第187回 – 2012年9月
無許可スナック摘発報道事案
肺がん治療薬イレッサ報道への申立て事案の審理…など
「無許可スナック摘発報道への申立て」事案のヒアリングとヒアリング後の審理が行われ、本事案の「委員会決定」 (決定文)の起草作業に入ることが決まった。「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理が行われた。
議事の詳細
- 日時
- 2012年9月18日(火) 午後3時~7時30分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
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無許可スナック摘発報道事案のヒアリングと審理
イレッサ報道事案の審理
国家試験事案の報告
8月の苦情概要
その他 - 出席者
- 三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員
「無許可スナック摘発報道への申立て」事案のヒアリングと審理
本事案は、テレビ神奈川が本年4月、神奈川県警による無許可営業のスナック摘発と女性経営者の逮捕を現場で取材し、4月11日夜の『tvkNEWS930』でニュースとして放送したことに対し、この女性と家族から「軽微な罰金刑にもかかわらず、顔のアップ映像や、実名、自宅の住所等まで放送したのはプライバシーの侵害」等と申立てがあったもの。これに対しテレビ神奈川は、「通常の実名報道原則に基づいて放送した。申立人の基本的人権についても十分慎重に検討した」等と反論している。
今月の委員会では、申立人とテレビ神奈川の双方に対し、個別に事情を聞くヒアリングを行った。
申立人側は女性経営者ら2人が出席し、「放送だけでなく、フェイスブック等ネット上でも実名、自宅住所、顔のアップ、逮捕の瞬間や連行される模様までとらえたニュース映像が1か月以上もの間、再生可能な環境にあったため、地元でも様々な波紋を呼んだ。その結果、申立人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)で心療内科に通院したり、子供も含めた家族全員の生活に想像以上に深刻な影響を受けた」と訴えた。またこれをテレビ神奈川に抗議したところ、「(犯罪を犯したのだから)しょうがない」などと誠意のない対応だったと述べた。
一方、テレビ神奈川からは報道局の幹部ら5人が出席し、神奈川県警が年間150件以上の無許可営業の摘発を進める中で、「地元のローカル局として警鐘を鳴らすという意味からもニュース価値があると判断して報道した」と強調。顔のアップ映像を繰り返し使用したことについても、「特に映像をクローズアップしたわけではなく、むしろニュース内容を視聴者にきちんと伝えるため」等と説明した。ただ、ネット上にこのニュース映像が長期間再生可能な状態で放置されたことについては、「動画配信を始めた時点で、細かいところの確認を怠っていたという反省はある」と認めた。さらに申立人の抗議に対しては、「そのような暴力的な表現はしていない」と述べた。
ヒアリング後も審理を続けた結果、委員会は本事案の「委員会決定」(決定文)の起草作業に入ることを決め、10月上旬に起草委員会を開くことになった。
「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理
本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたり肺がん治療薬イレッサに関する問題を取り上げた企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性から放送倫理に抵触する内容により人権を侵害された等と申立てがあったもの。これに対しフジテレビは、番組に人権侵害も放送倫理に抵触する部分もないと反論している。
前回の委員会後に、申立人側から「反論書」が、被申立人側から「反論書」に対する「再答弁書」が提出され、双方からの書面がすべて出揃った。
この日の委員会では、まず、事務局が双方の主張で新たに付加された内容を説明した。その後、起草担当委員が、委員会として論点とする事項を整理したレジュメを配布し、考え方を説明した。
本事案で申立人は、申立人の発言を取り上げた部分に名誉とプライバシーの侵害があるとしている他、イレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する、正確性や公正性等に欠けた番組内容によっても人権を侵害されたと主張している。
委員からは、番組内容が放送倫理に抵触するとする申立人の主張が、申立人に対する人権侵害とどう関連しているのかや、委員会の判断の対象とする範囲等をめぐり、様々な意見が出された。
議論を受け、起草担当委員の間でさらに論点を整理し、次回はそれをもとに審理を続けることとなった。
「国家試験の元試験委員からの申立て」事案についての報告
本事案は8月の委員会で審理入りが決まったが、先行する事案の審理があり、今月は事務局より双方からの書面の提出状況について報告した。10月9日の委員会で実質審理を行うことにしている。(事案の概要は8月の議事概要、もしくは審理中の事案をご参照ください)
8月の苦情概要
8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
(個人又は直接の関係人からの要請) - 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・6件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)
その他
- 広島地区意見交換会を開催(9月14日)
放送人権委員会委員と広島地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会が9月14日に広島市で開かれ、地元民放とNHKの計6社から52人、委員会から3人の委員と事務局が出席して、実名報道と匿名報道等をテーマに意見を交換した。(詳しくは意見交換会・シンポジウムの項をご参照ください) - 盛岡で東北地区意見交換会を開催(12月4日)
放送人権委員会委員と東北地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会を12月4日に盛岡市で開くことが決まった。東北6県の民放各局とNHKに出席を呼びかけ、人権と放送倫理をめぐって意見を交わすほか、震災報道についても取り上げることにしている。東北地区での開催は2005年に仙台で開催して以来7年ぶり2回目となる。 - 次回委員会は10月9日(火)に開かれることになった。
以上