放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第45回

第45回 – 2011年1月

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送のバラエティー番組 『イチハチ』…など

第45回放送倫理検証委員会は1月14日に開催された。
フジテレビの『Mr.サンデー』事案では、当該局から提出された詳細な報告書は、今後同様の事案が発生した時の参考にもなるし、ひいては再発防止の効果も期待できると思われるので、委員会としてこの報告書を公表することの可否を照会したところ、当該局の了解が得られた。それを前提に検討した結果、この事案は、問題の性質、影響度、放送後の対応等を総合的に考慮し、当該局の報告書を公表して、討議を終了することにした。
前回の委員会で継続討議にした以下の2つの番組は、取材方法に問題があり、視聴者に誤解を与えるような内容であった。類似した事案であることから、まとめて審議入りすることに決定した。

  • 毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(10年11月17日放送)
    8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介したが、その中で、ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介された。視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった事案。
  • テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)
    酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。

議事の詳細

日時
2011年 1月14日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、石井委員、香山委員、是枝委員 重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌に関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、街で偶然見つけたかのように放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。
前回の委員会で、当該局から出された社員研修用の詳細な報告書が、単なる監視体制の強化ではなく、現場の自覚と自発的な取り組みを強調していることなどを評価し、これを公表すれば、他の放送局でこうした事案が発生した場合に、調査の方法やあるべき解決策の指針として役立つのではないか、また、この報告書を他局でも研修等の素材とすることで事前に問題点がチェックでき、同種事案の再発防止にも役立つのではないかという意見が多く出された。そこで委員会から公表の可否を照会したところ、当該局から公表の了解が得られた。
委員会では、この事案で問題となった手法が、審議入りを見送ることで今後も安易に使われる可能性があるなど、この事案の持つ問題の性質・広汎性・影響度を考慮するとともに、これまで生じた同様の事案との軽重を比較検討した。この番組が取り上げた月刊女性ファッション誌が付録のバッグの人気でヒットしているという社会現象自体は現実に存在すること、更に当該局から再発防止に有効だと思われる報告書(社内向けで本来非公開)の公表に協力が得られたことなどを総合的に判断したうえで、審議入りしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • 放送により社会に与えた影響が大きいか小さいかという点と、事が起きた後に局がどのように対応したかは大切なポイントだと思う。これまでの事案に照らして、取り上げなくて良いと思う。
  • 当該局の報告書が厚ければ良いのか、そういう判断基準だと誤解されないかという疑問がないわけではない。しかし現場のスタッフが再発防止のために第三者委員会を作って話し合った結果として考えるならば、よく出来ていると思う。現場のディレクターが何を考えてこうなってしまったかが良く分かる。
  • この報告書の水準で各局がやってくれたら、それがどんどんテレビ界に広まってくれたら、委員会としてはありがたい。
  • こういった問題は、「嘘じゃなくて演出の範囲だ。他もやっている」といった反応も予測出来るが、当該局は不適切表現で、やるべき演出方法ではないという認識を示した。こういった真面目な対応は評価できる。
  • 過去の事案で他局から提出された報告書と比較しても、今回は内容的に充実していると思う。そこを評価しないと、「では、どうすればよいのか」という事になってしまう。

【フジテレビ『Mr.サンデー』の社内研修用報告書】

フジテレビから公表する了解が得られた社内研修用の報告書「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」は、放送倫理検証委員会の川端委員長の前文を付して、2011年2月16日、ホームページ上に公表した。また、BPO報告No.93にも掲載されている。

pdf公表にあたって_- 委員長前文
pdfフジテレビの報告書 - 「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送の
バラエティー番組 『イチハチ』

昨年の11月17日に放送された『イチハチ』で、富豪の女性が九州にあるホテルを買収するために折衝する模様が放送されたが、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと、視聴者から指摘された事案。当該局からの経緯報告書や新たに提出された資料を基に議論を行った結果、放送倫理上の問題があり、より詳しい事実関係を関係者からヒアリングする必要があるとして、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

昨年の11月8日に放送された『月曜プレミア!』で、酵素飲料を飲み、断食と組み合わせた方法でダイエットに成功した女性が紹介されたが、この女性がその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明した事案。当該局からは、前回委員会に提出した経過報告書に次いで、あらためて詳細な内部調査を行った結果をまとめた報告書が提出された。
毎日放送の事案同様、放送倫理上の問題があり、制作プロセスや事実関係の確認が必要だと判断し、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

【上記2事案に関する委員の主な意見】

  • 制作担当者のチェックが甘かったことが原因で、出演者が仕掛けたわけではないのに、番組が出演者の商売として有利に作用するという結果をもたらした。そういう意味では、2つの番組には共通性がある。
  • 個人であれ企業であれ、取材対象者がメディアを有効利用しようという意図を持っている場合があることを否定することはできない。しかしそれはメディア側のチェックの問題だ。
  • 番組制作者は、出演者の取捨選択についてきちんと判断しなければならないが、その能力が劣化しているのではないか。
  • 民放連の放送基準のなかに、宣伝になるようなものは放送してはいけないという項目(37条)があるのに、「結果的に利用されちゃったね、おしまい」というのはおかしい。気が付いた人が調べればすぐに分かるのに、あなた任せが蔓延している。制作担当者が調べるべきところを自分がやってしまうと現場スタッフの士気が下がる、といった遠慮があるのだろうか。

上記2番組について委員会は、バラエティー番組や情報番組などの番組ジャンルを問わず、テーマの取材対象として取り上げるかどうかを吟味するリサーチの段階で、事実関係や情報の精査がおろそかになっているのではないかとの危惧感を抱いた。この2番組については、共通の問題点があり、それが視聴者の信頼を失うことに繋がるのではないかという観点から、今後、一括して審議入りすることとした。

以上