放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第44回

第44回 – 2010年12月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』…など

第44回放送倫理検証委員会は12月10日に開催された。12月2日に通知公表が行われた参議院選挙事案については、報道された新聞記事やテレビ番組を見た上で意見交換を行った。
女性誌が付録につけたバッグ関連の取材で、やらせの疑惑が持たれたフジテレビの『Mr.サンデー』について、当該局のプロジェクトチームが社員研修用に作成した報告書が新たに提出されたので討議した。委員の間では評価できる内容だという意見が多かったので、当該局に対してその報告書を公表する意思があるかどうかを確認した上で、今後の対応を決めることにした。
8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介するバラエティー番組。ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介されたが、視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった。誤解を与えるような取材方法や事実関係について継続して討議することにした。
テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)で、酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。当該局で内部調査が行われており、次の委員会までに詳細な報告書が提出される予定なので、討議は次回に持ち越すこととした。

議事の詳細

日時
2010年12月10日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、是枝委員 立花委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

さきの参議院選挙(7月11日投票)に関連して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた4番組の事案は、12月2日に当該4局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。担当委員からそれに関する報告があり、続いて報道された新聞記事とテレビ番組を視聴した上で意見交換を行った。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌が付録につけるバッグがブレイクしていることに関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、偶然に街で見つけたかのようにして放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。当該局の「再発防止プロジェクトチーム」が、本事案の問題点を詳細に検証し、社内の制作セクションに向けて作成した報告書が新たに提出された。委員からはこの報告書は評価でき、委員会がこれを公表することによって、全放送局にわたり再発防止が期待できるのではないか、という意見が出された。

【委員の主な意見】

  • 今回の社内向け報告書は、他の番組を含めてすべての現場で徹底的に議論しようという姿勢が貫かれているところは評価できる。
  • この報告書は事実経緯がよく調べられ、問題点も指摘されている。今後、このような事案が発生した局は、この報告書をお手本にすべきだ、という事例として公表できないだろうか。
  • これまで提出された報告書は、監視体制を強めますというワンパターンだったのに比べれば、今回のものは委員会が言い続けている現場で討論することによりスタッフの自覚を促すというやり方に近い。そういう意味で評価できる。
  • 「事実をありのまま伝える」という基本的な取材姿勢が欠けていた点に問題がある。報告書によると取材者は「(街で見つけた)15人に(あらかじめ用意した)3人を足したのは何故か」と漠然と思っているだけだ。報告書では、なぜ肝心のその分析をしなかったのだろうか。
  • (放送基準解説書の)情報系番組において虚偽が許されないという箇所に該当するし、演出過剰であるということは指摘できる。
  • 制作スタッフの中に、これはおかしいと思った人が複数いながら、積極的に止める手段はとらず、見逃してしまう結果となった。何故そうなったのか、構造上の問題があるのではないか。
  • この社内向け報告書は、担当ディレクターがきちんとした倫理意識を持っていなかったからだと、個人の資質のせいにしているが、むしろそこが問題ではないか。

委員会は当該局に対して、委員会による報告書の公開を打診し、その結果次第で今後どのように討論を続けるかを決めることにした。

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われたバラエティー番組

「世間の常識から外れたセレブな女性のお買い物」というテーマで、8人の若い女性が2週にわたって紹介された。それについて、視聴者から内容に疑問があると、複数の意見が寄せられた。
そのうちの1人で、以前宿泊したホテルが気に入ったので、そのホテルを買収したいという女性に密着。番組では、ホテル側との折衝シーンが流され、あたかも買収話が進んでいるかのように構成されているが、視聴者から、買収話はウソであり宣伝のための話題つくりではないかとの指摘があった。さらに、放送後、買収話が進んでいると信じた利用客からホテルに対して問い合わせが相次いだ。
ホテル側は売却の意思がないことや取材に協力したことなどをブログに載せて対応した。また、そのセレブ女性の周辺関係者が、ホテルのオーナーの肉親であることが明らかになった。
取材方法や事実関係を精査するために、討議を継続することにした。

【委員の主な意見】

  • 放送人の自主・自律性の問題であり、取材・制作の過程できちんとした倫理に基づいて制作していたのか疑問がある。
  • 放送前に、そのセレブ女性が所属する事務所から、制作会社のプロデューサーには、「売却の話はなさそうだ」という情報が伝わっていたが、その情報が局の担当者には伝わっていない。そこも問題だ。
  • バラエティー番組であったとしても、「事実」を扱う場合は、それをねじ曲げないように最大限の配慮が必要だ。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組
  『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

11月8日放送の『月曜プレミア!』で、野菜や果物を発酵させた酵素飲料を飲み、断食と組み合わせたダイエットを体験して、減量や美容の増進に成功したという女性が紹介された。ところが放送後に、この女性はその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明し、当該局は取材時の確認作業に不手際があったことを認めた。
事案の概要を記した経緯書が委員会に提出されたが、事実関係についての詳細な内部調査が進められている最中であり、詳しい報告書を待つことにした。
新たな討議事案も含めて、バラエティー番組でも事実を扱う場合は、正確な情報に基づいて制作されなければならないのに、肝心の情報の確認や取材の方法に共通した問題があるという指摘が委員の間から相次いだ。当該局からの詳細な報告書の提出を求めるなどした上で、次回の委員会で討議を継続することにした。

以上