第258回-2023年6月
視聴者からの意見について… など
2023年6月23日、第258回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、5月後半から6月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見の中から、バラエティー番組のドッキリ企画などについて意見を交わしましたが、「討論」に進むことはありませんでした。
6月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近見たドラマについて」でした。
最後に今後の予定について確認しました。
議事の詳細
- 日時
- 2023年6月23日(金) 午後4時00分~午後6時00分
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
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視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について - 出席者
- 榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員
視聴者からの意見について
5月後半から6月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画で、プロの女子バレーボール選手が自陣の前衛にいる男性タレントの後頭部にサーブの球を当てたことについて、「手加減していたかもしれないが、非常に危険だと思う。子どもが学校で真似たら大変なことになる」などの視聴者意見がありました。
担当委員は「背中に当てるはずが、2回、頭に当ててしまった。確かに『危ないな』とは思うし、ほめられたものではないが、委員会で取り上げるまでではないだろう」と述べるなど、「討論」に進むことはありませんでした。
また、大手芸能事務所の創業者(故人)による男児の所属タレントへの性加害の問題が長らく報道されなかったことについて視聴者意見が多く寄せられましたが、担当委員は「放送局全体の信頼を考えたときに、今後の対応が大きな課題になる」という見方を示しました。別の委員は「子ども自身に男児の性被害の知識がなく、被害を自覚できないケースもあり、教育現場で教えていかなければならないだろう」と指摘しました。子ども番組の監修者を務めたことのある委員は「番組制作において、徐々に、包括的な性教育の一環として、『男女を問わず体のプライベートなゾーンは他人に触らせない』『嫌なことは嫌と言っていい』などをベースにされるようになってきている」などの説明がありました。全体として意見が出尽くし、「討論」に進むことはありませんでした。
中高生モニター報告について
6月のテーマは「最近見たドラマについて①」で、25人から合わせて17番組(うちラジオ1番組)への報告がありました。およそ半数のモニターが録画または見逃し配信で視聴していました。
「自由記述」では「SNSで番組の予告を投稿してくれるので、興味を持つ機会が増える」などの意見が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では『偉人の年収 How much?』(NHK Eテレ)を最も多い8人が取り上げ、「使命感や達成感が偉人を動かしたことが分かり、人生における価値観を考えさせられた」などの感想が寄せられています。
◆モニター報告より◆
【最近見たドラマについて】
- 『だが、情熱はある』(日本テレビ)
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(オードリーの若林さんと南海キャンディーズの山里さんの)2人がどういう道のりで芸人になり、芸人として売れるためにどういう努力をしてきたかを交互に映して対比しているのが面白い点だと思います。そうすることで2人の努力の相違点や共通点を分かりやすく知ることができ、とても関心を持てたし応援したくなりました。(中学2年・女子・愛知)
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とにかく俳優さんの演技が素晴らしく、漫才のシーンは漫才として笑ってしまったくらい同じ空間に引き込まれました。現役のお笑い芸人さんが色々な役で出演していて、キャスティングや細かいところまで芸人さんへのリスペクトが伝わってきます。今、若い人は作り込まれていないドラマを求める傾向があり、台本が本当にあるのかと思わせられるようなこのドラマは、俳優さんはもちろんスタッフさん全員が同じ意思をもって作品を届けていることが伝わってきます。(高校3年・女子・北海道)
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- 『ラストマン-全盲の捜査官‐』(TBSテレビ)
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主人公のFBI 捜査官が日本に来て事件の捜査をするということ自体、今までにはないような設定で斬新で面白いなと思いました。作り手がどのような思いで作っているのかを考えながら見てみると、今までと違った視点でドラマを見ることができ、面白かったです。(中学3年・男子・広島)
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私はまだSNSをやっていないが、いつかSNSを始めたときに誰かを傷つけてしまったり傷ついたりするかもしれないので、すごく気をつけていきたいと思った。(中学2年・女子・東京)
