青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第257回

第257回-2023年5月

「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」など

2023年5 月23日、第257回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ7人の委員が出席しました。
委員会では、先月議論された「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」が行われました。
4月後半から5月前半までの約1か月の間に寄せられた視聴者意見の中では、バラエティー番組で挿入された、性的虐待と見られかねない映像について議論しました。
5月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年5月23日(火) 午後4時00分~午後6時00分
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」

委員会では、先月議論された「バラエティー番組の中で、実在の幼稚園でかくれんぼをした際、隠れた園児が見ず知らずの子どもに入れ替わって、鬼役の子どもを困惑させたドッキリ企画」に関して、放送局側が番組制作のプロセスや放送後と今後の対応について説明した文書をもとに「討論」が行われました。
委員から、「委員会の質問に対して非常に詳細に答えてあり、誠実に対応してもらった」と評価する意見や、「子どもの心理問題に関わる者にとって、子どもに対して心理実験的なことはできないというのが常識である、むしろ番組制作に積極的に協力した幼稚園側の対応に驚きを感じた」との指摘がありました。別の委員は「番組制作の過程で、誰からも『この企画は大丈夫か』という疑問が呈されなかったことが不思議に思えるし、今後の課題だろう」とした上で、「『(子どもの発達段階の)専門家のもとで学ぶ機会を設ける』という局側の説明が今後のポイントになる」と述べるなど意見が出尽くしたところで、「討論」は今回で終了となりました。

視聴者からの意見について

4月後半から5月前半までの約1か月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組の企画の中で、家族がスマートフォンで撮影したパジャマ姿の父親が娘にまとわりつく映像を放送したところ、視聴者から「性的虐待としか言えない映像だ」「気持ち悪い、見なければよかったと感じた」などの意見が寄せられました。
担当委員は「親子だから許されるという受け止め方をされるのは、どうかと思う」と述べ、別の委員は「娘といっても今回は19歳(の成人)だが、日本では子どもに対する性的な関わりが大目に見てこられた背景がある」と指摘し、「そろそろユニバーサル・スタンダード(世界標準)で考える必要があり、その観点からは課題のある映像だろう」という見方を示しました。
しかし、約1か月遅れの東京地区での放送では、放送局側が当該映像部分を削除したことを踏まえて、「削除の経緯は不明であるが、局側が適切に対応したのだろうと理解する」という声も出されました。
これらを受けて、「性的虐待と見られかねない映像には、もう少し鋭敏な意識をもって番組制作にあたるべきだ」ということを総括として議論は打ち切られ、「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

5月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。いくつかの番組を比較したモニターも多く、「マイナンバーをめぐるトラブルのニュースはもっと詳しく説明するべきだ」、「地震直後の報道について考える必要があると思う」などの意見が寄せられました。
「自由記述」では「テレビとラジオがタッグを組んでそれぞれの魅力を発信したらいいのではないか」、「街頭でのインタビューは幅広い年齢層に聞いてほしい」といった声が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では『君の声が聴きたい-“考える”を始める-』(NHK総合)、『THE DANCE DAY』(日本テレビ)、『沼にハマって聞いてみた』(NHK Eテレ)などに複数のモニターから感想が寄せられました。

◆モニター報告より◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • 『朝メシまで。ゴールデンSP』(テレビ朝日)

    新幹線のレール作業員の取材ではふだん見られない場所に密着していて興味をひかれる内容だった。効果音も効いていてドラマのような感覚で見ることができた。緊迫感も映像で表現されていて良いと思った。(中学2年・男子・埼玉)

  • 『放送ワイド 記者の力』(テレビ西日本)

    毎回キャスターの川崎健太さんが現場へ出向いて生の声を取材するコーナーがある。非常に新鮮で、具体的で身近な現象としてダイレクトに伝わる。(中学1年・女子・福岡)

  • 『THE TIME』(TBSテレビ)

    野球では試合の珍プレーや話題の人などいろいろな情報を伝えていて、スポーツの取り上げ方がいいと思いました。関心度別にニュースを紹介するコーナーで視聴者の意見があるのはいいのですが、意見の年代が偏っていたり専門家の意見がなかったりするのは気になりました。(中学2年・女子・栃木)

