第130回 – 2012年2月
「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」
フジテレビ『ザ・ベストハウス123』番組担当者との意見交換 …など
第130回青少年委員会は2月28日に開催され、前回に引き続き、震災報道における子どもへの配慮について審議し、「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」をまとめ、発表することとした。また、前回審議したバラエティー番組の制作担当者との意見交換を行ったほか、2月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。
議事の詳細
- 日時
- 2012年2月28日(火) 午後4時30分~7時00分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
-
「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」
フジテレビ『ザ・ベストハウス123』番組担当者との意見交換
視聴者意見について
中高生モニターについて
その他 - 出席者
- 汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員
「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」
東日本大震災報道と子どものPTSD等の心理的ストレスとの影響について議論を重ねた結果、上記要望をまとめ、3月2日に公表することとした。
子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望はこちら
フジテレビ『ザ・ベストハウス123』番組担当者との意見交換
「浮気現場に突撃!男と女の修羅場最凶衝撃映像20連発」という企画について、視聴者から「20時台に卑猥な映像が放送され、子どもに不適切」等の意見が寄せられ、委員会と番組制作担当者との意見交換を行い、その概要を公表することとした。
フジテレビ意見概要
映像図鑑を作るという趣旨でスタートした。6年近くやっていく中で変遷し、海外の感動的なエピソード、衝撃映像、また、国内のドキュメンタリーを買ったり、番組で映像を撮って見せるということも含め、スタイルが確立してきた。
アメリカでは今、「リアリティーショー」というジャンルの番組が非常に人気があり、今回の「チーターズ」という番組は、これまでに250回以上放送されているアメリカでも認知されている人気シリーズ。番組として紹介できるということと、アメリカの国民性が出ており、人間は追い込まれた時に本性が出たり、滑稽だったり不思議な行動を起こすということがバラエティーの面白い要素としてあった。具体的には、言い訳のできない状況に置かれた男女がどう言い訳をするのか、どう逃げるのか、どう追い込まれるのか、そこも面白さだと思って作った。
【放送にあたっての留意点】
アメリカでこの番組がTV-14(親に強く警告。14歳未満の子どもに好ましくない番組)という指定があるという認識はあったので、スタッフ間で協議し、素材をそのまま放送するのではなく、直接的なシーンはカットし、問題があると考えられるシーンは強く大きいモザイクをかけることで、何が行われているか判らないように編集する等、放送上の配慮をし、地上波のこの時間にかけられる番組にするよう留意した。
【視聴者意見を受けて】
番組を作る基準として、自分の子どもと一緒に見られないものは作らない、ということを大前提としてやっている。子どもと一緒に見られるところまで映像等の配慮をし、処理したと思ったが、やはり抵抗を感じたり不快に感じる方が多かったということは、自分のハードルが低すぎ、世の中に対してはもっとハードルを高くしなければいけない、より注意しなければいけないということを痛感した。また性的なシーンの無い、モザイク無しでも放送できるエピソードもあったので、特に午後7時から9時までの子どもに配慮する時間帯についてはもっと精査すれば良かったと番組スタッフとも話し、認識をあらためて番組作りに臨むことにした。
この番組には面白かったというご意見もいただいており、今後は時間帯等を意識しながら、新しいソフトである「チーターズ」という番組をどうしたら視聴者に不快な感じを与えずに楽しんで見ていただけるか、工夫をすることが我々の仕事ではないかと思っている。
視聴者意見について
担当委員及び事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受け、審議対象に該当する番組はなかった。
中高生モニターについて
12月~2月まで「ドラマ・アニメ番組」について報告してもらっている。2月のテーマは、ドラマ・アニメ番組の企画書作りで、23人から提案が寄せられた。
ドラマの企画は14人(重複あり)から寄せられ、大半はオリジナル作品で、原作ものは3つだった。なかでもいちばん多かった企画は「青春学園ドラマ」で、7人がさまざまな設定で構想を練ってくれた。テーマは、”絆”とか”友情もの”で、今日、中高生が抱えるさまざまな問題に気づいていることを示唆してくれる内容で、東日本大震災の経験を生かした「仮想ドラマ」の企画も寄せられた。
アニメの企画は9人(重複あり)から寄せられた。そのうち、近未来をテーマにしたオリジナル企画と、ゲームソフトのアニメ化の提案がそれぞれ2人から寄せられ、そのほか原作もの1人で、『まんが日本昔ばなし』復刻の提案も寄せられた。重複企画はドラマ・アニメの企画募集提案で、スタッフなどに参加したいという提案だった。