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- 『わたしのお嫁くん』(フジテレビ)
このドラマはコミカルでマンガのような展開でおもしろく、現実ではありえないキャラやストーリーが痛快だ。取り上げているテーマは、従来は女性が家事で男性が仕事という既成概念をくつがえす社会派なものである。男女の役割が逆転しているからおもしろいテーマになりうるのだが、これは今までの日本社会が男女の役割を固定しすぎていたからこそ新鮮に映るのだと思う。私が大人になるころには主夫も増え、このテーマはおもしろい題材にならないかもしれない。(中学1年・女子・福岡)
- 『FMシアター「桜は、散らない」』(NHK-FM)
FMシアターは毎回とても物語に引き込まれます。今回の物語は高校生の話でしたが、演劇部の2人は苦しい状況でも逆風に負けずに頑張っていて、くじけないことの大切さを学びました。自分もこんな情熱的な高校生活を送りたいと思いました。(高校1年・男子・群馬)
- 『月読くんの禁断お夜食』(テレビ朝日)
いろいろなことで悩んでいるときにこのドラマを見ると、そよぎさんみたいに頑張るぞ!と思えます。ドラマのなかで出てくる料理はどれも美味しそうなので、放送局でサイトを作っていつでも見られるようにしておくといいのではないかと思います。(中学1年・女子・島根)
- 『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ)
知的財産といってもたくさんの種類があることに驚いた。ドラマのなかで出てきたことばなどをすぐに公式ツイッターアカウントで説明してくれるため、理解しながら視聴することができた。(高校3年・男子・神奈川)
- 『墜落JKと廃人教師』(毎日放送)
自殺という重いシーンから始まるのですが、テンポ感やコメディ要素によって最後まで明るい気持ちで見ることができました。自殺がテーマの作品は、“自殺はいけない”“悲しむ人がいるからダメ”といった、いかにも道徳という感じのものが多いと思うのですが、この作品は“1日ぐらい遅らせてもいいじゃないか”“なにかやり切ってからでもいい”といったように一概に自殺を止めるような道徳の授業感がなく、逆に心に響きやすいと思いました。(高校1年・女子・茨城)
- 『ペンディングトレイン』(TBSテレビ)
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このドラマについてたくさんの人が次の回や今後の考察をしたり、ツイッターに考察を載せていたりする。このように日本全国でネットを通して盛り上がるドラマはいいなと思った。島などで大がかりな撮影をしているので、6ヵ月ぐらい放送してもいいのではないかと思います。(高校1年・女子・北海道)
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それまで無人島のような場所で過ごしてきた(ワープした電車の)乗客たちは、現代に戻ってお店でご飯を食べたり、家で生活したりすることに感動していました。当たり前のことだと思っていても、決してそれが普通だと思ってダラダラしてはいけないと考えさせられました。ワープすることは実際にはないかもしれないですが、ネットの恐ろしさは実際のものだと思います。日々の生活に感謝し、ネットには気をつけたいと思いました。(中学3年・女子・福岡)
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- 『風間公親 教場0』(フジテレビ)
木村拓哉さん演じる指導員が、指導される刑事に見切りをつけようとするときに交番勤務になってもらう旨のことを言っていますが、実際に交番勤務の警察官はいい気分ではないだろうなあと思います。刑事になれずに交番勤務をしていると視聴者が勘違いしないだろうか、と思いました。(高校3年・女子・京都)
- 『王様に捧ぐ薬指』(TBSテレビ)
悩みながらも誠実な姿を見せて2人で乗り越えるなかで、2人の間柄がさらに良くなっていくのがこのドラマを見る中で1番の喜びだ。幸せな感情と緊迫な瞬間がハイスピードで入れ替わり、忙しすぎて目が離せない。退屈しない展開が繰り広げられているのが見ていてとても楽しい。(高校2年・女子・愛知)
【自由記述】
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最近ドラマやバラエティー番組がYouTubeやツイッターなどのSNSで予告やオフショットを投稿していて、若い人が興味を持つ機会が増えるのでとても良いなと思います。(高校1年・女子・茨城)
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情報番組で画面の隅のほうに視聴者の声としてつぶやかれたコメントが流れることがありますが、あれは何のためにあるのでしょうか。つぶやく意味が分からず、気になります。(高校2年・男子・山形)
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初めてラジオドラマを聴きました。本と同じような感じかなと思っていましたが、まったくそんなことはなく本当に面白かったです。想像力を働かせることができるからです。ラジオドラマのよさをみんなに知ってほしいと思いました。(中学3年・女子・滋賀)