  • 『ラヴィット!』(TBSテレビ)

    とても面白く、一日が楽しくなりそうでがんばれそうだった。番組を面白くしよう、自分が楽しもうと全力で取り組んでいる姿勢がとてもいいと思った。それぞれが自分の役割を認識していて構成も良かった。(中学2年・女子・福井)

  • 『news zero』(日本テレビ)
    • マイナンバーをめぐるトラブルのニュースは報道時間も短く簡単にまとめられていましたが、このニュースこそ国民への影響が大きいため時間を掛けて詳しく説明するべきだと思います。自分のマイナンバーカードの情報を「マイナポータル」で確認できますと軽く流されているように感じました。(高校3年・女子・京都)

    • 連続放火事件について上空からの映像を使っていて分かりやすかった。(芸能事務所の創設者による)性加害について情報を隠すことなく丁寧に説明をしていいと思った。(高校3年・男子・千葉)

  • 『news zero』(日本テレビ)、『news23』(TBSテレビ)

    本人が亡くなり本当はどうだったのか詳しく分からないなかでの性加害の報道は世の中の人を混乱させてしまうのではないかと思う。でも性加害はあってはならないことなので、これから被害者を減らしていくためにも対策を立てる必要があると考える。未成年者が打ち明けにくい理由を専門の人が解説したり街頭インタビューで一般の人の意見も取り入れたりして自分と違う意見を聞くことができて良かった。それぞれ同じことを報道していても少しずつ報道の仕方が違ったり見出しが違ったりしたのが印象的だった。(中学2年・女子・東京)

  • 『よんチャンTV』(毎日放送)

    とくに好きなのはJR大阪駅から道に迷っている人を目的地まで案内するコーナーです。毎回、個性あふれる人が案内されるのがおもしろいです。(高校1年・女子・京都)

  • 『イチモニ!』(北海道テレビ)

    カヌレ専門店について食リポをする際、何人かの女性アナウンサーが一緒に試食することになった。それぞれ違う種類のカヌレの味を伝えていたため1人がリポートするより視聴者は飽きずに見られ、偏りなく感想を伝えるメリットがあったのではないかと思う。(高校1年・女子・北海道)

  • 『どさんこワイド』(札幌テレビ)、『イチオシ』(北海道テレビ)、『報道ステーション』(テレビ朝日)

    今回の熊の事故も、人が襲われるという事例が出てから全国ニュースでも対策が報じられた。私は事故や事件が起きる前に対策を知ってもらうべきではないかと考える。日々さまざまな観点から、起きそうな事故や事件を例に挙げて対策を考えていくコーナーを作ってはどうかと思う。視聴者からリアルタイムで意見を募集して全国で共有しあってもいいと思う。(高校1年・女子・北海道)

  • ≪地震発生時の各局の報道対応について≫ (7番組を視聴)

    災害発生直後の報道について各局考える必要があると思う。番組中、新着情報がなく同じ情報を繰り返している。被災地にいる人への電話取材は、見ていて不快になるものがあった。大変な中で取材を受けてくれている方に対して誠意を感じられないアナウンサーやキャスターもいた。決まっていることを一方的に聞くだけや何度も同じことを聞くのはどうなのかと思う。(高校3年・女子・北海道)

【自由記述】

  • 友達はラジオどころかテレビすらほとんど見ないと言っていて、とても驚きショックだった。このままではどんなに良い番組を作っても聴いてくれる人や見てくれる人がいなくなるのではないかと不安になった。だからこそラジオとテレビでタッグを組んでそれぞれの魅力を発信したらいいと思う。(中学3年・男子・広島)

  • 週に1回くらい、いろいろなテレビ局が合体してニュースをやると面白いと思いました。(中学1年・女子・千葉)

  • 街の人へのインタビューなどで特定の年齢へのインタビューが集中しているように思うので、幅広い年齢層にインタビューをしてほしい。(中学3年・女子・広島)

