青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第156回

第156回–2014年3月16日

『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』を審議「委員会の考え」を公表

子どもが主役になった話題のドラマについて。最終回まで視聴の上討論し、「審議対象とせず」。判断した経緯、今回の論点などについて、「委員長コメント」を公表

第156回青少年委員会を、3月16日に7人の委員全員が出席してBPO第1会議室で開催しました。今回、審議の対象となったのは1事案で、審議の経緯と「委員会の考え」を公表して審議を終えることにしました。討論の対象になったのは1案件で審議入りしないことにしました。その他、2月16日から3月10日までに寄せられた視聴者意見を中心に話し合いました。また、3月の中高生モニター報告、来年度の中高生モニター32人の承認、6月開催予定の地方での意見交換会の現状報告、中部日本放送とmmbiへの講師派遣の報告などが行われました。
なお、委員会に先立ち、18人の中高生モニターと7人の委員全員が参加した「中高生モニター会議」をNHKで開催しました。
次回は4月22日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2014年3月16日(日) 午後4時20分~午後6時45分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

【審議事案】

  • 2013年大晦日の午後6時30分から翌日午前0時30分まで放送された『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』(日本テレビ)の、"お尻の穴に白い粉を詰めてオナラとともに顔に吹きかけるシーン""股間でロケット花火を受け止めるシーン""赤ちゃんに扮した男性のオムツ換えのシーン"について、日本テレビからの回答書や意見交換を基に、審議を行い、「委員会の考え」をまとめ審議を終了することにしました。その後、「委員会の考え」が承認されましたので、以下に経緯を含めて公表します。

<青少年委員会からの質問>

2014年2月12日

青少年委員会から日本テレビへの質問

    1. 下半身を露出するなどの3つの場面(肛門に粉を入れ顔に吹きかける、股間でロケット花火を受け止める、赤ちゃん姿の男性のおむつを交換する)の演出意図についてお聞かせください。

    2. 上記の演出について制作者の間でどのような議論が行われたのか、また、出演者(特に女性)に対する配慮はどのようになされていたのかについてお聞かせください。

    3. 老若男女の幅広い視聴者が見る大晦日の22時から23時台の時間帯に上記場面を放送するに至った経緯についてお聞かせください。

    4. 上記の演出について現場や社内でどこまで情報が共有されていたかについてお教えください。その際、考査部門の判断はどうであったかについてもお聞かせください。

    5. 放送の公共性についての貴社の考えをお聞かせください。なお、青少年委員会では2013年10月22日に以下のような「委員会の考え」を公表しておりますが、これについてのお考えもお聞かせください。

      ≪視聴者目線と電波が公共財であることを忘れると、テレビへの信頼は薄れていきます。お笑いも例外ではありません。テレビをもっと魅力的なメディアにしていくために、また多くの視聴者が心地よく笑えるために、バラエティー番組も<人間の尊厳><公共の善>を意識して作られるべきでしょう。≫

<日本テレビからの回答>  2014年2月20日 PDFファイル pdf

<意見交換の概要>  2014年3月6日 PDFファイル pdf

<委員会の考え>

PDFファイル pdf

2014年4月4日

日本テレビ放送網『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』に関する
「委員会の考え」

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会

BPO青少年委員会は、多くの視聴者意見が寄せられた日本テレビ放送網(以下、日本テレビ)『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』(2013年12月31日放送)について、日本テレビに番組の制作意図などの報告書の提出を求めるとともに、制作およびコンプライアンス担当者を招いて意見交換を行いました。日本テレビにはまず、貴重な時間を割き、率直に意見を交換して対応していただいたことに感謝申し上げます。
今後各放送局にも考えていただきたい論点が含まれることから、審議の結果、下記のとおり「委員会の考え」を公表することとしました。

