第112回 – 2006年5月
「若手政治家志望者からの訴え」事案
「放送の公平・公正」の扱いについて協議…など
「若手政治家志望者からの訴え」事案
本件事案は、若手政治家志望者から「日本テレビが05年11月22日に放送した報道番組で、我々が作った政党と個人の活動について誤解を与える表現と作為的な編集、演出が行われ、名誉が傷つけられた」と申し立てがあったもので、06年4月の委員会で審理入りが決まった。
5月の委員会では、反論書や再答弁書など出揃った提出書類に加えて、事務局作成の論点対比表をもとに本格的審理を行った。この中では、「当該放送によって申立人側の社会的評価が低下したか」「政党についての部分を放送人権委員会として判断するかしないか」「苦情に対する当該局の放送後の対応についてはどうか」等について意見が交わされた。
委員会では、双方の意見を更に聴く必要があるとして、次回6月の委員会に申立人・被申立人を個別に招いてヒアリングを行うことを決めた。
「放送の公平・公正」の扱いについて協議
放送人権委員会は、設立10年目に入り、その存在と活動は視聴者・市民に広く認知されてきている。それとともに、第三者機関としての役割も社会的にますます重要視されるようになってきた。
このような状況のもと、4月に委員2人が交代、新委員長に竹田稔委員が選任されて放送人権委員会は新体制になったが、これを機に苦情の取り扱い基準を見直して審理対象をさらに広げるかどうか、特に「放送における公平・公正」を中心に議論することになった。
5月の委員会では、「<政治的に公平であること>等を定めた放送法3条の2については倫理規範的規定であるとみるのが通説だが、実際にはこの法に基づいて”行政指導”が行われている。第三者機関としての放送人権委員会は、今後とも人権・放送倫理の問題に限ってやっていくのか、それとも番組編集への公権力の介入を避ける意味においても、あらたにもう少し審理対象の間口を広げるべきか否か、今一度検討することが求められている」旨の委員長発言を中心に、活発に意見が交換された。
放送の公平・公正、特に政治的公平の問題は、表現の自由・編集の自由などとの兼ね合いや取り扱い基準作りが難しいため、6月以降も具体的な苦情事案の審理に並行して長期的・多角的に議論を重ねていくことになっている。
苦情対応状況[4月]
2006年4月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。
◆人権関連の苦情(21件)
- 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・4件
- 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・17件
その他
次回委員会は、6月19日(火)に、事案のヒアリングがあるため、通常より1時間早め午後3時から開くことを決め、閉会した。
以上