NHK『ニュースウオッチ9』 新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見の通知・公表
上記委員会決定の通知は、12月5日午後2時から千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会からは小町谷委員長、米倉委員、大村委員の3人が出席し、NHKからは報道局長ら3人が出席した。
まず小町谷委員長から委員会決定について説明し、本件放送には放送倫理違反があると判断したことを伝えた。続いて担当委員から、インタビューで話しているのがワクチン接種後に亡くなった人の遺族なのに、コロナ感染で亡くなった人の遺族であるように受け取られる放送だったことや、取材相手に意図を明確に説明し十分な了解をもらい、そのうえで取材するという当たり前のことができていなかったこと等について指摘があった。これに対してNHKの報道局長が「ご指摘いただいたことを、報道局長として非常に重く受け止めている。取材・制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする基本的な姿勢を再確認し、ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行したい」と述べた。
その後、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には28社42人が参加した。
はじめに小町谷委員長が、意見書のポイントとして4つの問題を挙げた。1番目は、取材のやり方に基本的な問題があり、その具体例として、遺族への説明が不十分で、ワクチンの問題を取り上げないという考えが遺族に対して事前に説明されることがなかったこと。2番目は、VTR制作の担当者が、コロナを巡る取材経験が必ずしも十分ではないのに、周囲からの十分なサポートを受けていなかったこと。3番目は、内部のチェック機能が働かず、提案票に「ワクチン」という言葉が書いてあったにもかかわらず、これを認識していたスタッフがほとんどいなかったこと。4番目は、大切な家族を亡くした遺族3人の声を短く切り取って合計24秒で伝えるという編集の仕方が、「人の死」を巡る情報の扱い方としてあまりに「軽かった」のではないかという指摘だった。
続いて米倉委員が「結果論になるかもしれないが、ご遺族の方々をいわば、だますような形で放送が出てしまった」と指摘した。そのうえで、NHKの中で「徹底して議論し考えるという雰囲気のようなものが、もしかしたら欠如してはいなかったか」などと述べた。大村委員からは、小町谷委員長と米倉委員の発言を補足する形で、ジャーナリズムを担う者として備えるべき現実社会への知識、関心、そして問題意識の低下という事態が進行してはいないだろうかという危惧が述べられた。このあと、以下のような質疑応答があった。
〇質問・委員会は、NHK内のサポートに関することを最も重要な問題であると
考えているのか。
回答・取材者の経験が必ずしも十分でなかったのであれば、そのサポートが
十分だったかを調べることになる。それも不十分だったとなれば、
かなり重要視することになる。
〇質問・VTR制作の担当者と遺族の間で認識が食い違っていることを、委員会は
どのように捉えたのか。
回答・放送倫理の観点からすれば、やはり取材者側に十分な説明責任がある
ということになる。
記者会見は約1時間15分で終了した。
以上