■日本テレビとの意見交換を受けての、BPO青少年委員会の考え方

日本テレビは1989年より、レギュラー番組として『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』の放送を開始し、お笑いの限界に挑戦するユニークな企画を次々と編み出して多くの視聴者に支持されてきました。『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』は2006年に始まったそのスペシャル版で、8回目となる今回は2013年12月31日18時30分から24時30分の6時間にわたり放送されました。
その一部のシーンに対して、表現の過激さや卑わいであることへの不快感や嫌悪感、また、子どもが真似をするのではないかと危惧する視聴者意見がBPOに多数寄せられました。とくに(1)「芸人が肛門に粉を注入してパンツを脱ぎ、別の芸人の顔面におならとともに噴きつける」、(2)「ふんどし姿の芸人の股間に向けてロケット花火を噴射する」、(3)「産着姿の中年男性のおむつ交換(局部のみ映像処理)」の3つのシーンへの意見が多くありました。
日本テレビの回答では、(1)と(3)のシーンは「過去も放送」したことがあり、また、(2)のロケット花火については「安全性を高める改良を施した」上での演出であり、「『マネをしないでください』とスーパーを計2回入れた」こと、制作担当者からはいずれも「不快だった人もいるかもしれないが」「笑ってもらえると腹をくくって制作した」との説明がありました。
以上を踏まえて、青少年委員会が何を問題と考えたのか、以下に2つの論点を挙げます。

まず第1に、「表現上の配慮」です。
バラエティー番組は時に放送の限界に挑戦し、新たな笑いの文化を生み、視聴者の心を解放し活力を与えるという大きな働きがあります。それは同時に視聴者の喜怒哀楽や感受性を直接刺激し、日常生活の価値志向にも影響を与えることを意味します。このため作り手は常に社会の動きにアンテナを張りめぐらせ、視聴者の動向をも見据える必要があります。つまり、表現の内容が視聴者に与える影響は時代の価値観や社会のあり方に規定されると考えられ、過去に放送したから今回もよいという考え方は放送の一般原則となるわけではないことになります。
とくに、(1)「顔面におならとともに肛門から粉を吹き付けるシーン」と(3)「中年男性のおむつ交換のシーン」に対しては、視聴者から「えげつない内容で放送するに値しない」「不快極まりなくチャンネルを替えた」などの意見が多数届きました。それまで楽しんで見ていたのに、その特定の場面によって視聴を打ち切り、番組を不愉快と受け止めた視聴者がほかにも多くいたことが予測される意見でした。日本テレビからは、(1)については「芸人の持ちネタであり、粉を吹き付けられる側もレギュラーの芸人を起用」、(3)については「ベテラン制作スタッフのキャラクターで恒例の企画」と、いずれもプロフェッショナルの芸で、すべて演出の範囲内との説明がありました。しかし視聴者がここで問題にしたのは出演者がプロか否か、演出かどうかということではなく、行為の下品さや卑わいさ、人間に対する否定的な扱いへの違和感であり、バラエティー番組のボーダーラインを超えているという不快感だったと考えます。
青少年委員会は2007年10月23日に「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」を公表し、そのなかで中高生モニターが「出演者をいたぶる暴力シーンや人間に対する否定的な扱い」に対して不快感を表明しています。中高生の認識は多くの一般視聴者の認識と通ずるものと考えてよく、今回は直接的な暴力とはいえないものの、逃げないよう頭を押さえ付けられた状態で顔に肛門から粉を吹き付けられたり、中年男性がおむつ交換されたりする行為を素直に笑い飛ばすことができない視聴者が多数いたことに留意していただきたいと思います。
また、(2)「芸人の股間にロケット花火を噴射するシーン」については、安全性を充分に配慮した上で真似をしないようスーパーで注意喚起したということ、その配慮は多としたいと思いますが、子どもの視聴者を想定すると、視聴者意見のなかにあった「子どもはなんでも真似をする可能性があり、真似をしないでくださいとあれば余計に真似したくなるもの」という声は無視できないものと考えます。安全への配慮がないまま真似する子どもが出てくる可能性は否定できないのです。当委員会が発表した「バラエティー系番組に対する見解」(2000年11月29日)にあるように、青少年はテレビに多大な影響を受け、放送されたものを社会的に肯定されたものと考えて行動の基準とする傾向があります。安全性に配慮するのは当然のこととして、視聴者、とくに青少年がどう見るかという点には細やかに想像力を働かせていただきたいと考えます。
(3)「赤ちゃんに扮した中年男性出演者のおむつ交換のシーン」についてはもう一点、おむつ交換を行っている同じ部屋に看護師役の女性出演者がいたことについて、とくに女性の視聴者から「あってはならない光景だ」「(局部を画面処理で)隠していればいいというわけではない」などの意見が寄せられました。これに対しては制作担当者から、この女性は「出演料をお支払いしているプロフェッショナルの出演者」で、女性も内容を了解した上での出演であるとの回答がありました。しかし、双方了解の上であったとしても、視聴者は女性が下半身を顕わにした男性の前に立たされて目線をはずさざるをえない状態に置かれている構図と捉え、セクハラまがいの演出と受け取っている事実があることを真摯に受け止めていただきたいと思います。番組が男性目線で制作されており、女性の視聴者がどのように見るかという配慮と想像力が十分でなかったのではないかと考えます。