  • 今年度から放送しているNHKラジオの夕方の時間帯の朗読番組が、夕方の落ち着きたくなる気分に合っていてとても良いのでぜひ続けてほしい。(中学2年・男子・東京)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『沼にハマってきいてみた』(NHK総合)
    • 物理部と原宿通いに密着していた。デコラファッションの存在は知ってはいたが、そのファッションによって人とのつながりが生まれていることに驚いた。沼にハマるほどハマったり好きになったりするものがあまりないので、1つのことを極められる人を改めてすごいと思った。(中学2年・女子・東京)
    • 好きなことを探究してたくさんの人とコミュニケーションを取り、知らなかったことを知って自分の可能性を広げているようで素敵だと思いました。(中学3年・女子・福岡)
    • ことばはなくても共感することでつながれる、好きなものが同じというだけで仲良くなれることを知った。(中学1年・女子・福岡)
  • 『君の声が聴きたい-“考える”を始める-』(NHK総合)
    • 「若者は政治に関心がない」と言われがちだが、そうではなく政治に参加しても声を聴いてくれないから意味がないと思っている若者が多いということだ。私はここにすごく共感した。この番組によって若者の心が少しでもポジティブになったと思う。(高校1年・女子・北海道)

    • 学校や家などいろいろな場面で子どもや若者の幸せを考えてくれていて、とてもうれしい気持ちになりました。子どもや若者の悩みや声には共感できるものが多くありました。そうした悩みを解決するため「違う道もあるよ」という選択肢を広げてくれたので、とても気が楽になったし、世界が広がりました。(中学2年・女子・栃木)

  • 『THE DANCE DAY』(日本テレビ)
    • 出場チームの皆さんの息の合ったダンスには目が離せなくなるほど引き込まれました。自分もできるなら会場に行ってみてみたいなと思いました。(高校3年・男子・神奈川)

    • この大会の面白いところはダンスのジャンルにまったく制限がないところだった。練習風景の映像が流れてきたときには、ゼロから100%までひたすら練習して素晴らしい演技を作りあげていったのだと実感し、すごく心を打たれた。同年代の高校生がとても輝いていたのを見て私ももっと部活頑張ろう!と思わせられた。(高校2年・女子・愛知)

    • ストーリー性のあるダンスが多く、ただステップするのがダンスではないということに気づかされました。そうしたダンスの構成は運動会でも参考にできる部分が多いと思いました。(高校2年・男子・山形)

  • 『かごんま未来ノート』(鹿児島テレビ)

    身近な課題を分かりやすく短くまとめていて良かった。地域の人たちが交流しあうだけでなく町の未来を考える様子は、今までになく新しい取り組みに感じた。番組の主題がはっきりしているところもよかった。(中学2年・男子・東京)

  • 『マジックアワー 天空が魔法にかかるとき』(NHK BS4K)

    日頃じっくり見ることがない空の現象について紹介するのは、空の素晴らしさを改めて知る機会としてよいと思いました。夕焼けはなぜ赤いのかや地球の影についてなど、さまざまな空の現象が起こる理由を説明していたので大変ためになりました。(中学2年・女子・愛知)

◆委員のコメント◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • ニュースを紹介するコーナーの視聴者意見について「年代が偏っていることが気になる」という意見があった。放送で視聴者の意見を盛んに伝える一方で、若い人の中には「自分たちの見方を代表していない」ととらえてほかのメディアへ移ってしまう可能性もあると思った。

  • 地震直後の報道について批判的な視点からの意見が寄せられ、テロップの表示の仕方など具体的な提案もあった。余震のおそれがある発災直後の電話インタビューなどへの指摘は、確かにそうだなと思うところがあった。

  • 若い世代はニュースを主にネットなどで入手しているのかもしれないが、放送番組を比較して見た人たちは、それぞれの番組の視点の違いに素早く気づいたようだ。そうした視点の違いは報道の自由度につながるもので大事なことだと思う。

【自由記述について】

  • 「テレビとラジオでタッグを組んでそれぞれの魅力を発信してはどうか」という提案は、若い世代があまりテレビを見ない、ラジオを聴かないという現状と、一方でそれを危惧する若者がいることをくっきりと見せていて印象的だった。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『マジックアワー 天空が魔法にかかるとき』を見て感動したという感想があった。日の出や日の入りを実際に見たことがない子どもがかなりいるとも聞くが、テレビ番組が「天空を見上げる動機を与える」役割を果たしうるということを感慨深く思った。

今後の予定について

次回は6月23日(金)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開く予定です。

以上

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