放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第114回

第114回–2017年4月

不適切な表現や取材手法があったと謝罪したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』審議入りなど

今年度、新たに神田委員が就任し、今回から出席した。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りした東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、制作会社にヒアリングへの協力を要請していたが、制作会社としては対応を放送局に任せている旨の回答だったため、委員会として改めてTOKYO MXに対して制作会社のヒアリング実現への協力を求めていくことになった。
IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』で、乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング」が行われたのではないか、という疑惑が報じられた事案の討議を継続した。委員会は、この問題に対する民放連の対応を中心に意見交換をした結果、当該局の当初の対応には大きな問題があったが、その後、当該局、民放連とも自主自律という意味では実効のある対応策が取られたのではないかとして、今回で討議を終え、審議の対象とはしないことを決めた。
NHK総合テレビ『ガッテン!』「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」で、糖尿病治療や予防に睡眠薬が有効であるかのような表現があり、また睡眠の長さの重要性を示す実験を睡眠の深さを示すデルタパワーに関連させる不適切な表現があったとしてお詫びした事案。委員会は追加報告書をもとに意見交換をした結果、当該局による迅速且つ的確なお詫び放送により、懸念された問題について、自主的・自律的な是正策が取られたことから、審議の対象とはしないが、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載することとして討議を終えることにした。
多摩川の河川敷で生活している男性の放送に際し、不適切な表現や取材手法があったとTBSテレビが謝罪した情報番組『白熱ライブ ビビット』に関して、当該局からこれまでの6回のシリーズについても報告書が提出され、意見交換を行った。その結果、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、審議入りすることを決めた。
カラオケ店の撮影の際に、従業員に客に扮してもらいインタビューした北海道文化放送の情報バラエティー番組『北海道からはじ〇TV』について、報告書をもとに意見交換をした結果、当該局のその後の是正策を見た上で決定したいとして、次回の委員会で討議を継続することになった。

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。これに対し、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。
委員会は、情報バラエティー番組であっても前提となるべき情報や事実についての裏付けは必要であり、「持ち込み番組」についての放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして、第112回委員会で審議入りすることを決め、先月、担当委員が当該局の編成や考査、営業の担当者5人にヒアリングを実施し、番組を編成した経緯や放送前の考査の実態などを調査した。
委員会では、この番組は放送局が制作に関与しない 「持ち込み番組」であるため、番組を制作したスタッフにも話を聞いてさらに検証をする必要があるとして、制作会社に対してもヒアリングの協力を求めていたが、制作会社からその対応についてはTOKYO MXに任せている旨の返答があったため、当該局に対して、制作会社のヒアリングが実施できるよう引き続き協力を求めていくことになった。
また、今後の審議の進め方について担当委員から説明があり、論点等についても意見交換した。

2. 番組内での乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』を討議

IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅~外国人の健康法教えちゃいます!?』(2015年9月21日放送)で、ある乳酸菌を摂取していると免疫力を高める効果があるという内容の放送をしたが、これが「広告」であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」ではないかと報じられた事案の討議を継続した。
この番組については、2015年11月の当該局の番組審議会で議論され、出席した局の幹部から「乳酸菌の扱いについては有料のタイアップである」という説明があったが、2016年12月、当該局はこの番組がタイアップで制作されたものでないと訂正していた。
また、当該局からは先月、この問題を受け作成した「番組制作の指針」に関する追加報告書が提出され、制作過程の適正化と視聴者に疑念、不信感を抱かれないための制作上の留意点、番組と広告の識別のための留意点などが記されていた。
委員会では、今回新たに提出された、「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」を策定した民放連の対応策をもとに、意見交換をした。
委員会の議論では、「この放送がステルスマーケティングということはできないにしても、ステマ的な広告の横行に警鐘を鳴らす必要はあるのではないか」といった意見や、「今回の問題に対し、民放連も相当スピード感のある対応をとった。ステルスマーケティングの問題は、それほど重大なことである」など意見が出た。
その結果、当該局、民放連とも自主自律という意味では実効のある対応策が取られたのではないかとして、今回で討議を終え、審議の対象とはしないことを決めた。

