青少年委員会

青少年委員会

2008年4月11日

注意喚起 児童の裸、特に男児の性器を写すことについて

2008年4月11日
放送倫理・番組向上機構(BPO)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
委員長 大日向 雅美

BPOに寄せられる意見の中で、”男児の全裸や性器を写す”ことに対する批判意見が年々急増しています。05年度には6件だったものが、06年度には18件、07年度には42件ありました。

批判意見としては、例えば、「ニュース番組で小学生の強化合宿に密着取材し、小学6年の男児が合宿所で局部丸出しの状態で入浴しているシーンをモザイクやボカシ等の映像処理もなく、そのまま放送していた。仮にこの入浴シーンが動画サイトに投稿された場合、児童に対し局はどのような責任を負うのか」「お笑い芸人のお宅での入浴シーンで6歳と11歳の兄弟の性器が写っていた。その兄と同年齢の私の息子が、『もう6年生になるのに恥ずかしい。それに、学校で馬鹿にされちゃうよ』と言っていた。”男の子は性に開放的であれ”といった考え方も確かにあるが、日本が児童ポルノの発信地と揶揄され、また、男の子が性的な被害に遭うニュースも珍しくなくなってきた昨今、裸体をさらす、イコール男らしさとする保守的な精神論は時代にマッチしないと思う」といった意見が述べられています。

指摘を受けた番組は、性器をことさら大写しにしたものではなく、番組制作側の意図も、裸の映像をおおらかな、家族的シーンとして放送したものであると思われます。しかし、それでもなお、視聴者の中には、映像を見て不快に感じ、画面の悪用を懸念する声があがっていることも事実です。

近年、由々しき傾向として、乳幼児を含むあらゆる年齢の女児と男児の裸体が、インターネットの普及と合成写真を作成する機器の発達で、世界中でポルノ制作のために利用されるなど、児童ポルノの氾濫が国際的現象となっている状況を指摘し、番組内の映像が加工されて児童ポルノとして利用される事態を懸念する声が強まっているのです。

青少年委員会では、こうした視聴者意見の動向に注目するとともに、社会的な”児童ポルノ”に対する考え方も勘案して、昨年11月から5回にわたって、この問題を議論してきました。”児童ポルノ”の撲滅を訴えているグループの代表から現状について意見を聞く機会も持ちました。その結果、一般的に児童ポルノといえば女児と思われがちですが、かなりの割合で男児ポルノが含まれていることが明らかとなりました。日本での数値は正確に把握されてはいませんが、違法・有害情報の発信に関する情報収集と対処を目的として、2006年6月に開設されたインターネット・ホットラインセンターに通報されたサイトの20%弱が男児のものでした。また、昨年7月に神奈川県警に摘発された男児ポルノサイトには1日平均6000件、3年間で684万件のアクセスがあったといいます。視聴者意見にもあるように、もはや男児の全裸が”おおらかさ””ほほえましさ””開放感”だけを表現するものではなくなってきていることを十分に認識する必要があります。とりわけ、大きな影響力をもつテレビ放送にあっては、この認識が欠かせない段階にすでに立ち至っていると判断いたします。

なお、テレビで放送された児童の裸体が、インターネットで悪用されたという確証は得られておりません。しかし、インターネット上に男児を含む児童ポルノが氾濫しているのは事実であり、出会い系サイトや盗撮を利用したものに限らず、児童の様々な映像がモーフィング(合成)され出回っていることからも、テレビで放送された裸体や性器が悪用される可能性は十分にあると考え、対処にあたる必要があります。

一度インターネットに利用されると、その画像は半永久的に残り複製され続けて、児童の成長後に深い心の傷を残すことが懸念されます。また、そうでない場合でも、テレビ画面の中で自分の裸体や性器を写された児童が、後日友だち間でからかいの対象となるなど、著しく羞恥心を感じて傷つくことも考えられます。いずれも児童の人権保障の観点から、十分な配慮すべきことと考えます。

本委員会は、もとより番組制作者の表現の幅を狭めるつもりはありません。しかし、現在の”児童ポルノ”をめぐる状況を憂慮し、民放連放送基準78条にある「全裸は原則として取り扱わない」とする原則を踏まえて、テレビ映像の悪用を予防する観点から、テレビ関係者に注意を喚起するよう求めることといたしました。

以上