放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第137回

第137回–2019年5月

"CMと誤解を招きかねず放送基準に抵触する疑い"長野放送『働き方改革から始まる未来』審議入り

第137回放送倫理検証委員会は5月10日に開催され、新年度になって委員3人が交代したため、冒頭、報道各社による委員会の写真撮影が行われた。
委員会では、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議を続けている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、前回の委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が担当委員から示された。来月の委員会では、今回の議論を反映した再修正案が提出される予定である。
また、以下の3事案について、当該放送局から報告書と当該番組のDVDの提出を受けてそれぞれ討議した結果、1事案の審議入りを決めた。
まず、長野放送が3月に放送したローカル単発番組『働き方改革から始まる未来』という持ち込み番組について討議を行い、日本民間放送連盟放送基準(以下「民放連放送基準」という)等に照らし、番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、また、広告放送であるにもかかわらず、CMのかたちをとっておらず、放送番組と識別できていないのではないか等の意見が大勢を占め、また、持ち込み番組であることを踏まえてどのような考査を行ったのか等について検証が必要であるとの意見も出され、審議入りすることを決めた。
また、テレビ朝日が、2月に放送した番組で差別的表現があったことをお詫びしたバラエティー番組『アメトーーク!』について討議を行い、委員会は、特定の地域や学校を差別する表現があり、民放連放送基準に照らして問題があると考えられるところ、さらに確認したい点があるとして当該放送局に追加の質問を行い、討議を継続することになった。
続いて東海テレビが、気象庁の訓練用「火山噴火情報」を誤って速報スーパーで放送した事案について討議を行い、事実と異なる放送であり放送倫理違反が認められるうえ、必ずしも速やかに誤報を訂正したとはいえない等の意見が出された一方で、問い合わせのあった視聴者に対しては適切な対応を取り、具体的な再発防止策なども取っており、最終的に自主的・自律的な対応がなされているとして討議を終了した。もっとも、従前の同種の事案において、「提言」や「委員長コメント」が出されていることを踏まえ、委員から出された意見を議事概要に掲載して、改めて注意喚起することとなった。

1.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この二つの「祭り企画」を対象に審議を続けている。
この日の委員会には、前回出された意見を受けて担当委員が作成した意見書の修正案が提案された。各委員からは、修正案の構成や指摘しているポイントの表現方法などについてさまざまな意見や見方が示された。
次の委員会では、今回の議論を踏まえて、担当委員から意見書の再修正案が提出される予定になっている。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。

2.長野放送『働き方改革から始まる未来』について放送か広告か曖昧だとして審議入り

長野放送は3月21日に『働き方改革から始まる未来』という持ち込み番組をローカル放送した。この番組は、労働基準法などいわゆる「働き方改革関連法」が変わる4月を前に、その準備ができているか等を問う内容となっているが、視聴者から「放送なのか広告なのか曖昧だ」という趣旨の意見がBPOに寄せられた。このため長野放送に対し、放送した番組のDVDと報告書の提出を求めて確認したところ、その内容のほとんどは、長野県に本社がある特定の社会保険労務士法人の事業の紹介であり、本編28分間の間にCMはなかった。
そこで、委員会は討議を行い、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92条、第93条)や「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」等に照らすと、番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、広告放送であるにもかかわらず、CMのかたちをとっておらず、放送番組と識別できていないのではないか等、放送倫理違反の疑いが大きいという意見や、持ち込み番組であることを踏まえて考査の過程など放送に至った経緯についても検証が必要である等の意見が相次いで出され、審議入りすることを決定した。今後は、長野放送の社員らに対するヒアリングなどを行って、審議を進める。

3.放送内容の差別的表現をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も「僕らも学生の頃にそっち方面は行かんとことみんなで言うてた」と発言、また他の出演者の「道できれいな10円を12円で売ってる」人がいたとの発言にその様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。その後、当該放送局は、4月18日の同じ番組で、「事実と異なる内容や差別的な表現があった」として謝罪し、番組のホームページにも謝罪文を載せた。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。また、当該放送局によると、当該高校などからは、番組の一連の対応に理解をしてもらったという。
そこで、委員会は討議を行い、特定の地域や学校を差別する表現があり、民放連放送基準に照らして問題があると考えられるところ、さらに確認したい点があるとして当該放送局に追加の質問を行い、討議を継続することになった。

