2015年度中に委員長の指示を仰ぎながら、委員会事務局が審理入りする前に申立人と被申立人双方に話し合いを要請し、話し合いの結果解決に至った「仲介・斡旋」のケースが3件あった。
「日本語碑文をめぐる申立て」
A局が2014年4月に放送した情報バラエティー番組で、リポーターがベルギー・アントワープにある「フランダースの犬の石碑」を訪れ、「とても残念なものがある」という触れ込みで、石碑の一部に日本語の碑文があることを「興ざめ」などと述べたため、その日本語の碑文を書いた人物が放送により名誉を著しく傷付けられたと申し立てた。委員会事務局が双方に話し合いによる解決を促したところ、同局から「放送後当該番組の再放送、ネット配信、DVD化はしていないし、今後もしない」と申立人の要求を受け入れる回答があり、それを事務局から申立人に伝えたところ、申立人は「誠意ある対応」と評価した。このため、申立人に取下げ書の提出をお願いしたが、その後申立人から全く連絡がなかったため、委員会内規に照らし、申立人の明確な意思が確認できない状態が3か月以上続いたと判断、本件申立ては取り下げられたとみなし、委員会に報告した。
(放送2014年4月 解決2015年8月)
「ハーグ条約適用報道に対する申立て」
B局が2014年8月に放送した報道番組で、「ハーグ条約」の適用を受けた子どものその後をめぐるニュース企画を放送した。この放送に対し、その子どもの父親が、同企画は母親側への取材のみに基づくもので、父親側には取材の申し入れは全くなく、その結果、事実誤認を含む報道により社会的評価を著しく傷付けられたと申し立てた。委員会事務局が双方に話し合いによる解決を促したところ、約3か月におよぶ話し合いの結果、申立人の主な主張を盛り込んだ「通知書」をB局がホームページに掲載、申立人はこれを了承して申立書を取り下げ、解決した。
(放送2014年8月 解決2105年8月)
「ホテル設計者からの申立て」
C局が2015年4月に放送した番組で、鉄道車両のデザインで知られる著名デザイナーが出演し、「(地方都市の有名)ホテルのデザインをした」と紹介した。この放送に対し、ある設計事務所社長が、同ホテルを設計したのは自分で、「代表作」として公言してきた立場が否定され、名誉と信用を毀損されたと申し立てた。事務局が双方に話し合いによる解決を促したところ、約3か月に及ぶ代理人間の話し合いの結果、双方が合意した文章を同局が番組ホームページに1か月間掲載した。これを受けて、事務局から申立人代理人に取下げ書の提出を依頼するため数回にわたり連絡したものの、全く返答がなかった。このため委員会内規に照らし、申立人の明確な意思が確認できない状態が3か月以上続いたと判断し、本件申立ては取り下げられたとみなし、委員会に報告した。
(放送2015年5月 解決2016年1月)