放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第141回

第141回–2019年9月

長野放送『働き方改革から始まる未来』通知・公表へ

第141回放送倫理検証委員会は、新たに西土委員が加わり9月13日に開催された。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し審議中の読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、意見書の原案が示され意見交換をした。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議していた長野放送の持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から意見書の修正案が提出された。委員会での議論の結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、10月上旬に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うこととなった。
出演者の不適切な差別的発言を放送し審議中の関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、担当委員から意見書の骨子案が示された。次回委員会には意見書の原案が提出される予定である。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客として登場した人物がこのサービスを提供する会社のスタッフだったことが判明したNHK国際放送の『Inside Lens』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議した。その結果、利用客が当該会社関係者でないことの確認が適切に行われたのかどうかなど取材や制作の経緯等を検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を、公示前日に紹介した北海道放送の『今日ドキッ!』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議した。その結果、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがあるとして審議入りすることを決めた。
少年野球のピッチャーの投球などスポーツの試合映像を早回し加工したTBSテレビの『消えた天才』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った。その結果、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を制作過程で加工した経緯等について検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

1. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し、ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。6月の委員会において、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議入りを決めた。
今回は、担当委員から意見書の原案が提出され意見交換が行われた。次回の委員会には、今回の議論を受けた意見書の修正案が示される予定である。

2. 「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』通知・公表へ

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会において、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送と誤解されかねない内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしていた。委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から示された意見書の修正案の内容について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、10月上旬に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うこととなった。

3. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』において、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、この発言について、当該放送局は、4月の放送前に制作や考査の責任者らが検討し、「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」と判断して放送したとしていたが、6月に、視聴者への配慮が足りず心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだったと謝罪した。
委員会は7月、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている民放連の放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から意見書の骨子案が示され、それを基に議論した。次回委員会には、意見書の原案が示される予定である。

4. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議入り

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、外部から指摘があり、NHKが独自調査を行った結果、利用客として出演した男女3名がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。
また、代行会社の社長が、利用客として番組に登場した3人は派遣スタッフとしてこの代行会社に登録していた人物であり、番組のため会社側が手配したことを認めたという。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、本番組の内容からすれば、その取材や制作に際し、「制作者は出演を依頼する消費者や利用者の選定に当たっては、注意深くその人物が企業の関係者ではないかどうかの確認をしなければならない」(2012年7月31日放送倫理委員会決定第14号)という視点を踏まえ、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われるべきであったところ、十分な確認をしなかった可能性が窺われるため、放送に至るまでの経緯や原因を検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議入り

北海道放送が参議院選挙公示前日の7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材し、他の比例代表の候補者にまったく触れなかったのは、公平性への配慮に欠けるという内容の批判的な意見が視聴者からBPOに寄せられた。
この番組は、長年にわたって政治活動を続けてきた一人の立候補予定者が、今回の選挙を「最後の戦い」だとして、スポーツジムで体を鍛えたり、国会議員でもある家族と買い物をしたりして選挙の準備をする様子が4分40秒余りにわたって放送されていた。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、(1)参議院比例代表には複数の政党・政治団体から多数の候補者が立候補したが、当該番組は、北海道に関係がある1人の候補者のみを取り上げ、その他の政党や候補者には言及していないこと、(2)参議院比例代表選挙には制度上北海道という区切りを入れる余地がないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは、北海道内の有権者を、当該候補者に誘導する効果を否定できないことからすれば、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性を害し、放送倫理違反となる可能性があり、しかも、この点に関しては放送倫理検証委員会が再三にわたり指摘してきたにもかかわらず(2010年12月2日放送倫理委員会決定第9号、2014年1月8日同第17号等)、制作に当たってその問題点が検討された形跡が窺われないことをも踏まえ、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして審議入りすることとした。

6. 少年野球のピッチャーの投球などスポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議入り

8月11日に放送されたTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才~2時間半スペシャル』で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した当時12歳の少年を紹介した際、投球シーン全31球のうち7球の映像を早回し加工し、実際より球速が約20%から50%速く見えるよう編集していたことが判明したと、当該放送局より委員会に報告があった。
報告書によると、当該番組を見ていたスポーツ局のスタッフが気づき、確認したところ、担当ディレクターが早回し加工を認めたという。また、その後の調査で、別の放送回で卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の試合映像を放送した際、同様の早回し加工が確認されたという。当該放送局は、過去の放送分すべてについて調査を行っており、調査完了まで同番組の放送を休止するとしている。
委員会は当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

以上