのである。
もとより当委員会は、放送倫理の向上という大きな目的のために設けられた機関であり、単なる技術上の問題に起因する放送事故について意見を述べる立場にはないが、東海テレビの『ぴーかんテレビ』における不適切なテロップの放送問題のように、誤って放送されてしまった内容によっては、視聴者の誤解など重大な放送倫理問題を招来する場合もある。
番組制作に使用される技術やシステムは、人間は必ず誤りを犯すということを前提に、たとえ誤りがあってもそれが重大な結果には直結しないような仕組みが用意され、運用されていなければならないはずである。今、起こっている問題は軽微であるが、このままでは将来重大な事故が発生するおそれがあるのではないかと憂慮されるので、委員会としてあらためて注意喚起しておきたい。

平成24年度地方局との意見交換会の計画

これまで地方局と委員会との意見交換会は、一昨年大阪で、また昨年には福岡で、それぞれ近隣の県の放送局も参加する形で行われ、参加局からは、「なかなか接する機会がない委員から生の話が聴けて有意義だった」と概して好評であった。こうした機会を多く設けてほしいという放送局の要望を受けての計画案として、

  • 過去2回の例と同様に一定の地区で多くの局に参加を募る形式
  • (1) の形式にテーマごとの分科会を設け、二部構成にする
  • 都道府県単位で、各放送局に参加を募る形式
  • 系列のブロック単位で行う形式

など、放送局の意向に沿った様々なパターンを検討していることが説明された。

以上