4.火山噴火情報の「訓練用の速報スーパー」を誤報しお詫びした東海テレビの報道内容を討議

東海テレビは、1月22日午後3時過ぎ、「午後3時1分頃新たな活火山が噴火した(気象庁)登山者はすぐに下山または避難を」という内容を速報スーパーで伝えた。しかし、当日、実際には活火山の噴火はなく、気象庁が東京の放送キー局各局と行っていた訓練用の情報を誤って放送したものであった。
当該放送局の報告書によると、担当の報道部は、キー局から送られてきた情報に火山の地名がないことを不審に思ったものの「人命にかかわる緊急性の高い情報」「地震速報などでは続報で詳細な内容が追加される場合がある」と考え速報スーパーとして放送し、その後、情報が訓練用のものであることが確認されたため、訂正の速報スーパーを放送することを検討したが、速報スーパーでは十分な説明ができず、逆に視聴者の混乱を招きかねないと判断し、夕方のローカルニュース番組の開始まで待ち、その冒頭で訂正とお詫びをしたという。
委員会では、本件が事実に基づかないニュースであり、放送倫理違反が認められること、また、当該誤報を取り消して訂正しているものの、必ずしも速やかに対応したとはいえないこと、とりわけ、「登山者はすぐに下山または避難を」という災害情報であったことに鑑みれば、より速やかに速報スーパーで取り消し又は訂正を行う余地があったのではないかとの意見が出された。
他方で、災害情報であったことを踏まえると、まずは速報を行う必要性があったことも否めないこと、当該放送局では、誤報の可能性が高まった段階から、問い合わせのあった視聴者に対して誤報の可能性を伝え、誤報であることが確定した後は、誤報であることをお詫びとともに伝えていたこと、本件を契機として、訓練データが配信されないように当該放送局系列のキー局のシステムを改修し、訓練情報であることをデータに明記するなどの具体的な再発防止策がとられたこと、当該放送局の番組審議会や第三者諮問機関において、本件が取り上げられて厳しい意見が出されていることなど、最終的に自主的・自律的な対応がなされていることを踏まえ、審議の対象とはせず、討議を終了することとした。もっとも、かつて、誤字幕、誤映像のミスが生じた同種の事案において、委員会として「提言」(2011年9月)をおこなって注意喚起をした経緯が存すること、また、それとは別に、不適切テロップが送出された事案において、当該放送局が迅速な訂正をし、かつ訂正とお詫びを翌朝までに3度放送した事案においても「委員長コメント」(2012年4月)を出して注意喚起をした経緯を踏まえ、委員から出された意見を議事概要に掲載して、改めてBPO加盟の放送局に注意喚起することとした。

【委員の主な意見】

  • 火山の名前が記載されていなかったのであるから、まず火山を特定する必要があったにもかかわらず、その点を十分に確認しないまま誤った事実をスーパーで流したことは放送倫理違反にあたるのではないか

  • 災害情報であったことを踏まえると、火山の名前が記載されていなかったとしても、むしろ速やかに報道する必要性があったことも否めないのではないか

  • 「登山者はすぐに下山または避難を」という災害情報であり、人命にかかわる緊急性の高い情報でもあったことに鑑みれば、『ニュースの誤報は速やかに取り消しまたは訂正する』との放送基準に照らして、速やかに取り消し又は訂正を行うべきではなかったか

  • 災害情報を速報スーパーで誤ったのであれば、速やかに速報スーパーで取消又は訂正すべきだったのではないか

  • 誤字幕、誤映像の問題については「提言」や「委員長コメント」を行った先例があり、とりわけ災害報道や災害の緊急告知に際しての字幕や映像の正確性や訂正の必要性について、放送局全体が危機意識を有してほしい

以上

2019年度