青少年委員会

青少年委員会

2002年12月20日

「消費者金融CMに関する見解」について

2002年12月20日

青少年委員会は、2002年9月から消費者金融CMについて、議論をしてきました。 4ヶ月の議論を経て、12月20日に「消費者金融CMに関する見解」として記者会見をして発表しました。
発表後の民放連のコメントや、委員会に寄せられた視聴者の意見などを公表します。
なお、議論の過程に関しては、"議事のあらまし"をご覧下さい。

近年、消費者金融CM(銀行系消費者ローンCMも含む)放送の増加に伴って、放送と青少年に関する委員会(略称:青少年委員会)にもCMへの批判的意見が寄せられている。意見の内容は、CMが「お金がなければ借りればよい」というメッセージを伝えるものであり、誰もがしていることとして安易に借金をする風潮を助長し、子どもや若者の金銭感覚を歪めるのではないか、というものと、そのようなCMを時間帯に関係なく流す放送局の倫理観念への疑問に集約される。

CMの多くは、若者へのアピールを中心に宣伝効果をあげるよう親しみやすく制作されており、音楽は幼児が覚えて口ずさむほどリズミカルに作られている。こうした点から、これらのCMによって青少年が容易に影響を受けるのではないかと懸念される。

なお、新規顧客に関する統計は、20代の若者が約半数(45.6%)を占めていることを示している。(出典:消費者金融連絡会2002年3月期)

青少年委員会では消費者金融CMを取り上げ、委員間の議論に加えて民放連の番組考査専門部会長に直接考えを聞く機会を設けた。委員会としては、放送事業者が、放送文化の向上の一翼を担っていることを自覚し、番組を向上させるよいスポンサーを求めて努力をしていることは十分に理解するものである。

また、深刻化する不況のなか、CM収入なしには存続しえない民放として、消費者金融CMを扱わざるを得ない事情や、CMのスポンサーである消費者金融会社の中には、証券取引所に上場している会社も多くあり、うち3社は日本経済団体連合会の会員であるという現状も認識している。

しかし、青少年委員会としては、放送を通じて青少年に悪影響が危惧される状況を見過ごすことはできない。視聴者から寄せられた意見にも真摯に対応すべきであると考える。

まず、民放連放送基準は、"3章 児童および青少年への配慮"で「放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する。」(18)としている。

また、"17章 金融・不動産の広告"では、「金融業の広告で、業者の実態・サービス内容が視聴者の利益に反するものは取り扱わない。」(131→現137)とし、「安易な借り入れを助長するCM表現でないこと」が留意すべき点のひとつにあげられている。さらに、"15章 広告の表現"では、「広告は、わかりやすく適正な言葉と文字を用いるようにする。」(117→現121)と定めている。

これらを踏まえ、青少年委員会としては、消費者金融CMの現状は、放送基準に抵触するおそれがあると判断する。

そこで、以下の3点を民放各社に要望する。

  • 民放連が定めている「児童および青少年の視聴に十分、配慮する時間帯」である17時から21時までの時間帯は消費者金融CMの放送を自粛する。
  • 金利および遅延損害金などについて、もっとわかりやすい表現を用いて明示するなど、借金をすることに伴う責任とリスクについても触れる。
  • 昨今の自己破産および多重債務者の増加を踏まえ、安易な借り入れを助長するような内容ではなく、社会的責任を自覚したCMを放送する。

■民放連・放送基準審議会議長コメント

放送基準のさらなる順守・徹底への要請を含めて大変厳しい内容の見解である。

3点の要望には、民放の公共性と企業経営とのバランスの観点から直ちに受け入れ難いものがあるが、あえて委員会が見解をまとめた意味を重く受け止め、可能な限りその主旨を踏まえて対応策を検討したい。現在、放送基準審議会で消費者金融CMに関するガイドラインを策定中であるので、これがまとまり次第委員会にも説明したい。

日本民間放送連盟 放送基準審議会議長
桑島 久男(名古屋テレビ放送社長)