3. 糖尿病治療に睡眠薬を直接使えるかのような表現があったとお詫びしたNHK総合テレビ『ガッテン!』を討議

NHK総合テレビの生活情報番組『ガッテン!』(2月22日放送)で「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」と題して、”睡眠を改善することで血糖値が下がる”という最新研究を紹介し、「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」と伝えた。また、紹介した睡眠薬の説明に「副作用の心配がなくなっている」という表現があった。また、睡眠の長さが血糖値の改善に関係があるという実験について、睡眠の深さを示すデルタパワーも関連しているような不適切な表現もあった。
これに対し、放送後、視聴者、医療関係者などから「睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない」「副作用を軽視している」「健康保険では認められていない適応外処方の推奨に他ならない」などの批判が寄せられた。NHKは番組ホームページと3月1日の放送で、睡眠薬の説明が不十分だったり行き過ぎた表現があったりしたため、誤解を与え混乱を招いたことをお詫びし、誤った情報や不適切な表現を訂正した。
当該局から提出された報告書は、問題の原因として、「医学分野にある程度の専門知識があるメンバーだけで番組の制作が進められたため、睡眠薬のリスクを十分にチェックする姿勢が欠けていたこと」や「謎かけやキーワードが視聴者に届きやすいことを重視するあまり、無理な構成になったこと」などを挙げている。
委員会には、当該局からこの番組の過去の放送についての追加報告書が提出された。それによれば、これまでの同番組の放送で、不適切だという指摘を受けた例はなかったということであった。
委員会は、追加報告書などをもとにさらに意見交換をした結果、当該局による迅速且つ的確なお詫び放送により、懸念された問題について、自主的・自律的な是正策が取られたことから、審議の対象とはしないが、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載することとして討議を終えることにした。

[委員の主な意見]

  • まずい方向に進んだら『あるある大事典』のようになりかねない案件だったと思う。今回、いいお灸をすえられたと思って、今後はしっかりやって欲しい。
  • この種の番組ではキャッチーにしようとするとき危険が大きい。『ガッテン!』は特に影響力が大きい番組なので、細心の注意が必要だろう。
  • やはり、自分たちは医療情報に詳しいというスタッフのおごりが一番の要因だったのではないか。
  • この番組に対する日本睡眠学会の批判は極めて適切なものだったが、その批判に的確に応えるお詫びの放送がなされたことによって、問題は解消しているのではないか。
  • 報告書に書かれた再発防止策を実効のあるものにすべく、その継続的な実施を期待したい。

4. 不適切な表現や取材手法があったと謝罪したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を討議(審議入り)

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。番組が中心に扱った男性について「犬男爵」と呼んだうえ、別の男性の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と化け物を連想させるどぎついイラストと合わせて表現したこと、また男性に「お前ら、ここで何やっているんだ」と言いながら歩いてきてほしいと依頼し、男性を「粗暴な人」と印象付ける結果になった点を謝罪している。
問題の放送は「多摩川リバーサイドヒルズ族」と名づけられたシリーズの7回目で、第1回の2015年9月から第6回の2016年5月まで、名物企画として継続的に放送されてきた。
委員会には、当該局から過去の6回分の放送に関する追加報告書が提出されたが、「シリーズ当初から多摩川の河川敷で暮らす人たちを『迷惑モノ』として扱っていて、社会的弱者に対する姿勢は問題だ」「これまで6回の放送で取り立てて批判がなかったから問題ないと思っていたというのは、かなり深刻だ」といった意見などが出されるなど、問題点を指摘する意見が相次いだ。
その結果、当該局の事後の対応と問題点の把握は的確だったが、男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、審議入りすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • ホームレスの人たちを「迷惑モノ」としてとらえて、冷笑している。
  • 取材した対象者を、別の人の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と表現しているが、なぜ「人間の皮を被った化け物」なのか、番組内容からも報告書からもまったくわからない。
  • シリーズの中にはホームレスに寄り添っている回もあるのに、どうして7回目で、当該局も不適切だと認める放送になってしまったのか。
  • 自分たちは安全なところにいながら、社会的弱者に厳しいテレビ局の姿勢は問題だ。
  • これまでの6回の放送に対して取り立てて批判がなく、番組としてはホームレスの人間性が描けているという認識を持っていた、という趣旨が報告書に書かれているが、外からの批判がなく視聴率が良かったとしても、社内から異論があってしかるべき番組だろう。

5. カラオケ店従業員に客に扮してもらい出演させた北海道文化放送『北海道からはじ○TV』を討議

北海道文化放送は3月12日に放送した『北海道からはじ〇TV』で、歌わなくても映像が楽しめるというカラオケ店の使い方を紹介した際、客としてインタビューに応じた人が実は店の従業員だったとして、3月27日に「不適切な演出があった」と、放送とホームページでお詫びした。
委員会では当該局から提出された報告書をもとに意見交換し、お詫び放送やホームページの記載では、何が問題だったのか視聴者にまったく伝わらないと、事後の対応に対して厳しい意見が相次いだ。
その結果、当該局の是正策など今後の対応を見たいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • お詫び放送やホームページ記載の内容では、なにについてお詫びしているのか、視聴者にはまったく分からない。
  • いまだにこんな「お詫び」の内容でいいと思っている放送局があるのか。放送局からカラオケ店に依頼して、従業員に客に扮してもらったと、きちんというべきだ。
  • 放送後、インタビューした社員が「おかしい」と言ったために、事実経過が明らかになったことは評価できる。

以上