第2に、「放送基準と放送の公共性」についてです。
青少年委員会は、現代の日本でバラエティー番組がもつ意味の大きさ、その重要性についてはよく理解しているつもりです。日々笑いを提供し続けることの苦労についても十分想像できますし、新たな笑いの創出のために快や不快、上品下品の境目で仕事をするということも分かっているつもりです。「下ネタ」も時と場合によっては見る者を開放的にし、豊かな笑いをもたらすでしょう。社会を風刺する毒のある表現が、視聴者の憂さ晴らしになることもあると思います。こうした番組づくりのために民放連の放送基準等を杓子定規にあてはめるつもりはありません。それは本来「なんでもあり」のバラエティー番組の萎縮につながりかねません。
とはいえ、いつでもどこでも誰もが無料で視聴できる公共の地上波放送と、入場料が必要な映画や舞台、CS放送などの有料チャンネルとではメディアの特性が異なり、表現上の制約にも違いがあるということについては、制作側としてけじめをつけていていただきたいということは改めて願わざるを得ません。社会のグローバル化が進む中、幼児からお年寄り、外国人まで多様な視聴者が見る公共性の高い地上波放送においては、課金システムのメディア以上の配慮が必要であることはいうまでもありません。もちろんそのような制約があるからこそ、ギリギリの境界線上のせめぎあいの中で新しい笑いも生まれるのでしょうし、また視聴者からの批判や反発が新たな企画を生む原動力となることもあるとは思います。
しかし、上記の3つのシーンに関しては、視聴者からの意見の届き方から見ても、また私どもが視聴し審議した結果からも、少なからぬ視聴者がおもしろいと感じることができなかったことは事実といわざるを得ません。「おもしろければなんでもいいというのは傲慢」「ネタ切れならやめればいい」といった厳しい意見も届いています。バラエティー番組づくりが、過去のネタの自己模倣やセクハラまがいの演出で笑いをとらざるをえなくなっている方向に向かっているのではないかという危惧も抱かされます。批判し落胆を表明した視聴者には、番組が放送時間の最後に発信した「笑顔でいたい 笑って生きたい」(替え歌) "今年も笑いが溢れる一年になりますように…"(スーパー)という重要なメッセージが残念ながら届かなかったのです。
日本テレビからは繰り返し、「個別のシーンではなく番組の全体を見て判断してほしい」との要望がありました。本件の担当委員は事前に全体を視聴した上で意見交換に臨んでおります。しかし、青少年委員会は番組全体のメッセージが正しければ個別のシーンに逸脱があってもその評価が緩和されるわけではないと考えます。また、民放連放送基準は放送局が自主的に定めた番組づくりの基準なのですから、常にそこに立ち返って番組を制作していただきたいとお願いしているものです。委員会から基準に照らして問題であるとの指摘があれば、日頃からこうした基準を大事にして番組をつくってほしいという促しのためと、ご理解いただきたいと思います。ちなみに青少年委員会は独自に番組全体の評価は行いませんし、行うことができるとも考えておりません。あくまでも視聴者の意見をきっかけに判断をすることが仕事だと考えています。
つまり、番組全体のメッセージがいかに優れたものであったとしても、細部において社会通念を逸脱したものがあれば、表現の自由を最大限に考慮した上で、その是非を問うことが必要だと考えているということです。逆にいえば、個々のシーンに配慮が足りなかったがゆえに番組全体のメッセージが視聴者に理解されないようなことを無くすべく、視聴者と放送局の間に立って放送局と議論を重ね、番組の向上を目指すことが青少年委員会の務めと思っています。

