第114回 – 2010年7月
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
7月27日に開催した第114回青少年委員会では、6月16日から7月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見をもとに、ドラマおよびバラエティー各1番組について視聴し審議したほか、中高生モニター報告について審議した。
議事の詳細
- 日時
- 2010年 7月27日(火) 午後4時30分~7時
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
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視聴者からの意見について
中高生モニターについて - 出席者
- 汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員
視聴者からの意見について
1.フジテレビ『JOKER ジョーカー 許されざる捜査官』7月13日放送分について
このドラマの放送表現について「子どもの殺害シーンがひどすぎる」「子どもを持つ親として見るに堪えない」といった批判意見が寄せられ、番組を視聴の上、審議した。
【委員の主な意見】
- しっかりと番組は制作されている。初回なので主人公の幼児体験、犯人の精神性や境遇を説明する必要があり、ドラマとして問題はない。
- 表現も配慮され、殺害シーンに関しても抑制されており委員会として対応すべき問題はない。
- 多数の意見が寄せられたのは、子どもが被害者であるということ、映像より音声で殺害シーンが表現されたことがかえって怖いという印象を与えたのではないか。
- この番組自体に問題があるとは思わないが、最近のドラマには、これまでに比べ過激なシーンが増えている感じがする。ドラマと現実を重ね合わせて見ることも考えられ、青少年への配慮が一層求められる
以上の審議を踏まえ、委員会としては当該番組に問題はないが、最近の傾向としてBPOにドラマの凄惨なシーンや暴力的表現についての意見が見られることから、あらためて青少年への配慮を意識して、番組制作にあたっていただくよう要望する。
2.TBS『リンカーン』7月13日放送分について
番組内で行った5つのゲームについて「危険なゲームで、セクハラ・パワハラ的な内容だ」「(椅子を回転させるゲームについて)出演者が顔面蒼白になっているのに司会者が無視し、大変危険でイジメにもつながる」等の意見が寄せられ、番組を視聴の上、審議した。
【委員の主な意見】
- 子どもへの影響以前に、危険なゲームの連続で、とても笑って見られる番組ではなく、安全管理という観点から、制作者は何を考えているのか。これがバラエティーとして許されるのか。
- 面白く笑って見られた。視聴者は出演者が体を張っている姿を見て楽しめたと思う。確かに回転椅子は少しやりすぎかもしれないが、全体としてはそれほどの問題があるとは思わない。
- 安全管理というより、回転椅子に関して、やはり立場の弱い者がいじめられている印象を受け、視聴者に不快感を与える。この番組の問題はそこにあるのではないか。
- バラエティーは大掛かりな仕掛けを使わないと笑わせられなくなっているのだろうか。制作者はどういう方向で番組を作ろうとしているのだろうか。
以上の意見のように、委員の番組に対する印象や問題点が分かれたため、委員会としては次回9月委員会で当該番組担当者と意見交換を行うこととした。
中高生モニターについて
今月は「バラエティー・クイズ番組、音楽番組」の中から、「自分の見たい番組」「自分の創りたい番組」の企画を作ろうというテーマで、33人から34本の企画が寄せられた。
【主なモニター意見】
寄せられた企画の内訳は、バラエティー番組が17本、クイズ番組が6本、音楽番組が8本、そのほかゲーム番組とデータ放送連動型番組、ラジオ番組が各1本だった。
