放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第193回

第193回–2024年3月

NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見への対応報告を了承

第193回放送倫理検証委員会は、3月8日に千代田放送会館で開催された。
委員会が2023年12月5日に通知・公表したNHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
関西テレビが2023年11月3日に放送した『ちまたのジョーシキちゃん』の外食チェーン店のランキングを訂正した事案を討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
2月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。

議事の詳細

日時
2024年3月8日(金)午後5時~午後7時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナウイルス接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見への対応報告を了承

昨年12月5日に通知・公表したNHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見(委員会決定第44号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の公表後すぐに、NHKの全役職員にBPO意見の全文を周知し、全国の放送現場で取材・制作に携わる一人ひとりが、再発防止の取り組みを自分事として真摯に受け止め、互いに納得がいくまで議論を尽くす組織へと改善し、視聴者の信頼に応えていくことや、役員・本部部局長などからなる放送倫理委員会を開催し、出席者からは「視聴者の信頼はNHKにとって必要不可欠で、『公共放送人』としての心構えをしっかり浸透させる必要がある」という意見が出たことなどが記されている。また今回の問題では、上司のCL(チーフリード)や編集責任者(編責)がみずからの役割を果たしていなかったことから、上司や編責の権限を明確に定義した。例えば編責は、企画提案の採否やニュースのオーダー、時間配分を決定するだけでなく、すべての項目の取材・制作における品質管理・リスク管理を行うことを明記した。さらにBPOから「ジャーナリズムに関わる感度の底上げが焦眉の課題」と指摘されたことを受け、「公共メディア職員としての使命感、責任感の向上」「新人層から基幹職まで一気通貫した研修カリキュラムの構築」など、成果が一朝一夕に出るものではないという認識の上で「新たなジャーナリズム教育」に取り組むことなどが記されている。
委員からは、これまでと同じような内容が繰り返されている、制作した者と管理する者が1対1で責任を持てば問題は起こっていなかったはずで縦の管理を強化するなどの取組みにどれだけ効果があるのか疑問だという意見もあったが、委員会決定の公表後に取られた措置に対するフィードバックの意見が載っている点を評価する、新しいジャーナリズム教育の実行に注目したい、NHKのニュース報道の質の高さを踏まえれば問題を組織全体の評価につなげることは慎重であるべきだなどの意見が出され、報告を了承して公表することにした。
NHKの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. 関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』について討議

関西テレビは、ローカルバラエティー番組『ちまたのジョーシキちゃん』(毎週金曜午後7:00~8:00)を制作。2023年11月3日放送のコーナー企画「関西人1万人が選ぶぎょうざがおいしいチェーン店ランキング ベスト10」の中で、大手外食チェーンA社を除外したランキングを放送した。放送後、A社からの指摘を受けて11月24日の番組でお詫びした。
番組は関西での話題や人気施設、有名飲食チェーン店などを取り上げ、ゲストを交えて展開するトークバラエティー番組。おりおりインターネットアンケートの結果をもとにランキングを採用していた。
本放送ではアンケート結果で2位だったA社が除外され、3位以下のチェーン店が繰り上げられ、本来はランク外だった外食チェーンが10位で紹介されていた。
ランキングを捏造したことについて関西テレビは報告書の中で、A社とライバル関係にあった別の大手外食チェーンB社が1位になったことから「同じ番組の同一放送回では同時に取り扱うことができないのではないか」と懸念し、「2位のA社を外すことを、プロデューサーを含む番組全体会議で決定した」旨の説明をしている。
放送後の11月6日、A社からの指摘で社内協議。ランキングのお詫びと訂正をすることを決めたが、A社、B社ともにSNS等による風評被害が出る恐れを懸念しているとして、お詫びは11月24日の番組エンディングロールに直結させた15秒枠で放送。前回放送されたランキングと、A社を2位とした新たなランキングをCGでそれぞれ表示。ナレーションで「ここで関西テレビからお詫びと訂正です。11月3日に放送した『餃子ランキング』の順位に誤りがありました。正しくはこちらです。視聴者ならびに関係者の皆様に訂正し、お詫びいたします」と伝え、ランキングを捏造したことや経緯は一切触れていなかった。(WEBでもお詫び)
関西テレビでは12月8日、第三者委員会である「オンブズ・カンテレ委員会」(2007年の「発掘!あるある大事典Ⅱ」の食品データ改ざん問題を機に設置)を臨時開催。また2024年1月に番組審議会を開いて報告。それぞれの委員からアンケート結果の改ざんについて厳しい意見が寄せられた。

放送倫理検証委員会では2月9日に討議入りを決定。3月8日の討議では、弁護士の委員が委員会規約などを照らして問題点を整理。「本放送が虚偽の疑いがある放送であることは確実」「スポンサーの意向に忖度してアンケートを捏造した行為は放送の自主・自律の根幹を揺るがすという議論になる」との考察を報告した。これまでの委員会では以下のような厳しく指摘する意見が相次いだ。

  • B社に忖度してA社を外したことが問題であるのに、お詫び放送の中でもA社、B社に忖度して経緯を説明しないのは視聴者をばかにしている。
  • 虚偽放送はあきらかで、審議入りか審理入りかのレベルの話だ。悪質性は相当高い。
  • うそのランキングについて視聴者からあまり意見が寄せられていないのは、テレビはこんなもんだと思われているのではないか。
  • 外食産業という消費者、ファミリー層に影響のあることを取り上げているのだから、餃子のランキングにすぎないという問題ではないはずだ。
  • 仮に番組制作に営業がかんでいるとするならば、大きな問題ではないか。
  • 関西テレビはオンブズ・カンテレの存在に甘えている。番組としての自主・自律がない。

ただ一方で、アンケート捏造が構造的、恒常的に行われていた事案とは見受けられないことや、オンブズ・カンテレや番組審議会での厳しい意見を受けて、関西テレビが再発防止に向けた取り組みをしていることから、討議を終了し審議入りは見送った。

3. 2月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

報道番組で芸能事務所創業者から性加害を受けたことを実名告白し、翌月自殺した男性の妻に対するインタビューが放送され、男性が「SNS上で誹謗中傷されたことを苦にしていた」という内容が含まれていたが、誹謗中傷が芸能事務所に所属していたタレントのファンによるものだとは断定されていなかった。ところがテレビ局が同ファンを犯罪者のように扱っているという意見が多数寄せられた。またバラエティー番組が「関西人がイライラする瞬間」というテーマを取り上げ、出演者が「病院から処方箋をもらって薬局に行くと、薬剤師から医師と同じ質問を何度も繰り返しきかれる」「薬剤師には医者への憧れのようなものがある」と発言したことについて、「職業差別だ」「薬剤師を侮辱している」「収録番組であるのにテレビ局はチェックせずに放送した」などと批判する意見が多数届いたことなどが事務局から報告され、議論した。

以上