青少年委員会は、青少年に番組が与える影響をできるだけポジティブなものとするために、局側が気づかない視点を提示したり、安易に番組を作成したため結果として逆の効果を生んでいる等の問題を指摘したりして、それを克服するための方策を探ってもらうこと、青少年たちがよい番組として認知しているものや理由を伝え参考にしてもらうこと等、結果として青少年によい影響を与え得る番組の制作、番組向上への気運を高めることを大事なミッションとしています。そのため、番組内容、制作過程等について局側と率直な意見交換をすることが重要な手法となると考えています。
すぐに意見の一致が得られるわけではないということは承知しています。しかし、意見交換を行うことは決して無駄ではなく双方への理解を深める貴重な機会となるはずです。今後もよりよい番組作りのために各放送局と意見交換を行い、ともに考え続けることができればと願っております。

以上

【討論案件】

  • 子どもが主人公のドラマについて、全委員が最終回まで視聴した上で引き続き討論しました。委員からは「子どもがどれだけ傷つきトラウマを感じるかなど、社会的な影響をどこまで考え、リサーチしたのだろうか」「フィクションといえども弱者への一定の配慮や取材による丁寧さや慎重さが必要だ」などの意見もありましたが、「フィクションドラマだという前提で、あだ名についてもドラマの演出として必要なので使ったのだろう」「審議に入ると、社会に問題を投げかけるようなドラマが作られなくなることを危惧する」などの意見があり、審議入りしないことにしました。ただし、討論の結果、この案件について以下のような「委員長コメント」を公表することにしました。

<委員長コメント>

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2014年4月8日

"子どもが主人公のドラマ"に関する
「委員長コメント」

 放送と青少年に関する委員会・委員長 汐見 稔幸

I.審議対象とするかの考え方

テレビ番組の中でもドラマについて、青少年委員会が評価することには種々の難しさが伴う。とくにフィクションドラマの場合、作家と放送局側が主題を選び、その内容を効果的なストーリーに仕立てていくドラマツルギーの手法の選択の判断は、表現の自由としてもっぱら制作側に与えられている。その手法の斬新な創造にこそドラマの生命があり、作品の評価はその手法にも及ばねばならないからである。
もちろん、ドラマの中で青少年のメンタルヘルスが明らかに阻害される場面があったり、年齢にふさわしくない性的行為の場面や登場人物の人権が明らかに損なわれる暴力的・差別的な場面が、ストーリーの展開上必ずしも必要ないと思われるのにある場合には、たとえフィクションであったとしても青少年委員会として問題とし、放送局側と自由に意見交換して納得のいく説明を求めることは行う。その上で、必要ならば視聴者や関係者に対する配慮を放送局側に求めることもあるだろう。しかし、フィクションの場合、例えば差別用語を使用する場面があったとしても、ストーリー展開上、その場面が必要であるということはありうる。登場人物に差別的な呼称を使用するような場合や不必要に暴力的な扱いをするような場合もそうで、ドラマの効果上あってよい(あったほうがよい)場合と、ドラマであっても必要があるとは思えない場合があり、そこに公共の放送であること、放送時間帯などの問題が付け加わる。それらを含めて、いい悪いの境目をどう引くかということは、実際には微妙であり慎重さが要求される。
私たちとしては、青少年の視聴を念頭に、それ以外の手法でも十分ドラマとしてのリアリティ、アクチュアリティが保ちうるのに、あえて問題となるような展開に仕立てたときに、審議対象として取り上げるというのが基本スタンスになる。

