放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第118回

第118回–2017年9月

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議 委員会決定を10月上旬にも通知・公表へ
インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話など

インターネット上の情報・映像の真偽を確認しないまま事実でない放送をした、フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』、および同局の情報番組『ノンストップ!』について、これまで2回にわたり委員会での討議が行われたが、その議論を受けて川端委員長から「インターネット上の情報にたよった番組制作について」と題された委員長談話の文案が委員会に示され、テレビの番組制作におけるネット情報利用の問題点について広く注意喚起するため、BPOのホームページなどで公表することになった。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、委員会が独自に行っていた沖縄の現地調査などについて担当委員から詳細な報告があった。さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。委員会での意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、一部手直ししたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビの情報番組『とくダネ!』について議論が交わされた。7月に放送されたこの番組では、間違われた人の映像だけでなくインタビューも使われるなど、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えと質が異なり、制作体制に問題があるのではないかといった厳しい意見が相次いだ。
同じ『とくダネ!』では、翌8月の放送でも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について、十分な確認をしないで「書類送検された」などと放送して謝罪した。この件も合わせて議論した結果、同じ番組で立て続けにミスが起きたことをどう考えるかなど、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を継続することになった。

1. インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督が過去に何度も引退を表明しては撤回したとして、同監督の引退表明歴をフリップで紹介し、それをもとにスタジオで出演者がコメントしたが、このフリップはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。また、同局の情報番組『ノンストップ!』は6月6日、人気アイス特集で「ガリガリ君」を紹介した。この中で「火星ヤシ」味のアイスのパッケージ画像を放送したが、これは実在しない商品であり、ネットに掲載されていた画像の真偽を確かめないまま使用したものだった。フジテレビは、翌日の番組内で謝罪を行った。
このふたつの事案について、委員会で2回にわたり討議が行われた結果、間違った情報を放送された側は、そのことを問題にしておらず、また間違った内容それ自体は大きな問題とはいえない上に、当該放送局によって適切なお詫びと訂正や再発防止策の策定が自主的・自律的になされているので審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、前回委員会で「委員長コメント」により改めて注意を喚起することになった。しかし、今回、同じような問題が他の局でも起こりうることを鑑み、インターネット上の情報を利用するときに起こりがちな問題点について注意喚起するための、より詳細な「委員長談話」が出されることになった。
委員長談話では、インターネット上の情報の利用にあたってはその真贋を見極めて使うというリテラシーが必要だとしたうえで、すくなくとも制作現場の担当者が、その情報自体について疑わしいのではないかというレベルの判断ができる能力を持たなければならないが、まず、どんなに時間に追われていても、真実でないことが紛れ込まないよう手抜きをせず注意し考える習慣を身につけることだ、と指摘している。また、放送局は、それを身につけさせるための実践的な研修と、疑問を提起できる制作体制と職場環境の構築を行うべきだとしている。この委員長談話の末尾には参考資料として、2011年に公表された「若きテレビ制作者への手紙」が再掲されている。

2. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」、「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、制作会社にも文書によるヒアリングを行うとともに、検証を深める必要があるとして担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。この調査結果についての詳しい説明が担当委員から行われ、疑問点については再確認を行うことになった。
さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。

3. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

1月31日に放送された「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。そして、委員会の考えや今後の番組制作への期待をどのような表現で伝えればよいか、詰めの議論が交わされた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

4. 医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月27日に「医療プロジェクト・違法なさい帯血投与の実態」と題する放送の中で、医師法違反事件で逮捕された容疑者として、道路でインタビューに応じている男性の映像を伝えた。しかし翌日、この男性は逮捕された容疑者とは別の一般の方だったと訂正し、謝罪した。
この番組ついて、委員会では「男性の映像だけでなくインタビューも使っていて、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えとは質が異なる」、「間違って放送された男性の顔は逮捕された容疑者の顔とはまったく異なり、理解できないミスだ」、「容疑者の写真を出すことの是非の議論にも影響しかねない」、「時間的、人員的な制作体制に問題があるのではないか」といった厳しい意見が相次いだ。その結果、同じ『とくダネ!』で8月にも、京都府議会議員をめぐる放送で事実確認ができていない部分があったと謝罪したことから、なぜミスが頻発しているかなどについて報告を求めて討議を継続することになった。

5. 京都府議会議員のトラブルの特集で、事実確認ができていない部分があったと謝罪したフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、8月28日の放送で京都府議会議員の夫婦間トラブルをめぐる問題を扱った。しかし翌日の放送で、府議が「書類送検された」、また妻が「ストーカー登録された」と放送した点は、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。
この放送について、委員会では「夫婦間のドメスティック・バイオレンスとストーカーでは問題が違うのに、一緒にしているのではないか」、「府議は放送の翌日に書類送検されていて、容疑者の映像を取り違えた7月の放送とは質の異なる事案ではないか」、「刑事事件の処分はセンシティブな情報であり、もっとも慎重な確認が必要なはずだ」といった意見が出された。フジテレビではインターネット上の情報にたよってミスが続いたため、番組制作について委員長談話が出されるという事態となったばかりなのに、1か月の間に同じ番組で、かつ慎重さが求められる刑事事件の放送でミスが相次いだことを軽く考えるべきではないとして、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を続けることになった。

以上