第124回–2018年3月
"裁判の被告として別人の映像を4回にわたり放送"毎日放送の『ニュース』を討議
"モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送"東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議など
毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真を放送した際、撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたなどという誤ったエピソードを伝えたことに関し、委員会は事実の裏付けを取らなかったことや写真のキャプション内容を見落としたことは問題だとしながらも、再発防止のための対応策が取られているなどとして、討議を終了した。
裁判所に入る被告の映像を取り違えて、全く別人の映像を被告として4回にわたって放送した毎日放送のニュースについて、当該放送局の報告書をもとに討議した。その結果、毎日放送は、誤って放送された人に謝罪するため、この人を探し出す作業を続けていることから、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。
東海テレビのニュース番組『みんなのニュースOne』で覆面座談会の模様を放送した際、一部モザイクが未処理のまま放送が行われたことについて討議が行われた。委員会はモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。
議事の詳細
- 日時
- 2018年3月9日(金)午後5時15分~7時25分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した
毎日放送『教えてもらう前と後』を討議
2.裁判の被告として全く別人の映像を4回にわたって放送した
毎日放送の『ニュース』を討議
3.モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送した
東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議 - 出席者
-
川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員
1. 皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した
毎日放送『教えてもらう前と後』を討議
毎日放送は、1月9日に放送したバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真の撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたと伝えたエピソードなどに誤りがあったとして、1月23日に訂正放送を行うとともに、番組ホームページでも訂正と謝罪をした。
前回の委員会では、「写真の撮影時期の誤りよりも、ご成婚前の撮影を前提としてありえないエピソードを伝え、それにコメントを加えたことが問題だ」といった意見が相次ぎ、制作の経緯などについてさらに詳しく聞くために、当該放送局に追加の質問を行うとともに、誤った情報が書かれていたという書籍の部分のコピーの提出を求めて、討議継続となった。
今回の委員会では、書籍に書かれた内容の裏付けをきちんと取らなかったことや、写真に添えられたキャプションには撮影時期がご成婚後であり、場所も違うことが書かれていたのに、それに十分な注意が払われなかったことは問題だとしながらも、放送法による訂正放送がなされるとともに再発防止のための対応策が取られ、また宮内庁とも話し合いをして了解を得ているとして、討議を終了した。
2. 裁判の被告として全く別人の映像を4回にわたって放送した
毎日放送の『ニュース』を討議
毎日放送は、去年12月に開かれた元神戸市議会議員の政務活動費詐欺事件の初公判を報道する際、3人の被告のうちの1人としてただの通行人とみられる全く別人の映像を放送した。この誤った映像は、その後の論告求刑公判や判決の報道の際など、合わせて4回放送された。2月に視聴者からの指摘で誤りに気づいた後、訂正放送を行うとともに、ホームページで訂正と謝罪をした。
当該放送局の報告書によると、神戸地方裁判所の正面玄関で取材していたカメラマンが撮影した映像に、被告のほか、通行人とみられる全く別人も写っていた。翌日朝のニュースに向けて映像を編集している過程で、担当記者は、この別人の静止画が被告であるかどうかの確認を求められた際、持っていた顔写真と少し違うとは思ったものの、「写真と実際は違う」と自分を納得させて「大丈夫です」と答えたという。また撮影したカメラマンも、誰を撮影したかなどを記載するキャプションに、映像全体として「神戸市議入廷」と書いただけで、どの部分が誰の映像であるか特定をしていなかった。
委員会では、「被告人ではない人を被告人として4回も放送したことは軽視できない誤りだ」「誤って放送された人が特定できていないので、謝罪もされていないのは問題だ」など厳しい意見が相次いだ。
毎日放送は、誤って放送された人を見つけて謝罪するため、撮影した時刻と同じ時間帯に、同じ場所で通行人を目視で確認する作業を続けていることから、委員会は、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。
【委員の主な意見】
- 映像の取り違えはこれまでもあったが、4回も放送されることはなかった。
- 担当記者の経験が浅いとはいえ、放送されたニュースを見ていないのには驚いた。カメラマンも見ていないということで、理解できない。
- 間違って放送された人は、被告本人とよく似ているが、結果的に無関係な人を被告としてしまったことは罪深い。誤って撮影された人を特定して、きちんと謝罪できるか、しばらく様子をみたい。
- 具体的な再発防止策が取られてはいる。
3. モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送した東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議
東海テレビは2月23日に放送したニュース番組『みんなのニュースOne』で、「働き方改革」をテーマにした座談会を放送した際、経営者や医師など5人の出演者との約束で顔にモザイクをかけるべきところ、一部未処理のまま放送したため、番組の中でお詫びをして、出演者にも謝罪した。
この問題について委員会では、「なぜ特定のシーンだけモザイクが未処理のまま放送されたのかがよくわからない」として、シーンの一部にモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論の内容も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。
[委員の主な意見]
- 約束したモザイク処理がされないと、番組に出演した方が経営する企業の評判を落とすことにもつながりかねない。
- 今後の取材協力者が得られなくなるかもしれないという、放送人にとって大きな問題であるはずなのに、その危機感が報告書からは読み取れない。
- 時間が間に合わないから放送で使わないという判断もあったはず。
- 番組審議会や当該放送局が作っている第三者機関による審議を見守りたい。
以上