II.何が"論点"となったのか

番組への視聴者の関心度を高めようとしたためと思うが、今回のドラマでは、とくに1話目、2話目で、登場人物の非人格的なあだ名呼称と施設長の差別的・暴力的な発言と行為が気になる点であった。これらは、子どもの人格を無視し、想像力を欠いたと思われるものが多く、施設で実際に生活している子どもが視聴した場合に心の傷が深まったり再発しないかということが懸念された。
青少年委員会で討論する中で、制作側としては、こうした設定もその後のドラマ展開の中で生きてくるという発想で行ったのかもしれないが、たとえそうだとしても、このあだ名呼称と施設長の差別的・暴力的な発言は当事者をあまりに無視しているという点で問題となりうるという意見があった。
しかし同時に、こうした世界が実際にあり、恵まれない条件でも必死に生きている子どもたちがいるということをこのドラマで初めて詳しく知ったという意見もあり、その後の展開を見た上で委員会として判断することになった。
私個人としては、主人公の子どものあだ名が実在の施設の固有名詞に近いものになっていて、フィクションであるにもかかわらずこの部分だけがフィクションを超えている可能性があり、事前にこの施設にあだ名呼称を使用することについての相談をすべきであったのではないかという点、そして、児童養護施設のあり方を改善してきた施設関係者の最近の努力を逆なでするような施設長の発言と態度に不快感を抱く関係者は多いだろうと想像できたのではないかという点が論点だと感じた。そして、今回のように現代社会の事象に対して問題提起する番組内容の場合、その引き起こす社会的波紋に対する事前の配慮は、通常にも増して行う必要があったのではないかと考えた。
しかしその後、番組の展開は当初のような批判を浴びるトーンから少しずつ変わっていき、好意的な感想が増えるような内容になっていった。実際にBPOに寄せられる批判的意見は大きく減じ、共感的意見も寄せられるようになっていった。

III.放送局と視聴者に求められるもの

今回のドラマはこのように、当初視聴者から厳しい批判を受ける問題点をいくつか抱えていたが、その後、あだ名呼称など当初浮かび出ながら解決されない問題を残したものの、全体としては次第に視聴者に受容される内容になっていったといえる。差別され親の愛に囲まれて育てられるという当然の機会と権利を奪われた子どもたちの生き様の問題に焦点を当てたことの意義も、視聴者から認められたと思う。
そうした総合評価の上にたって、青少年委員会はこの番組を審議対象としないという選択をした。ただし、II.で述べた論点は、このドラマを最後まで見ても、ドラマの効果上必要性のある設定であったが故に解決されたと認めたわけでないということも述べておかねばならない。このドラマによって、心の傷を深めたり再発した可能性のある子どもがいるということが示されている以上、そのことを問題にした視聴者と関係者に対して、放送局側は、番組が終わった段階で、あらためて誠意ある態度を示すことが求められていると思う。そのことを示すために、異例ではあるが、今回のドラマを審議対象にはしないが、コメントを委員長名で出すことにした。その含意を汲み取ってほしいと思う。
あわせてコメントしておきたいことは、今回の番組をめぐって多くの視聴者が、番組が始まる以前から積極的に発言したため、途中から提供スポンサーにも影響を及ぼしたという点である。これは異例のことであった。
私たちは番組の内容をめぐって、番組を作る側が表現の自由を持っているように、視聴する側が自由に意見を言うことは視聴者の権利と考えている。しかし、視聴者からの批判が、提供スポンサーにまで影響を及ぼすということが安易に行われると、番組制作自体が次第に成り立たなくなっていく可能性が生じる。批判は大いに歓迎したいが、それが放送局と視聴者双方の表現の自由を制限する方向に向かわないようにすることが、今回のことが社会に投げかけた教訓といえよう。

