第8回 – 2007年12月
フジテレビ 『27時間テレビ・ハッピー筋斗雲』審議
事務局からの報告 …など
フジテレビ 『27時間テレビ・ハッピー筋斗雲』審議
「善意の放送の形をとりながら、結果的に自分や周囲の人たちが傷つけられた」と、出演させられた一般の人から抗議が寄せられた番組について、前回委員会後にフジテレビへ詳細な質問を行った。その回答をもとに、「審理」か「審議」かを巡って議論が行われた。その結果、「審議」事案として、番組の作り方についての放送倫理上の問題を指摘し自省を促す提言を行うことにした。そして、これまでの議論を踏まえて、虚偽の設定や、構成上に作為があったことなどについて、担当委員が委員会の意見をまとめ、次回委員会で最終結論を出し、その後公表することになった。
なお、委員会では、「審理」だから重い、「審議」だから軽いという考えはとらない。より良い番組作りのために役立ててほしいので、放送局はそのことを理解してほしい。また、公正さを保つために慎重に時間をかけざるを得ないことを周知しようということになった。
事務局からの報告
事務局から以下の件について報告し、委員会はその扱いを協議した。
1.「奈良・放火殺人事件をめぐる調書漏洩事件」報道・・・読売テレビ報告書。
- 「奈良地検が秘密漏示容疑で令状に基づいて京都大学教授の自宅と大学の研究室を家宅捜索した。その日の昼のニュースと夕方のニュースで、”関係者によりますと(中略)調書から○○教授の指紋も検出されたということです”と、教授が一連の事件に関与していた可能性が強いことを示す内容で、実名を映像入りで報道した。しかし、捜査の結果、教授の指紋は検出されず、奈良地検は当該教授に対する立件を見送った。読売テレビは、捜査当局が最終処分で教授が事件と関わりがないとの判断を下した際に、その事実を伝えることにより教授の名誉回復を行う報道を怠った。このため番組担当者らの社内処分を実施し、教授あてにお詫びの文書を提出した。また、年末の番組内で、その事件を振り返る中で、名誉回復措置を取ることを考えている」
以上の報告内容について委員会では、どういう裏付けを取って報道したのかが不明であること、これから行われる名誉回復措置がどういうものであったのか、次回までに最終報告書の提出を要請、検討して公表することにした。また、今後、犯罪報道の問題について委員会が検討する場合、ケースのひとつとして取り上げることも考えたほうがいいかもしれないなどの意見が出た。
2.『報道ステーション』マクドナルド元従業員制服証言報道・・・テレビ朝日報告書
- マクドナルドのフランチャイズ店で調理日の偽装があった問題で、直営店でも調理日改ざんがあったと元店長代理が制服を着て告発発言した。しかし、「やめた人が制服を着ているのはおかしい」、「制服は現在の制服ではない」など視聴者からの指摘が多く寄せられた。テレビ朝日は、番組で演出方法に誤りがあったと放送し、委員会宛に説明文書を提出した。
委員会では、元従業員の制服姿の告発発言と、お詫びの両方の録画を視聴して、議論。
- なぜ、制服を着せる演出をしたのかの説明がなされていない
- 当委員会の『朝ズバッ!』に対する見解を踏まえて、内部告発の扱い方を学習しているとは思えない。
などの意見が多く出された。検討の結果、委員会からテレビ朝日に質問書を出し回答を求め、その内容を公表するという方針を決めた。
3.香川・坂出市事件の犯人視報道(祖母と二人の孫が殺された事件)
- 殺された子供の父親が、警察へ通報したのがなぜ遅かったのかとの疑問がコメンテーターと司会者の間で出た番組に対し、視聴者から「犯人視している」との抗議が多数寄せられた。他の局では、一部報道で発見から通報までの時間の経過が疑問視されていることを父親に質問して、その疑問に怒った父親の姿を何度も繰り返し放送した。また、別の番組ではコメンテーターが共犯について息子さんしかいないと発言。さらにある番組では、コメンテーターが「殺された祖母が孫を盾にしたのではないか」と憶測を述べた。容疑者逮捕後も犯人視した番組で謝罪がなされていないなどの視聴者意見が多く寄せられた。事件の捜査段階での報道のありかたについて、大きな問題が多く含まれている。
委員長から「参院総務委員会でも、オウムの事件のとき以来、まったくテレビは学習していないではないかという意見を述べられた議員がいて、この問題については次の放送倫理検証委員会で議論の対象としますと申し上げた。この委員会で扱うとすると、犯罪の捜査段階の報道のあり方という視点からで取り上げることになると思うが、どうするのか議論していただきたい」と発言があり、議論した。
- 程度の問題だが、犯罪の捜査過程において、犯人の推理等を延々とやること、繰り返しの映像で印象づけるということはいかがなものかと思う。しかし、これは一切やってはいけないという具合にもいかない。
- 結論から言えば、こんなことをやっていると、犯罪報道にどんどん規制がかかってきますよということ。
- 変なことになると、犯罪報道全部が萎縮してしまう結果を招きかねない。いけないのは犯人視報道と憶測報道だ。
- 委員会として犯罪報道の問題をテーマにシンポジウムを開いたり、各社の代表を全部集めて議論をぶつけ合わせるというようなことをしてはどうか。一定の結論を出そうということは考えないで、この問題をいっしょに考えようというシンポジウム的なことをやるなど、もっと違うやり方、対応もあるのではないか。
- 個別に一つ一つ取り上げていくよりは、もっと大きい影響を与える可能性があるということでは、いいやり方かもしれない。
4.光市事件裁判報道
- 「光市事件」の報道を検証する会から、「光市事件の差し戻し審報道では、あまりにも弁護団へのバッシングがひどく、事実関係についても間違いや歪曲がある。また、制作姿勢としての作為や、いわゆる演出過剰、再現映像でも事実に反した部分もあって非常に誤解を与えている。当該局には、質問書を出したが、いずれも門前払いのような回答で、真剣に考えてくれない。裁判員制度導入を間近に控えて、こういう裁判報道のありかたについて、6局18番組を取り上げて、委員会で検証して欲しい」と申し入れがあった。
委員からは、
- 小委員会を作ってやっていかないと、できないのではないかと思う。
- 公正な論評やコメントの範囲にとどまっているのかどうか。そこを逸脱して、ほんとに問題が番組の中にあるのであれば、それは取り上げないといけないと思う。
- 裁判報道一般のあり方のようなテーマを入れると、手に余るのかなという気もする。
最後に、委員長が、当該局は基準にまったく反していないと言っているが、委員会として「具体的にこの点についてはどうして基準に反していないと思うのか」と質問すべきと思われるところを抽出することから始めようと提案し、その作業を委員長代行に要請。その上で、どうするか、次回委員会で検討することにした。
委員会では、これまで提出された資料、当該局から提供された18番組の放送録画を配布し、次回委員会までに視聴してもらうことにした。
視聴者意見の検討
一ヵ月間の視聴者意見の概要を事務局が報告した。
香川・坂出市事件についての意見が多く寄せられ、また言葉の問題、メディアスクラムなどについての意見が特徴的だった。
以上