バラエティー番組の企画では、視聴者参加型の番組と司会者から番組のイメージを組み立てた提案が目立った。企画『Ordinary Students』(普通の学生たちの意味を込めて、略して『OS』)は、小中学生が主役で、放送局の力を借りてドラマを作ったり学生の流行を追いかけたりしようというもので、かつて放送されていた『学校へ行こう!』(TBS系)を強く意識したものだった。そのほか『お笑いオーディション』という番組は、アマチュア芸人のオーディション番組で、審査には著名な審査員に加えて一般視聴者も参加させたいという提案であった。
一方、タレントを起用した企画には『アリタテッペイ株式会社』『お疲れさまぁ~ず』『柳田理科雄の空想科学研究所~アニメを大真面目に考えてみました』『テリー伊藤の視聴者参加型の番組』などがあった。『アリタテッペイ株式会社』はくりぃむしちゅーの有田哲平を社長にアンタッチャブルの山崎弘也や有吉弘行たちを社員に、台本なしの企画をプレゼンして実現させようというもの。放送時間帯も仕事帰りのサラリーマンや、ちょっと夜更かし好きな中高生のために午後11時台を設定。さらに昨今の経済状況を考慮して、豪華なセットは使用せず、ゲストも人気者はあまり呼ばずロケ費用も節約することが注意事項として付記されていた。また『お疲れさまぁ~ず』という企画は”ゆるキャラ”のさまぁ~ずと”天然ボケ”のふかわりょうを起用して、仕事帰りのサラリーマンをターゲットに肩の力をぬいたトーク番組はいかが、というものである。
そのほか、最近お笑い系の番組が終了したこともあり”お笑いバトル”をテーマにした企画『最強・最笑の芸人グランプリ!!』や素人が芸を競う『お笑いオーディション』、お笑い芸人が仕切る『アドリブおとぎばなし』というものや、タイトルに凝った『笑魂(わらたま)』『キャラなぞ!?』といった企画も寄せられた。
次に、ドキュメンタリー風バラエティー(仮題)『大志、エキスパート』という企画や、クイズを交えた『飛行機マニアックTV』『進め!歴男・歴女』といった自分の趣味や学習につなげたいという企画、もっと中高生に身近なクイズ番組『小学生から大人まで楽しめる ザ・クイズショー』といった企画も寄せられた。
今回、特に目立ったのが音楽番組である。なかでも、かつて放送されていた『三宅裕司のいかすバンド天国』のような視聴者参加型の「バンド番組」という提案が3人から寄せられた。そのほか音楽イントロクイズをより充実させたいという『Speeeed☆Staaaage』、ジャニーズやアイドルによりスポットを当てたいという『じぇい!』や『Music and Talk』という企画もあった。
また、来年に迫った地上デジタル化に対応した「データ放送連動型の新番組」や中高生のリスナーが多いことからラジオ番組『Love School』という提案が寄せられた。この番組には「昼間は学校で、夜は『Love School』で楽しんでほしい」と書き添えられていた。
「今月のキラ★報告」は7月の委員会では選ばず、NHKを含む在京キー局の「バラエティー・クイズ番組、音楽番組」のプロデューサーやディレクターの方にモニター報告を読んでいただき、「この企画いいね」「この発想は実現可能かも…」と思われる企画にひと口コメントをいただきたい旨、要請することとした。
【委員の所感】
- 視聴者参加型の企画を考えた中高生が目立っていた。内容的には濃淡があるとはいえ、時代の雰囲気や社会状況を反映させたいという企画では「現代の日本には頑張っている人が少ない。将来に期待が持てない」などと分析、「夢や希望が持てる、元気になれる企画を」と考えた提案が印象に残った。
- 番組ジャンルを超えて目立ったのは、視聴者参加番組の視点でインターネットとテレビを融合させた企画(『テレビでYou Tube』など)や、来年に迫ったテレビの地上デジタル化と連動した企画も若者らしい発想だと感じた。
- ラジオの市場が縮小し、若いリスナーが減っているといわれる中、日替わりのパーソナリティーと中高生たちが音楽はもとより時事ネタから流行まで多様なテーマをやりとりしようという企画には、自分たちがそこに参加しようという強い意欲が感じられた。
- 一週間の生活から「仕事の疲れがピークに達する水曜」あるいは「ホッとする週末の金曜」にはどんな番組が適しているか、キャスティングや番組内容を含めてまとめられた企画もあり、サラリーマンなどの生態をよくつかんでいると感心させられたり、テレビ局の収益が伸び悩んでいる事情はとっくに承知と見え、制作コストを心配したりグッズ等の放送外収入を当て込んだりした企画には思わず苦笑いさせられた。