以上

中高生モニター報告

■中高生モニター報告 概要

3月の中高生モニターは、「この1年間の感想」というテーマで書いてもらいました。今回は21人から報告がありました。たくさんのモニターが、毎月リポートを書くことで、テレビ番組をより深く考えながら見ることができたし、自分の世界も広がってとても有意義な1年だった、機会があればまた参加したい、と書いています。また、これからも革新的でますます面白いテレビ番組ができることを期待している、という声も多く寄せられました。
「見てみたいテレビ番組の企画」を書いた経験が1年の中でも特に強く印象に残った、制作者の苦労がわかった、と書いたモニターもいました。
震災関連の番組をとぎれず制作し、現在の被災地の実態を報道し続けてほしいと書いた宮城県のモニターや、地方テレビ局の作った面白いドラマを例に挙げてローカル色の強い番組を応援したいという意見も寄せられました。

■中高生モニターと委員の主な意見

●【委員の感想】中高生モニターの重要性をしっかりと理解し、自分の見方を持っているモニターが多い。来年度もリポートを読むのが楽しみだ。

  • (島根・中学3年男子)たまにニュース番組でBPO関連のことを耳にするのですが、BPOはテレビ番組への影響力が強いことを知り、モニターになることは責任があることだなと思いました。
  • (秋田・中学2年女子)自分の意見や感想が、実際の番組づくりに活かされているのはとても嬉しいことなので、中高生モニターをやって良かったと思います。

●【委員の感想】メディアリテラシーの功罪を論じたり、情報の受け取り方の重要性を述べたり、今回の報告は、とても清々しい気持ちで読め、メディアの存在意義に関して高い意識を持っていてくれて嬉しく思った。

  • (北海道 高1年男子)批判的に番組を見聞きするメディアリテラシーは大切です。しかし、それが過剰になって番組づくりをおさえつけるようになってしまうと、テレビ・ラジオが成長しなくなってしまいます。長い目で見ると「適度」というのが大切なのかなと思います。
  • (埼玉・高1年女子)多くの人に影響を及ぼすテレビ番組、特に報道番組について情報の伝え方はもちろん、情報の受け取り方も私たち青少年が考えていくべきだと思いました。
  • ●【委員の感想】1年間モニターを務めてみて、テレビの見方が変化した、あるいは自分以外の人たちの意見を読んで、多様な考え方があることに気づいたなど、中高生の成長にとって大きな意味のある制度になっていると思った。

    • (愛知・高校2年女子)モニターになってテレビの見方が少し変わった気がします。今まではただ何となく画面を眺めていましたが、この1年はテレビの内容について家族や友達と話し合う機会が増えて、メディアの便利な点、気をつけなければいけない点が見つかりました。
    • (神奈川・中学3年女子)この1年間で、同じ番組を見ていても人それぞれ感じ方が違うのだと改めて思いました。他のモニターの意見が自分の考えと真逆だったこともあり、とても驚きました。こんなにも考え方が違うのだとわかったので、これから物事を考えるときに活かしていきたいです。

    ●【委員の感想】 モニターたちのメディアリテラシーが明らかに高くなっているのがよくわかった。この方法は、学校の授業でも使えるのではと思った。テレビ番組に対する評価の目も曇りなくまっすぐな基準を持っている。