【委員の所感】
- 高齢者から自分たちと同じ年代まで見てほしいという気持ちは大切だが、もっと対象を絞った方がユニークでオリジナリティー豊かな番組が企画できると思う。その点学園ドラマの企画が複数あったのは興味深かった。また日常をベースにしながらも、近未来に想像をはせた企画は面白く感じた。
- マンガを原作にしたドラマが数多く放送されている影響もあって、マンガを原作にした作品を作りたいという提案が目についた。もっと独創性があってもいいのではないか。
- 学園ものを作りたいという企画には、今のテレビに中高生たちの気持ちや感情が反映されていないという思いがあらわれていると思った。併せて、参加したいという思いも感じた。
- まず、模倣から始まるのがスタートだと思う。中には具体的なストーリーを展開させていた企画もあり感心させられた。
モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント。
*企画1.『僕の人生』(大阪・中学3年男子)
【ねらい】(抜粋)
最近のドラマやアニメは、ほとんどが『ドラえもん』のような理想的なものがほとんどのように思います。理想も良いですが、それよりもほんの少し現実に近づけているようなドラマを僕なりに考えました。テーマは、僕の人生です。
【内容】
普段から安い給料でアルバイトをしている主人公がある日、とても親切にしてくれたおばあさんに出会う。でも、突然おばあさんが認知症を患ってしまい、その後老人ホームへ。
そのことを知った主人公は、助けたい、恩返しをしたいと思い、友人からのアドバイスで「ホームヘルパー」の試験に見事に合格し、それを報告するために老人ホームへ。
ところがおばあさんは、主人公のことを忘れてしまっていた。しかし主人公は自分の思いを伝えるため、たまたまそこにいた家族に自分の思いを伝える。そしておばあさんは老人ホームを離れ、自宅で療養生活を送るようになる。そして毎日、主人公はおばあさんを訪ねる。
ある日、おばあさんが主人公に「君みたいな人がたくさんいる日本がね、わたしは大好きなの。もっと君に日本を変えてほしいな」と言った。
そこで主人公は猛勉強して日本国の総理大臣になり、日本の国民にたくさんの幸福を運び、やがて生涯を閉じる。
【テレビ東京 ドラマ制作室プロデューサーの感想】
オリジナル・原作もの含め、学園、恋愛、社会派など中高生が期待するドラマの方向性がそれぞれに反映されたドラマ企画14本だった。全体的には、各々の生徒が身近に感じ、今興味のあるピンポイントの事象をテーマにしたものが多く、そこからより幅広い視聴者に広げていくための次の段階にまで具体的に踏み込めている企画はなかったが、その中でもホームヘルパーを題材にしたオリジナル企画『僕の人生』は今の社会をしっかりと捉えていて、ドラマ的なストーリー展開もあり、登場人物のひたむきな心情も好感を持てる。
*企画2.『気づいてないだけ。』(静岡・中学3年女子)
【ねらい】(抜粋)
このドラマの主人公は中学生~高校生。内容は、クラスに何人かいるおとなしくて暗い子と、それとは真逆なクラスの中心的存在の子や明るく元気な子がかかわっていく内容。いつもは地味でクラスの中では居ても居なくても同じような子が、実は知らないところで支えになっているとか、自分はいつもひどいことをしていたのに、いざとなると手を差し伸べてくれたり・・・。ふだんの状況では気づきもしなかった人の隠れている優しさや思いやりを気づかせるようなドラマ。
【内容】
ここは、あるふつうの学校。本当にどこにでもあるような、やはりこの学校にも元気組と根暗組に分かれているようだ。いつも大声ではしゃいだり、笑ったりとテンションの高い前野翼と、アニメの世界が大好きで世間でいう”ヲタク”な清川匠。何の接点もない2人が、あることをキッカケに互いの存在に気づく・・・。
クラスの中心的人物であった前野翼は、いつも上から目線でウザイという理由で、いつものグループからハブられてしまう。本人の気づかないうちにクラスの元気組からは嫌われていて、もう誰とも一緒にはいられない。
そんなとき、川口春奈さん演じる謎の少女(ナナミ)が、「あんたが気づいていないだけで、目をかけてくれる人はいる。周りをよく見ろ」と謎の発言をする。ナナミにからかわれているだけだと思っていた翼だが、一人でいる孤独に耐えられず、仕方なく根暗組に話しかけることにした。そこで何となく声を掛けられたのが清川匠だった。いつも一人で人を好まない匠だったが、落ち込んでいる翼に、自分では気づかない翼にとっては自分が変わるような発言を連発していく・・・。自分は悪くないと思い込んでいた翼と、人の良さを徐々に気づいていく匠の関係は・・・。(つづく)
【テレビ朝日 編成制作局ドラマ制作ゼネラルプロデューサーの感想】
どこにでもある学校の教室に、一人の謎の少女の存在。「気づいてないだけ。周りをよく見ろ」という謎のフレーズでクラスの崩壊しかけた人間関係を救ってゆく。テレビドラマで大切なのはまず、「主人公」の魅力です。それと「ミステリー」の要素。どんなテーマを扱っても、その二つがなければ、面白いドラマになりません。この企画はそれらを備えています。その上で、人のやさしさや思いやりを信じたいという企画者の明快な気持ちがきちんと伝わってきます。そして「気づいてないだけ。」という、思わずハッとするようなストレートなタイトルも魅力的ですね。このような10代の皆さんの率直な「願いや祈り」が、これから先のテレビの基になります。ぜひ日常の中で感じる素直な気持ちをたくさんテレビ企画にしてみてください!
