放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第139回

第139回–2019年7月

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』審議入り

第139回放送倫理検証委員会は7月12日に開催され、7月5日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見について、出席した委員長代行や担当委員から当日の様子が報告された。
街頭取材で取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し、前回の委員会で審議入りした読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、当該放送局など番組関係者に対するヒアリングが始まり、担当委員からその途中経過が報告された。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議中の長野放送のローカル番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から示された意見書案について議論された。
出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』について、当該放送局から報告書と同録DVDの提出を受け討議を行った。その結果、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送に至った経緯や放送後にお詫びに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
6月12日に放送されたTBSテレビのバラエティー番組『水曜日のダウンタウン』の企画「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」における「ヤバめ素人」の描かれ方について当該放送局から報告書と同録DVDの提出を受け討議を行った。その結果、当該企画は、民放連の放送基準に抵触している疑いがあるが、当該放送局は放送直後に視聴者から批判を受け、演出上の配慮や注意喚起が十分ではなかったと真摯に受け止めており、また、番組制作者にも差別に関する研修に参加するよう指導するなどの自主的・自律的な対応もとられているとして討議を終了することとした。
番組内で差別的表現があったことをお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』について、委員会は討議を継続していたが、当該放送局のその後の自主的・自律的な対応を踏まえて討議を終了した。

1. 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見の通知・公表について

日本テレビ『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見(委員会決定第29号)について、当該放送局に対する通知と公表の記者会見が7月5日に行われた。2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この2つの「祭り企画」を対象に審議を続けていた。
委員会は、「祭り」が番組のために用意されたものであったのに制作スタッフがその過程を把握していなかったこと、また視聴者の「了解」の範囲を見誤りナレーションによって地元に根差した「祭り」に出演者が体当たりで挑戦していると思わせてしまったこと、さらに挑戦の舞台である「祭り」への制作スタッフの関心が薄くなっていく中で安易なナレーションを生んでしまった、と検証したうえで、程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるをえないと判断した。
委員会では、委員会決定を伝えた日本テレビのニュースを視聴し、委員長代行や担当委員から、通知の際のやりとりや会見での質疑応答などが報告された。

2. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別確認のために名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどの執拗な確認行為をする模様を放送した。ロケのVTR終了後、レギュラー出演の男性コメンテーターが番組内容について、許し難い人権感覚の欠如であって報道番組としての感覚を疑うと厳しく叱責したが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。
その後読売テレビは、取材協力者や視聴者に謝罪するとともに、なぜ当該コーナーを取材し放送に至ったのかについて検証する番組を放送した。さらに社内に「検証・再発防止検討チーム」を設置して、人権に関する全社研修会の実施や映像チェック体制の強化を図るとともに、独自の検証結果を公表した。
委員会は、当該放送局の自主的・自律的な迅速な対応は評価できるものの、なぜ十分な議論や反対意見が出された形跡がないまま、この内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして、前回審議入りを決めた。7月上旬、担当委員が当該放送局や制作会社の担当者の一部に対してヒアリングを行い、その途中経過が報告された。次回委員会までに引き続きヒアリングを実施する予定である。

3.「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』を審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会で、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしている。委員会では前回に引き続き、担当委員から示された意見書案の内容について意見交換が行われた。次回も意見書案について議論を続ける予定である。

4. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議入り決定

4月6日と5月18日に放送された関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、民族差別や女性蔑視をあおる人権的配慮を欠いた放送であるとの批判的意見や、番組は生放送ではなく収録されたもので、編集作業で発言がカットされなかったことについての批判がBPOに多数寄せられた。
当該放送局の報告書によると、4月6日の番組内容について、制作や考査の責任者らが事前に発言を検討し、当該発言は「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」「配偶者が韓国人であり、頻繁に韓国を訪れ親近感を持っているコメンテーターならではの比喩表現であり、差別には当たらない」との判断を行った、5月18日についても、発言には差別的意図はないと判断し、放送したとしている。
放送後、関西テレビは、5月24日、「人種、民族、性別や自傷行為を繰り返す方々への差別的意図はない」という見解をまとめたものの、その後、6月18日に至り、「視聴者への配慮が足りず、心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送するという判断は誤りだった」とする謝罪コメントを発表、社長も記者会見で謝罪した。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と当該番組のDVDを基に討議した結果、民放連の放送基準が、人種・性別などを表現する時に、なにげない表現が当事者にとって重大な侮蔑あるいは差別として受け取られることが少なくないなどとしていることに照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送に至った経緯や放送後にお詫びに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行い、審議を進める予定である。

5. TBSテレビ『水曜日のダウンタウン』の「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」企画について討議

6月12日に放送されたTBSテレビのバラエティー番組『水曜日のダウンタウン』の企画「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」について、放送後BPOに「障害者をネタとし、健常な対応がとれない素人に(リポーターが)どう対応するかを笑う特集になっています」など批判的な意見が複数寄せられた。このため委員会は、当該放送局に番組の同録DVDと報告書の提出を求め、討議を行った。
TBSテレビの報告書によると、『水曜日のダウンタウン』で2018年10月3日にも「中継先に現れたヤバめ素人のさばき方で芸人の力量丸わかり説」という企画を放送し、その時と同じ俳優が「ヤバめ素人」を演じたという。また、昨年10月の放送後「障害者をイメージさせて不快である」という主旨の意見が2件寄せられていたため、今回の企画においては、視聴者にそのような意図にとられないよう検討した上で演出を行ったということであるが、TBSテレビには視聴者から「障害者を演じている設定に見えました」「障害者を笑うつもりですか」などと批判的な意見が寄せられ、身内に発達障害の方がいるという局員からも「障害がある者を身内に持つ身としては、辛い部分もあった」という指摘を受け、改めて社内で話し合ったという。
委員会では、当該企画は民放連の放送基準「(56)精神的・肉体的障害に触れる時は、同じ障害に悩む人々の感情に配慮しなければならない」で記されている配慮が足りなかったという意見が大勢を占め、上記の演出の工夫では改善されたとは思えないという意見も出されたが、昨年10月の放送への批判を受け、限定的ではあるが改善する努力をしていた点を考慮できるとの意見もあった。
その結果、障害がある方やその家族の視点を踏まえた演出上の配慮や注意喚起が十分ではなかったと真摯に受け止めており、また、番組制作者にも差別に関する研修に参加するよう指導したり、番組スタッフ全員で問題点を共有し、今回のような配慮が足りず不快感を与えるような演出については避けるなどの自主的・自律的な対応もとられているとして討議を終了することとした。

6. 高校中退芸人の差別的発言をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も、その方面に行かない方がいいという趣旨の差別的な表現をした。さらに、他の出演者の「道できれいな10円を12円で売っている」人がいたとの発言に、その様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。そして当該高校などからは一連の対応に理解を示してもらったという。
委員会では、討議を継続してきたが、当事者間で話し合いの場を設けてお詫びをしており、当該放送局の自主的・自律的な取り組みを評価して、委員からの意見を議事概要に公表することにして討議を終了した。

【委員の主な意見】

  • 番組内容のチェックが甘く、差別や人権など社会問題に対する認識が見受けられない。制作者には教育と啓発が必要である。

  • 高校の実名を出す必要性が感じられない。

  • 放送倫理上の問題があるが、放送やホームページで訂正するなど、抗議を受けた後は自主的・自律的に対応している。

以上