    • (神奈川・中学1年男子)どの番組でも似たような顔ぶれだとテレビを消すことが多々ありました。2014年は新しいスターが生まれるようなアイディアあふれる番組がたくさん出てきたらいいなと思います。
    • (神奈川・中学3年女子)私がこのモニターに応募した理由はテレビが好きだからでなく、今のテレビ番組のほとんどがつまらないと感じていて、どうしてつまらないのか、伝えられたらいいなと思ったからです。この1年で、その目的を自分なりに達成できました。

    ●【委員の感想】地方発の番組への応援の意見や、自分も参加できる番組に対する報告が印象に残った。

    • (佐賀・高校1年女子)わが家は『めんたいぴりり』(テレビ西日本)ブームでした。福岡のテレビ局の十周年記念ドラマでしたが、本当にはまりました。地方でもやれるんだぞ!という制作者の心意気を感じました。
    • (岐阜・高校2年女子)『テラスハウス』(フジテレビ/東海テレビ放送)は、一度普通に放送を見て、それから副音声も加えてもう一度見、さらにTwitterやYou Tubeで、もっと楽しんでいます。放送中にオンエア鑑賞中のテラスハウスのメンバーのつぶやきをTwitterで見ることができたり、未公開シーンをYou Tubeで見ることができたりするのが、今までにない番組の作り方だと思います。

    ●【委員の感想】多くのモニターが、今テレビに求められているものを的確に表現していることにも感心した。

    • (愛媛・中学1年女子)『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ/南海放送)は、欠かさず見ていました。家族で見て、楽しめて、飽きることなく、下品でなく、夢中にさせてくれる数少ない番組です。
    • (新潟・中学3年男子)テレビ番組はこのごろ類似番組が多すぎたり、コンセプトがしっかりしておらず、半年後には全く違う内容になっていたりするので、出演者に頼らない、オリジナリティーのある企画の番組が増えてほしいです。

    ●【委員の感想】リポートを教育の機会と捉えるのではなく、中高生には感じたことを自信を持って、感性のおもむくままに書いてほしい。

    • (宮城・中学2年男子)普段はリポートを書く習慣がないので、文章力がついたような気がします。

    その他

    • 3月4日に中部日本放送で加藤副委員長が講師として、3月11日にmmbiで小田桐委員が講師として、それぞれ参加した「意見交換会」の報告がありました。
    • 2014年度の中高生モニター32人が承認されました。
    • 6月6日に沖縄で意見交換会を開くことが報告されました。

    中高生モニター会議

    3月16日(日)午前11時半から午後3時半まで、NHK放送センター本館4階474会議室で、「2013年度中高生モニター会議」を開催しました。出席者は中高生モニター18人(中学生9、高校生9)と7人の青少年委員全員、そして今回はNHK制作局青少年・教育番組部マネージング・プロデューサー 滝沢 昌弘氏にも参加してもらいました。
    滝沢氏は『中学生日記』『Rの法則』など様々な青少年番組の企画開発にかかわってきた経験があり、今は『Let’s天才てれびくん』の監修をされています。番組を企画する上での苦労や、時代に即した或いは先取りした番組開発をする上での視点の置き方、番組の組み立て方など、具体的な番組制作について話をしてもらいました。その後、委員とモニターは、『Let’s天才てれびくん』のスタジオや、ニュースセンターを案内してもらいました。
    後半はモニターが4つのグループに分かれ、委員と一緒に、「こんな青少年向け番組が見てみたい、作りたい」というテーマに沿って、番組企画をまとめ、発表しました。"中高生のリアルな姿"を見ることができる番組というコンセプトで、もしも今の中高生が縄文時代にタイムスリップしたら?という番組企画を立てたグループや、"中高生が参加するチャレンジ系の旅番組"というテーマで、『伊能忠敬くん』という、Twitterと連動する形で参加者を募り、視聴者からお題をもらって旅の目標を設定する内容の番組企画を発表するグループもありました。発表の後、滝沢氏に専門の立場からそれぞれの企画を講評してもらいました。この会議の模様は、後日、冊子としてまとめることにしています。