〔企画総評〕
【NHK 前ドラマ番組部長の感想】
東日本大震災から1年。ドラマ・アニメで閉塞感を打ち破ろうという明るく前向きな企画が印象に残りました。今回の企画を読んで皆さんに伝えたいことは、ドラマ・アニメの企画にあたってはまず、魅力的な主人公を生み出してほしいということです。視聴者は主人公に思いを寄せてハラハラドキドキしながらドラマを見ます。主人公のキャラは、企画者自身の独自の経験から生み出される想像力の賜物です。若い皆さんはこれからも豊かな人生を経験してドラマの素敵な主人公を生み出してほしいと思います。
【日本テレビ コンテンツ事業局EPの感想】
今回、人気のキャラクターや大ヒットゲームをもとにした企画やオリジナルストーリーの提案などが多く見受けられました。すでに人気のキャラクターや原作ものについては、映像化がし易く最初から認知度が高いのですが、いろいろな会社が映像化しようと熾烈な獲得合戦をしたり制約があったりするのも実情です。そういったなかで、オリジナルストーリーは扱いやすいです。今回、脱出ものやタイムワープものなどオリジナルストーリーを考えることは非常に良いと思いました。ただ、よほど面白く作らない限り、どこかで見たことのある話になりがちなため自分にしか書けないオリジナル企画を目指してほしいものです。それでも今回のように原作、オリジナル企画問わず自分の頭で番組の企画イメージを考えることは、我々にとってもうれしいことであり刺激になります。どうもありがとうございました。
【TBSテレビ ドラマ制作部プロデューサーの感想】
自分の興味のあることや好きなこと、身近な問題から世界規模での問題意識で、さまざまな題材があり、中には、あっと驚くドラマチックな展開があったりして、それぞれに個性的なパワーを感じ、とてもおもしろく読みました。オリジナルを一から考えた人は大変だったと思いますが、それだけに「これを伝えたい」という「熱い思い」が伝わってきて、特に「学園もの」の企画は、中高生のみなさんならではの”うーむ”という説得力がありました。
【テレビ東京 アニメ制作部長の感想】
全般的に多少の既視感は否めませんが、中には我々の発想からは出てこないような視点の企画もあり、大変興味深く読ませていただきました。「アニメが好きであるか否か」以前に「何を表現したいか、人に何を伝えたいか」が明確なものは、数行の文章でも「思い」は充分伝わります。アニメはどんな夢もどんな妄想も表現しうる創造の手段。いつの日か是非、自分なりの「思い」をこの世界でぶつけてみてください。なお『日本の民話・昔話』のレギュラー化という企画がありましたが、テレビ東京系にて4月から放送開始します。
【フジテレビ 編成部ドラマアニメ企画担当者の感想】
今回頂いた中で、非常に印象的だったのは、震災という大きな出来事を経験した中で生まれる社会の「空気」を捉えたものがいくつか見られたことです。人との「絆」や「思いやり」を描いたものなどが散見され、時代を捉えた企画が集まったことが非常に素晴らしかったかなと思います。また視聴者の中にもそういった人の温かさに触れたいという欲求があるのではないかと、今回の企画を拝見させていただき思いました。
その他
- 「中高生モニター会議」の開催について
3月18日(日)正午から、BPOのある千代田放送会館で2011年度「中高生モニター会議」を開催する。テーマは、「私の見たいテレビ、作りたいテレビ」で、グループに分かれて番組企画を作成する。 - 2012年度「中高生モニター」について
2012年4月~2013年3月までの中高生モニターに、中学生64人、高校生70人、合計134人から応募があり、審査の結果、34人(中学生22人、高校生12人)に委嘱することとした。 - 青少年委員会主催の公開シンポジウム「”新時代テレビ”いま、制作者たちへ」が2月10日(金)に全国都市会館大ホールで開催された。
第1部はNHKと在京キー局のドラマ・バラエティ制作者666人の意識調査についての報告、第2部は調査結果を踏まえて、「ドラマ論」「バラエティ論」や今後のテレビについて、制作者や評論家らによるパネルディスカッションを行い、132人が参加した。