放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第119回

第119回–2017年10月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』を審議など

10月5日に当該局への通知と公表の記者会見を行った、TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見について、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。
フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』と同局の情報番組『ノンストップ!』で、ネット情報の真偽を確認しないまま放送が行われたことを受け、9月に委員長談話「インターネット上の情報にたよった番組制作について」が公表されたが、この談話に関する当該局の放送を視聴し、意見交換が行われた。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、担当委員から意見書の原案が示された。委員会では構成や表現を含めて意見交換が行われ、次回委員会で今回の議論をふまえた意見書の修正案が担当委員から提出されることになった。
フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月に医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違え、別人の映像をインタビューを含めて放送したのに続いて、翌8月の放送でも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について、十分な確認をしないで「書類送検された」などと放送し、いずれも次の日の放送で謝罪した。委員会は、刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報についての間違いが2件続いたことは問題だとして、審議入りすることを決めた。

1. TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見の通知・公表

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見(委員会決定第26号)の通知と公表の記者会見が、10月5日に実施された。1月31日放送の「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、4月の委員会で審議入りしていた。
委員会ではTBSテレビのニュースと当該番組を視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2. インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』および同局の情報番組『ノンストップ!』で、ネット情報の真偽を確認しないまま放送が行われたことを受け、9月に「インターネット上の情報にたよった番組制作について」と題する委員長談話が公表された。
委員会では、当該局のニュースや『ノンストップ!』などを視聴したあと、意見交換が行われた。

3. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、検証を深める必要があるとして制作会社にも文書によるヒアリングを行うとともに、担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。
委員会では、これまでの調査と検証に基づいて担当委員が作成した意見書の原案が示され、各委員から構成をはじめ表現など具体的な内容についてもさまざまな意見が出された。今回の議論を受けて担当委員がさらに検討を加えて意見書の修正案を作成し、次回の委員会で意見の集約を目指すことになった。

4. 刑事事件を扱った際の情報確認が不十分で2件続いて謝罪したフジテレビの『とくダネ!』について討議(審議入り)

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月27日に「医療プロジェクト・違法なさい帯血投与の実態」と題する企画の中で、医師法違反事件で逮捕された容疑者として、道路でインタビューに応じている男性の映像を放送した。しかし翌日、この男性は別人だったと訂正し、謝罪した。また8月28日の放送でも、京都府議会議員の夫婦間トラブルを扱った際、府議が「書類送検された」、妻が「ストーカー登録された」と放送し、翌日、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。
委員会は、なぜ同じ番組で問題が続いたのかなど、当該局から追加の報告を求めて討議した結果、「刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報なのに、同じ番組で間違いが2件続いたことは大きな問題だ」として、審議入りすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • 医師法違反事案の映像の取り違えは、制作の過程でディレクターらが疑問を感じたにもかかわらず、結果的に放送されてしまっていて、相当深刻だ。この時に反省したというのに、また1カ月後に事実確認が不十分なまま放送したことも問題だ。
  • 放送現場で事実の重み、特に刑事事件の容疑者についての情報の重みについての認識が軽くなっているから、不十分な確認しかしないという同種のミスが続くのではないか。キー局でこのような間違いが起こるのは、ジャーナリズムの現場が下から揺らいでいるといえる。
  • フジテレビの報告書では「系列局に問題はない。自分たちが悪い」となっているが、なぜ系列局との連携がうまくいかなかったのか。
  • それなりに社内調査を尽くし、事実関係を調べているのではないか。

以上