放送人権委員会

放送人権委員会

2016年度 解決事案

2016年度中に委員長の指示を仰ぎながら、委員会事務局が審理入りする前に申立人と被申立人双方に話し合いを要請し、話し合いの結果解決に至った「仲介・斡旋」のケースが6件あった。

「刺青師からの申立て」

A局が2015年10月に放送したバラエティー番組で、男性がタトゥーを入れる模様を再現したVTRを放送した。この放送に対し、刺青業を営む男性が、番組の取材協力の一環として刺青用機械一式を貸し出した際、インクや手術用手袋、マスクの着用等衛生面に配慮することを条件にしたにもかかわらず、一切無視され、「精神的人格権を侵害された」と委員会に申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、申立人と同局および制作会社側との間で約4か月におよぶ話し合いの結果、双方が合意に達し、本件申立ては取り下げられ、解決した。

(放送2015年10月、解決2016年4月)

「温暖化対策報道に対する申立て」

B局は2015年12月に放送した報道番組で、地球温暖化対策として注目されていたCO2の分離・回収・貯留技術についての特集を放送した。この放送に対し、番組でインタビュー取材を受けた大学教授が「私の主義・主張と異なる見解として発言の一部が使用され、著しく信用を損なった」と委員会に申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、約3か月におよぶ話し合いの結果、申立人の主張を盛り込んだ「続報」を同じ番組で放送することで合意し、申立書は取り下げられ、解決した。

(放送2015年12月、解決2016年5月)

「生活保護ビジネス企画に対する申立て」

C局は2015年11月に放送したニュース番組で、生活保護を食い物にするいわゆる「生活保護ビジネス」を取り上げた企画を放送した。この放送に対し、自らが生活保護受給者で、番組のためにインタビュー取材を受け、また薬物依存症で治療中のクリニックや宿泊所の隠し撮りをした男性から、本人も他の患者もモザイクが薄くて特定可能な映像で、プライバシーを侵害されたと委員会に申し立てた。申立人と局側は委員会事務局の要請を受けて4回にわたって話し合いを行ったが、合意に至らなかったため、いったんは4月の委員会で審理要請案件として審理入りするかどうかの検討に入った。ただ、その後事務局が双方に改めて話し合いを促したところ、話し合いが再開されて合意に至り、取下書が提出されて解決した。

(放送2015年11月、解決2016年6月)

「区議会議員からの申立て」

D局は2016年8月に放送した情報番組で、区議会議員が酒に酔ってタクシー運転手を殴り、ケガを負わせた容疑で逮捕され、「運転手が(右折の)指示に従わなかったため殴ってしまったと容疑を認めている」と報じた。この放送に対し、区議は、「運転手に幾度も小突かれたので殴ったのであり、全くの事実無根の放送により社会的評価が著しく低下した」と委員会に申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、約1か月におよぶ話し合いの結果、同局がユーチューブにアップされた動画を削除したことなどを申立人が評価して「権利侵害の問題が解決された」とする取下書が提出され、解決した。また、同区議は同様の内容の放送をしたE局に対しても申し立てたが、同じ理由で取り下げ、解決した。

(放送2016年8月、解決2016年12月)

「元反社会的勢力企画への申立て」

F局は2016年3月放送のニュース番組で、反社会的勢力の内幕を描いた企画を放送した。この放送に対し、番組でインタビューを受けた元関係者が、匿名で顔出しはしない約束でインタビュー取材に応じたが、放送ではモザイク処理も声の変更もなく放送され、肖像権を侵害されたうえ、「身体に危険が及ぶ事態になりかねない」等と委員会に申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、約2か月におよぶ話し合いの結果、双方が合意に至り、申立ては取り下げられ、解決した。

(放送2016年3月、解決2016年12月)

「元後援会長からの申立て」

G局は2016年10月に放送したバラエティー番組で、元力士で現在相撲部屋の親方が年下の歌手と結婚したことをきっかけに弟子が激減し、部屋が崩壊状態に陥ったことから、地元後援会長が辞任したなどと再現VTRを交えて放送した。この放送に対し、元後援会長は、再現VTRで後援会の「関係者」が親方の妻を激しく叱責した場面があったが、地元ではこの「関係者」は自分のことと受け止められ、一方的な取材による「真っ赤な嘘」の放送により名誉を毀損されたと委員会に申し立てた。委員会事務局が話し合いによる解決を促したところ、3か月近くにおよぶ話し合いの結果、双方が和解し、申立ては取り下げられ、解決した。

(放送2016年10月、解決2017年3月)