視聴者からの反響(代表的なもの)

27歳 石川

現在、テレビコマーシャルで大規模な宣伝を繰り返している大手消費者金融業者の多くは、利息制限法に定める利率を超える違法な営業を行っている。このことは、多くの判例が示しているばかりか、消費者金融業者が裁判所に提出した訴状でも違法な金利で契約していることを自ら認めており、もはや議論の余地はない。罰則がないとは言え、消費者の正確な商品知識の無さにつけ込んだ悪質な行為であり、許し難い。テレビで放送されることにより、あたかも合法行為であるかの如く錯覚を起こしており、この影響は軽視できない。時間を区切った自粛では十分な効果が期待できず、全面的な放送禁止若しくは利息制限法による金利が超えていることを消費者に知らせるよう、義務づけるべきである。

男性 千葉

昨今、犯罪が多発しています。私はこれは借金に起因するものが相当あると思っています。委員会が、日ごろ私が感じていたことを民放各社に要望されたことを知り、敬意を表したく筆をとりました。今後益々のご健闘を祈ります。

男性 34歳 東京

「消費者金融CM自粛」の記事を読み私も昨今のはんらんする消費者金融のCMの弊害に心を痛めていたのでこういった良識的な行動を起こしてくれる組織があることを知り思わず感謝の意を述べたくなりました。日本が不景気で荒んでいる社会になった、と1番痛感するのは四六時中流れる消費者金融のCMです。いたいけな可愛らしい店員やほのぼのとした家族愛を描いて一般市民を幻惑する非常に巧妙で悪意を持ったCMで民放には社会的責任や誇りがないのか、と情けなくなります。政治や官僚や知識層による反対意見が出てこないのも疑問でした。いくら広告収入が減っているからといって金払いのいい消費者金融業者に頼る民放には何らかの規制や圧力を行なうべきです。今度はプロ野球にまで進出らしいではないですか。委員会の行動は大変社会性のあるものです。継続な行動を期待します。

男性 35歳 東京

「消費者金融CMに関する見解」を発表したことに敬意を表します。誰かが言ってほしいと思っていました。あらためて、青少年委員会の活動に拍手を送ります。

女性 29歳 北海道

よくぞ言ってくれました、という感じです。最近、サラ金会社はイメージアップに必死なのか、「犬を飼いたいなら、お金を借りてどうぞ購入してください」と、ふざけたCMまで作って、それを苦々しく思って見ていた1人です。 テレビ局各社は、お金儲けのためなら、青少年、大人にとってもよくないCMを流し続けるのでしょうか。それならば、そのようなテレビ局に、政治を批判したり、援助交際を批判したり、あるいは「鈴木宗男」のような人を批判する資格もありませんよね。自分たちが一番、お金のために手段を選んでいないのですから。
私は、パチンコ屋のCMも、時間帯を選んで流すべき、と思っているのですが、その辺はどうお考えでしょうか。とにかく、このような運動をしている会がある、というのを初めて知りました。これからも頑張ってください。応援しています。

男性 18歳 山梨

今回の消費者金融CMに関する見解について。 民放各社への3点の要望で「民放連が定めている「児童および青少年の視聴に十分、配慮する時間帯」である17時から21時までの時間帯は消費者金融CMの放送を自粛する」という項目に対して、現在は生活の習慣の変化で21~24時に小中学生でもテレビを見ている事も多いです。ですから、17~21時ではあまり効果は望めないと思います。
「金利および遅延損害金などについて、もっとわかりやすい表現を用いて明示するなど、借金をすることに伴う責任とリスクについても触れる」という項目に対して、消費者金融には、借りたい時に借りれるというメリットがあるものの、借金が増えると、後の返済が大変になるというデメリットがはらんでいる。ですから、これなら効果はあると思います。
「昨今の自己破産および多重債務者の増加を踏まえ、安易な借り入れを助長するような内容ではなく、社会的責任を自覚したCMを放送する」という項目に対して、お金は楽して手に入れるものではありません。ですからこれなら効果はあると思います。

以上