放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第77回

第77回–2013年12月

「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発
フジテレビ「ほこ×たて 2時間スペシャル」(2013年10月20日放送)の審議入りを決定

参院選関連の2番組、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本『百識王』
2014年1月上旬にも「委員会決定」を通知・公表へ

第77回放送倫理検証委員会は12月13日に開催された。
今夏の参議院議員選挙をめぐって、選挙に関する放送の公平・公正性の観点から一括して審議対象となっている、関西テレビのニュース番組とテレビ熊本の情報バラエティー番組について、担当委員から前回の委員会での議論を踏まえた意見書修正案が提出された。意見交換が行われた結果、表現の細部の修正などを委員長に一任して、2014年1月上旬にも当該局に委員会決定を通知し、公表することになった。
ネット詐欺の被害者として放送した人物が、実はネット詐欺専門の弁護士から紹介された、当時の所属事務所の事務員だったことが問題になった日本テレビの情報番組『スッキリ!!』についても、担当委員から意見書修正案が提出された。委員会では、取材から放送に至る過程をどう判断すべきかなどについて、さらに意見交換が行われ、担当委員が次回委員会に再修正案を提出することになった。
他局がワイヤレスマイクで取材した音声を無断で受信し放送に使用していた鹿児島テレビの2つのローカル番組『ゆうテレ』と『チャンネル8』について、担当委員から意見書の原案が提出された。意見交換の結果、議論の成果を加味した修正案を次回委員会に提出して、意見の集約をめざすことになった。
「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発し、番組が打ち切られたフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(2013年10月20日放送)について、前回に続いて討議を行った。委員会が求めた詳細な報告書が当該局から提出され、意見交換の結果、真剣勝負を標榜した番組を信じた視聴者の信頼を裏切ったとして審議入りが決定した。審議対象には、同様な問題があったと当該局が認めている他の2回の放送分も含まれる。

1.参院選関連の2つの番組、関西テレビの『スーパーニュースアンカー』とテレビ熊本の『百識王』についての審議

一括して審議の対象となっているのは、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、自民党の比例代表選挙立候補予定者だった太田房江元大阪府知事の選挙準備活動を紹介した関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』(6月10日放送)と、自民党の比例代表選挙の渡邉美樹候補が著名経済人としてVTR出演している企画を、参議院選挙投票当日の午前中に放送したテレビ熊本の情報バラエティー番組『百識王』(7月21日放送)の2つの番組。
前回までの委員会の議論などを踏まえた「意見書修正案」が担当委員から提出され、同様な問題が今後さらに繰り返されないための委員会の提言部分などについて意見交換が行われた。
その結果、表現の細部の修正は委員長に一任して、委員会の意見とすることが了承され、2014年1月上旬にも、当該局への通知と公表の記者会見が行われることとなった。

2.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介されたが、実は被害者ではなかったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演したネット詐欺専門の弁護士の当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして審議入りした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
担当委員から、当該局の関係者に実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を整理した「意見書修正案」が提出された。
委員会では、これまで裏付け取材が不十分だとされた事案との比較で、専門家である弁護士の紹介を信じたことなど、事案の取材から放送に至る過程に過失があると断定することの是非や問題発覚後の対応などをどう判断するかなどについて、さらに質疑や意見交換が行われた。
その結果、今回の議論を踏まえた再修正案を担当委員が作成し、次回委員会に提出することになった。

3.他局の取材音声を無断で受信して番組に使用したことが問題になった鹿児島テレビの2つのローカル番組についての審議

鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(6月19日、8月7日放送)と週末のミニ番組『チャンネル8』で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部の活躍ぶりを紹介した。その際、選手を激励する監督の声をあわせて10か所で約2分間放送したが、これは他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったことが判明した事案。
担当委員から、取材ディレクターやカメラマン、音声マンなどに実施したヒアリングと、前回までの委員会の議論を踏まえた「意見書原案」が提出された。
委員会では、音声の窃用が電波法59条に違反することを取材ディレクターが知らなかった事情や、問題が起きた背景に地方の放送局ならではの課題があるのではないかという点などをめぐって、意見が交わされた。
その結果、議論の成果を加味した修正案を担当委員が次回委員会に提出して、意見の集約をめざすことになった。

4.対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』について討議し、審議入りを決定

フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚、当該局は社内調査の結果ほぼ指摘どおりであるとして、番組を打ち切った事案。
前回の委員会では当該局が提出した報告書をもとに議論が行われたが、さまざまな意見が出され、継続討議になっていた。委員会が出した質問書に対し、当該局は改めて詳細な報告書を提出、これをもとに意見交換が続けられた。
その結果、真剣勝負を標榜した番組である以上、それを信じて番組を見ていた視聴者の信頼を裏切ったと言わざるを得ないとして、審議入りすることを決めた。
委員会は上記番組のほか、同じような問題があったことを当該局が認めている、2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて 2時間スペシャル』についても審議の対象とする。

【委員の主な意見】

  • ていねいな番組作りをしないとバラエティーとしての妙味や面白さは出ないはずなのに、最後は編集でなんとかしようという安易な考えになっているのは問題ではないか。
  • 斬新で面白い番組として評価されていたものを、ひとつのコーナーがぶち壊したとすれば残念だ。
  • 無茶な番組を作らざるを得なくなった時の判断ミスが、結果として番組の信頼を失い、番組打ち切りという最悪の結果になってしまった。
  • バラエティーは演出があって当然良いが、今回は「不当表示」だと思う。
  • 真剣勝負が売り物で、視聴者のほとんどはそれを前提に見ているのに、そうではなかったというのはやはり演出の枠を越えており、信頼を裏切ったと言わざるを得ないだろう。

以上