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中学生のときよりリアルタイムでテレビを見る時間が減った。通学や授業・部活の時間が長くなり、(帰宅後も)あっという間にゴールデンタイムが終わってしまう。そこで最近はTVerなどの見逃し配信をよく活用している。ここ2~3年で無料配信の番組量が増え、より便利になったのがとてもありがたい。週1回の番組を2話連続で見られると前回の内容を思い出したいときにもう1回見ることができるので、1週間の見逃し配信期間を10日や2週間に延ばしてもらえたらさらにうれしい。(高校2年・女子・愛知)
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テレビの番組は視聴率で評価されていますが、TVerなどで見逃し配信されており、私もクラブで定時に見られなかった番組は見逃し配信を利用しています。見逃し配信は視聴率には含まれないと思うので、視聴率で番組を評価するのはおかしいのではないかと思います。(高校3年・女子・京都)
【青少年へのおすすめ番組】
- 『偉人の年収 How much?』(NHK Eテレ)
- 一般的に偉人についてはその人が何をしたかとか、その人が生きてきた歴史をひも解くことが普通だが、偉人の年収というお金から半生を知るのは新しいと思いました。その時代のお金を現代風に例えることで分かりやすくなるのも良いと思いました。(高校2年・女子・東京)
- 伊能忠敬の人生と偉業について年収をキーワードに深く知ることができた。歴史に残る偉業を成し遂げたのに対して年収は低くて驚いた。お金には換算できない使命感や達成感が動かしたのだと思った。人生における価値観を考えさせられた。今と当時を中継しているようなコントめいた演出がおもしろかった。(中学1年・女子・福岡)
- 番組名にある年収(を伝えること)が目的ではなく、歴史の教科書だけでは収まらないこまかい知識や新しい考え方を学べるとてもよい番組だった。(高校2年・男子・山形)
- 『LOVE HOKKAIDO』(北海道テレビ)
ひとつの観光地を取り上げるのではなく、現地のいいところや人とのつながりを紹介していて大好きな北海道の魅力が伝わってうれしいです。アジアを中心に海外でも放送され、番組のホームページも英語や中国語表記に対応していることを知り、グローバルなとても良い取り組みだと思いました。(高校3年・女子・北海道)
- 『日本に憧れ日本に学ぶ~スティーブ・ジョブズものづくりの原点~』(NHK BS1)
スティーブ・ジョブズやアップル製品と日本の文化の意外な関係性が分かって驚いた。この番組を見て、日本の陶器などの技術をさらに知りたくなった。(中学3年・女子・広島)
- 『サザエさん』(フジテレビ)
タラちゃんの声優さんが変わってしまったので、まだ少し違和感がありました。番外編(知り合ったわけや家族関係)をやってほしいです。(中学1年・女子・千葉)
- 『高校生のじかん』(九州朝日放送)
早口言葉という身近な話題が番組になっていて新鮮だった。年代が近いこともあって共感しやすく、テレビ離れが進む若者にも理解を得られすい番組だと思った。(中学2年・男子・東京)
◆委員のコメント◆
【最近見たドラマについて】
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『わたしのお嫁くん』という番組に対して『社会が男女の役割を固定しすぎていたからこそ新鮮に映る番組だ』という感想があった。男女の役割についての考え方は、数十年前から比べるとかなり変わってきたと思っていたが、中学生には今も変わらずに固定観念があると映っているのだと思い、考えさせられる意見だった。
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SNSに潜むリスクの面に言及したモニターが多かったが、SNSの問題は子どもたちも日ごろ向き合っている切実な問題なのだと改めて思った。
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自殺を扱ったドラマについて「道徳っぽさがなく心に響いた」という感想があり、考えさせられた。自死に関する報道でいえば、日本の放送局は免罪符的に相談窓口を一律に紹介するが、それによって憶測を呼び、いたずら電話で窓口がパンク状態になるというデメリットのほうが大きくなっている。一律にやるのではなく、よく考える必要があると思う。
【自由記述について】
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番組の放送中、なぜ画面に視聴者のつぶやきを流すのかという意見があった。番組としては双方向性を意識しているのかもしれないが、他人の意見が次々と入ってくると自分の考えが左右されそうになることもあり、そういうところが気になる若い人もいるのだろう。
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「週1回の番組を2話連続で見られるよう見逃し配信期間を延ばしてほしい」という声があった。放送局側の事情があって難しいだろうが、前編・後編があれば一気に見たいという気持ちは分かるし、いわゆるサブスクに親しんだ世代にはとくにそうした要望はあると思う。
【青少年へのおすすめ番組について】
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サザエさんの番外編の放送を望む声があった。かつて番外編を見た記憶があるが、確かに今の中学生にサザエさん一家の人間関係はすぐ理解できないかもしれないので、改めて番外編を放送すれば興味を持たれるかもしれないと思った。
今後の予定について
次回は7月25日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。
以上