放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第146回

第146回–2020年2月

NHK国際放送『Inside Lens』委員会決定を通知・公表へ

第146回送倫理検証委員会は2月14日に開催された。
1月24日と2月13日にそれぞれ通知と公表の記者会見をした関西テレビ「『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」とTBSテレビ「『消えた天才』映像早回しに関する意見」について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、3月にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、担当委員から意見書の原案が提出され、意見交換が行われた。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の修正案が提出され、これに基づいて意見交換が行われた。
参議院比例代表選挙に立候補予定の特定候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換を行った。
番組で取り上げている特定企業の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員からヒアリングの結果が報告され、意見書の構成案が示された。
宿泊施設を時々利用する客として登場した男性が、実際には一度も利用したことがなく、また、当該男性がその施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員であることが判明したNHK総合テレビ『おはよう日本』について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、放送倫理に照らして問題がある放送であるが、比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないこと、不十分であると言わざるを得ないものの事前に一定の確認作業が行われていたこと等の事情を総合的に考慮して、当該局に注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

議事の詳細

日時
2020年2月14日(金)午後3時~午後9時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、藤田委員、巻委員

1. 関西テレビ「『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」とTBSテレビ「『消えた天才』映像早回しに関する意見」の通知・公表について報告

関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』は、2019年4月6日など2回の放送の中で、韓国人の気質について、コメンテーターである作家の「手首切るブスみたいなもんなんですよ」という発言をそのまま放送した。また、TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』は、2019年8月11日など3回の放送の際、野球のリトルリーグなど4件の映像で早回し加工を行った。委員会はいずれも放送倫理に違反するものと判断し、『胸いっぱいサミット!』については1月24日、『消えた天才』については2月13日に、それぞれ当該放送局への通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長や担当委員が、通知の際のやりとりや会見での質疑応答などの模様を報告したあと、委員会決定を伝えた双方の放送局のニュースを視聴した。

2. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議、3月にも通知・公表へ

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。番組の制作担当者は利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが、見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。委員会は9月、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて制作担当者から直接話を聞くなど、放送に至るまでの経緯を検証する必要があるとして審議入りを決めた。この日の委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から出された意見書の再修正案について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、3月にも当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. スーパーの買い物客密着企画で不適切な演出を行ったテレビ朝日『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りし、当該放送局の番組制作担当者らに対するヒアリングが行われた。今回の委員会では、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換が行われた。

4. 海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組企画で不適切な演出を行ったTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送の『今日ドキッ!』について審議

北海道放送は参議院選挙公示前日の2019年7月3日、夕方のローカル情報番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。委員会は9月、比例代表制度では自分の住む都道府県に関わりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本来の選挙区の区切りとは異なった報道を行うことで有権者の投票行動をゆがめたのではないか、また特定候補者だけを取り上げ他の比例代表候補者や政党を報道しなかったことは選挙の公平・公正性を害しており放送倫理違反となる可能性があるとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が提出され意見交換が行われ、次回も引き続き審議することになった。

6. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に"セブン-イレブン"がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっていて、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、委員会は12月から審議を続けている。この日の委員会では、担当委員から1月以降に行われたヒアリングの結果が報告されるとともに、意見書の構成案が示された。次回委員会には、意見書の原案が提出される予定である。

7. 番組で紹介した宿泊施設の利用客が関係者だったNHK総合テレビの『おはよう日本』を討議

NHK総合テレビが2019年12月9日に放送した『おはよう日本』における午前6時台のコーナー「おはBiz」で、約4分間にわたり、"キャビン型ホテル"と呼ばれる宿泊施設が紹介された。その中で、施設を時々利用する客として登場した男性が、実際には一度も利用したことがない上に、施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員だったことが視聴者の指摘で明らかになった。NHKは、同月26日に当該番組およびホームページで説明を行うとともにお詫びした。取材・制作担当者は、複数回メーカー社員本人の確認作業を行ったが、勤務先や宿泊施設に対するチェックが十分ではなかったと説明している。このため、委員会では、当該放送局から提出された報告書と番組の同録DVDをもとに討議した。
委員会は、同局において、同種の事案が審議中であるにもかかわらず、看板番組の一つであるニュース番組において、過去に利用したことがないのに時々利用している客として紹介し、また、当該男性がその施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員だったことを見抜けなかったことは、事実と異なる内容の放送であり、放送倫理に照らして問題があるとの厳しい意見が出された。他方で、比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないこと、不十分ながらも事前に一定の確認作業が行われていたこと、再発防止策が導入され、今後徹底を図ることとされていること等の事情を踏まえ、当該局に注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

  • 過去に利用したことがないにもかかわらず、時々利用している客として紹介し、結果的に利害関係者を取り上げるなど事実に反する内容の放送になっている。現在審議中の当該局の他番組と同様の事態が、看板番組の一つであるニュース番組において再発したことは極めて遺憾である。

  • 当該客の属性等について事前に一定の確認作業は行われている。嘘をついている本人に何度確認したところで見破ることは難しい。もっとも、紹介された利用客をインターネットで検索した際、同姓同名のSNSアカウントを発見するなどシューズメーカーの社員である可能性が出てきた時点で、より慎重に確認すべきだった。

  • 比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないことなどからすれば、対象となる問題が必ずしも大きいわけではなく、審議入りするまでには至らないのではないか。

  • 当該局の他番組で起きた問題を受けて作成された「取材・制作の確認シート」をこのコーナーでも導入の検討をしている段階だったというが、導入されていたら今回のことは起こらなかっただろうか。企業のサービスを紹介する際に利害関係者から利用者の紹介を受けることを当面禁止したり、取材協力者に対して利害関係者ではないかを確認するための「出演承諾書」を交わす措置を取るなど、一定の自主的・自律的な事後対応がなされ、今後徹底が図られることに期待したいが、利害関係の有無の確認の難しさが問われている。

  • 「取材・制作の確認シート」を導入して安心するのではなく、記者のスキルや見極める目を高めていくことが重要なのではないか。それは一朝一夕には難しいけれども、より本質的なところから対処してほしい。

以上