青少年委員会

青少年委員会

2002年6月19日

法によるメディア規制に反対し、放送界の自律強化を求める声明

2002年6月19日
放送番組向上協議会
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会では2002年に政府が国会に提出した「個人情報保護法案」と「人権擁護法案」について議論し、“両法案は、表現の自由を脅かすだけではなく、せっかく積み重ねてきた放送界の自律努力を無にするものであり、放送文化の将来性を阻害するものだ”と考えることで認識が一致。同時に、“放送関係者に対しても、これまでの放送のあり方を厳しく点検し、自己規律を一層強めることを要望する”ことに決定。

2002年5月28日に「メディア規制法案に対する反対声明と放送界の自律を求める声明」原案を各委員に送付。6月12日に開催の委員会で原案を承認し、6月19日に記者会見を開いて公表しました。

私たちは、政府提案の個人情報保護法案と人権擁護法案に反対します。両法案とも、表現活動に政府・行政の介入を認めるものであり、放送の自由を抑圧する危険を伴うものと判断します。

放送と青少年に関する委員会は、放送界の自律によって放送文化の向上を図り、青少年の知識と情操を豊かにすることを目的とした第三者機関です。視聴者・市民の放送に対する批判、苦情、要望を公開し、審議し、番組制作者・放送局に自省を促す見解を発表するなど、2000年4月の発足以来、次第にその存在意義が認められつつあると自負しています。

言論表現の自由は、基本的人権の要の位置を占める大切なものです。その自由は市民一人ひとりの権利にかかわり、民主主義を左右する問題です。しかも、歴史が示すようにきわめて脆いものです。多数決原理で単純に是非を決めてよい性質のものではありません。表現の自由をめぐる問題は、社会の自律的な論議を深めるなかで解決すべきものと考えます。

両法案は、表現の自由を脅かすだけでなく、せっかく積み上げてきた私たちの自律の努力を無にするものであり、放送文化の将来性を阻害するものと言わざるを得ません。

私たちは、法によるメディア規制に強く反対します。同時に、この機会に、放送関係者がこれまでの放送のあり方について厳しく総点検し、自己規律を一層強めるよう求めます。

プライバシーへの侵入、集団的過熱取材による人権侵害や性・暴力表現の行き過ぎなど、メディアに対する苦情、批判は根強いものがうかがわれます。国会に未提出の「青少年有害社会環境対策基本法案」を含め一連のメディア規制法案は、このような世論のメディア不信を背景にしており、放送が焦点の一つになっていることは否定できません。

放送界は、人権、青少年に関する第三者機関の設置や各局ごとの自律強化を進め、集団取材対策の具体化にも乗り出しました。しかし、その成果も努力もなお充分とは言えません。放送の公共性や社会的影響力の大きさについてどこまで自覚しているのか、強い疑問を持たざるを得ないような事例も後を絶ちません。この状況が改善されない限り、メディア規制法反対に世論の全面的な理解と同調を得ることは期待できないでしょう。

私たちは、放送界が現状を直視し、大胆な自律強化によって表現の自由を守り、放送文化を創造的に発展させるために、決意を新たにして一層、努力されるよう、要請します。

以上