テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表
上記委員会決定の通知は、9月2日午後1時30分から、千代田放送会館7階の会館会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、高田昌幸委員の3人が出席し、テレビ朝日からは常務取締役(報道局担当)ら4人が出席した。
まず、神田委員長から、委員会決定について、本件特集には放送倫理違反があると判断したことを伝えた。その理由として、本件特集の主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当ディレクターの知人らだったうえ、ロケがあることを事前に知って取材の舞台となったスーパーに来店していたのであり、偶然に出会った利用客ではなかった。このことからすれば、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていたと説明した。
続いて升味委員長代行は、「本件特集の制作会社はテレビ朝日と密接な関係があり、その報道部門を支えてきたともいえるところから、仲間意識もあってできた番組を受け取るときの考査、検収の意識が薄くなっていたのかとも思われる。対応策に示されているように今後は十分注意してほしい」「今後の対策として、本来なら準備に手間も時間もかかる人間ドキュメントを報道番組内で毎週のように定期的に放送していくことの難しさを認めて、このような番組制作を再検討するという点は、他局を含め多くの関係者に参考になるだろう」と述べた。また高田委員は、「今回ほど引き返すチャンスがたくさんあった事案は滅多にないが、それを生かせなかったのは残念」「番組に関わった多くの人が疑問を感じていたことが判明しており、仮にそれらの疑問が全体で共有されていればブレーキがかかったのではないか」「同僚や上下関係の中では仲間を疑うことに躊躇しがちだが、疑うことは確認することと裏表なので怠ってはいけない」とコメントした。最後に神田委員長から、偶然を装って故意に登場させたという点において、過去の類似の事案と比較して重い点があるとの補足説明がなされた。
これに対してテレビ朝日は、「今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります」「視聴者の皆様の信頼を回復すべく、引き続き再発防止に努めてまいります」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社31人が出席した。
はじめに神田委員長が委員会の判断について、「本件特集は、偶然に街で出会った人から話を聞き、その暮らしや人生模様を描き出し、ごく平凡に見える人の思いがけないドラマやエピソードを視聴者に伝える報道番組内の特集である。しかし、主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、担当した契約ディレクターの生徒や知人だったうえ、本件特集のロケがあることを事前に知って舞台となったスーパーに来店していたのであり、いずれも偶然に出会った利用客ではなく、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない『客』を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた」と評価をして、放送倫理違反があったと述べ、意見書の構成に沿ってその概要を説明した。
続いて升味委員長代行が、「視聴者にとっては面白かったり楽しかったりした前提が全部崩れてしまうということにもなるし、報道番組としての事実を伝えるという点でも非常に問題があった番組だったと思っている」と述べた。高田委員は、「制作の各段階で疑問を持ったスタッフはいたが、それが共有されなかった点がポイント。取材において疑うことは確認作業と同じであり、それをしていれば本件は起きなかったのではないか」と述べた。
記者からの質問は、事実関係の確認に関するもの以外、特になかった。
以上