青少年委員会

青少年委員会

2007年10月23日

「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解について

2007年10月23日
放送と青少年に関する委員会
委員長 本田 和子

青少年委員会では、テレビのバラエティー番組における罰ゲームなどに関し、放送関係者に対応を求める次の見解を発表しました。
今回の見解は、バラエティー番組において「罰ゲーム」に代表される「出演者の心身に加えられる暴力・性的表現」に関し、視聴者の厳しい意見を踏まえ、青少年委員会で慎重に審議を重ねた結果、青少年の人間観・価値観を形成するうえで看過できないこととして、BPO加盟社(NHK、日本民間放送連盟会員の放送事業者)に対し、遺憾の意を表明し今後の対応を求めたものです。

全般的に視聴率が高いとされるバラエティー番組に関して、しばしば、視聴者から批判的見解が寄せられる。その大半は、番組のおおよそは認めながらも、いわゆる「罰ゲーム」に代表される「出演者の心身に加えられる暴力」と「性的表現」についてのコメントで、「青少年に与える影響を考慮し、中止あるいは内容の検討を要望する」というものである。

本委員会は、このことをめぐって、以下のような対応を取ることとした。

  • 平成12年に「青少年委員会」から提案された「罰ゲーム」に関する見解を確認し、それに対する制作者側のその後の対応を検討する。
  • 現在放送されている番組中の「罰ゲーム」を検討する。
  • 7月下旬に開催される「中学生モニター会議」において、中学生視聴者の見解を問う。
  • 上記資料を参照して、本委員会の見解を表明する。

委員相互の申し合わせに則り、本委員会としては「罰ゲームに代表される出演者の心身に加えられる暴力・性的表現」に関して、以下の見解を表明したいと考える。

見解

現在放送中のテレビのバラエティー番組において、「罰ゲーム」に代表される「出演者の心身に加えられる暴力・性的表現」に関しては、ものによっては若干の減少がみられるが、あるものに関しては時を追うごとに過激化する傾向も見受けられる。このことに関して、本委員会は以下の理由により、遺憾の意を表明し今後の検討を要望したい。

Ⅰ. 平成12年11月委員会見解との対応

平成12年11月、「放送と青少年に関する委員会」は、「バラエティー系番組に対する見解」を表明し、番組中の「暴力表現」や「性描写」に関して、民放連放送基準の条文数ヶ所に抵触し、また、放送基準審議会による平成11年要望の主旨に悖るものとして検討を要請している。

しかし、現在放送中のバラエティー番組の「出演者に加えられる暴力」および「性的表現」に関して、内容と表現に関して若干の改善が認められるものの、必ずしも委員会要望が遵守されているとは言い難く、改めてさらなる検討を要望したいと考える。仮に、委員会要望が繰り返し無視されるとすれば、本委員会と番組制作者との協同作業たるメディアの自浄作用を疑わせる結果を生み、現在進行中のメディアに対する法規制の動きを促進する恐れがあると危惧されるからである。

Ⅱ. 中学生モニターの所見

モニター会議に参加した中学生のなかで、好んで見る番組としてバラエティー番組を挙げた者があったが、それらの者たちは、「出演者をいたぶる」暴力シーンに関して、一様に不快感を表明していた。彼らは、これらの暴力シーンが、「いじめ」等の日常行動に与える直接的な影響は否定しつつも、「人間に対する否定的な扱い」に対して不快感を表明し、さらなる改善を求めたのである。

「暴力シーン」が視聴者の不快感を触発することは、青少年委員会の「青少年へのテレビメディアの影響調査」によっても明らかにされている。

以上の結果を踏まえて、「視聴者の不快感を触発するシーンを、あえて、番組中に挿入する理由」を問い、改善の余地があるものとみて更なる検討を要請したい。

Ⅲ. 「暴力シーンが“いじめ”を誘発するとする視聴者見解」に関して

放送される暴力シーンと、未成年者の「いじめ行動」との直接的な関係に関しては、多くの調査研究があるが、いまだ確定的な結論が見いだされていないというのが現状である。

したがって、放送される番組中の特定シーンと頻発する青少年非行との間に因果関係を特定することは困難ではある。しかし、民放連放送基準にも明文化されているように、「社会の秩序、良い習俗・習慣を乱すような言動は肯定的に取り扱わない」「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する」等々の留意事項は、テレビメディアの持つ公共性ゆえに「自らに課した自己規制」であって、軽々に無視すべきではないと考える。

メディアツールの多様化が進む現状にあって、なおかつ、多くの青少年はテレビメディアの公共性を信頼している。そのゆえに、放送されている内容や表現はすべて、「社会的に肯定されている」と受け止められやすい。したがって、人間を徒に弄ぶような画面が不断に彼等の日常に横行して、彼等の深層に忍び込むことで、形成途上の人間観・価値観の根底が侵食され変容する危険性もなしとしないので、これらの動きが今後とも増幅されることのないよう一考を促す次第である。

なお、この「見解」を貴局の放送番組審議会へ報告されることを希望する。

以上