第116回 – 2006年9月
「民主党代表選挙の論評問題」事案の総括
「少年法61条と実名報道」意見交換…など
「民主党代表選挙の論評問題」事案の総括
9月13日に「委員会決定」を出した「民主党代表選挙の論評問題」事案について総括を行ない、「委員会決定」発表後の放送局、新聞社の報道対応について、事務局から以下の報告があった。
当該局のテレビ朝日は、当日の夕方のニュースと、当該番組「報道ステーション」で発表内容を伝えた。また、在京の民放各局も、夕方か翌朝のニュースもしくは情報番組で、この「決定」を扱った。新聞社も、全国紙5社が翌日朝刊で報じた。
委員会では、テレビ朝日のニュースをVTRで視聴した。
今回の「委員会決定」について、竹田委員長ら委員からは「放送人権委員会が政治報道の論評問題を取り上げた初めてのケースであり、報道の自由、論評の自由を大きく評価した有意義な判断だった」との感想があった。
また、通知・公表の際の様子について事務局から、次のような報告があった。通知には、申立人の代理人として仙谷由人議員の政策秘書と被申立人のテレビ朝日が出席した。通知後、申立人の代理人は、私見と断った上で「政治家だからといって、一方的な立場からの論評でも、全て甘受しなければいけないのか」との感想を述べたのに対し、テレビ朝日は「今後とも人権や放送倫理に十分配慮した放送に努めてまいります」とのコメントを出した。
「少年法61条と実名報道」意見交換
「高専女子学生殺害事件」で指名手配されていた19歳の少年が遺体で発見された際、日本テレビ テレビ朝日 読売新聞の3社が実名報道に踏み切った。(週刊新潮は遺体発見前から写真付で実名報道した)
上記3社はいずれも、「容疑者が死亡し、少年の保護・更生を前提に規定されている少年法61条の対象外になったこと」を主な理由に実名報道を決断したとしているが、他の新聞・テレビ各社は「少年法の原則を覆す明確な理由はない」「少年法の精神を尊重した」等として、匿名報道を維持し、倫理規定である少年法61条の解釈をめぐって改めて論議を呼んだ。
委員会では「少年法と実名報道」をテーマに意見交換を行った。
各委員の意見は、実名報道の違法性については、逃走中、自殺の恐れ、年齢、家族のプライバシー、事件の重要性など、個々のケースごとに、状況の総合的な判断が必要との意見が多く出された。最後に竹田委員長が、「今回事案は、少年法そのものの理念や規定からしても、実名報道に法律上の違法性があるかどうかではなく、報道倫理・放送倫理のあり方の問題である。よって結論はかなり分かれることになるだろうが、それは表現の自由の問題として考える。議論することは、今後の報道のあり方を考える上で必要だが、軽々に実名報道の是非をここでまとめるべきではないといったところがわれわれの結論ではないか」と述べ、意見交換を締めた。
「放送における公平・公正について」について
放送人権委員会では、5月の委員会から「放送における公平・公正」について議論を重ねてきたが、8月の委員会で[運営規則検討小委員会]を設立することを決めたが、その第1回が、本委員会の後行われることが報告された。
小委員会の委員に竹田放送人権委員会委員長、堀野・五代両委員長代行および右崎委員の4氏が、メンバーとなり、公平・公正問題の扱いを含む「苦情取り扱い基準」の見直しを中心に論議し、11月の委員会に、その結果を報告し、更に議論を深めてもらうことになった。
苦情対応状況報告[8月]
2006年8月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。
◆人権関連の苦情(8件)
- 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・4件
- 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件
地方局との意見交換会について
放送人権委員会委員と近畿地区会員各社との意見交換会は、11月28日午後大阪で開催の予定で、準備が順調に進んでいるとの報告が事務局よりあった。
その他
閉会後に引き続き第1回[運営規則検討小委員会]を開く。
以上