第278回 – 2020年2月
「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案のヒアリングと審理…など
議事の詳細
- 日時
- 2020年2月18日(火)午後3時~8時45分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案 ヒアリングと審理
2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理
3.「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」事案の審理
4.「大縄跳び報道に対する申立て」事案の審理
5.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」通知公表の報告
6. その他 「運営規則の改正」等 - 出席者
- 奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員
1.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案 ヒアリングと審理
フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱った放送であり、父親の死が利用され遺族として名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。フジテレビは、速報情報を扱う生放送の制約の中で、複数の執行情報などを分かりやすく伝えたものであり、申立人の人権を侵害していないなどと反論している。
今委員会では、申立人と被申立人にそれぞれヒアリングを行った。
申立人は、フリップやシールを使って執行情報を伝えたことや出演者の発言などについて、見せ物として面白く見せようとする意図が感じられ、人命を扱う報道という意識に欠けている、などと訴えた。
フジテレビは、死刑執行をショー化する意図はなく、執行情報を伝えた方法や表現には必要性、相当性があり、放送倫理上の配慮も十分行った、などと説明した。
ヒアリングに続いて審理を行い、担当委員が決定文の起草に入ることとなった。
2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理
本事案は、テレビ埼玉が昨年4月11日の『NEWS545』で放送した損害賠償訴訟のニュースを巡り元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」と、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張している。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。またテレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実として、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、決定文の修正案について審理を行った。起草担当委員が前回の審理の内容を踏まえどのように修正を加えたかを説明し、続いて論点の各ポイントについて意見を出し合った。この議論を元に、さらに決定文の修正を行い、次回委員会で改めて審理することになった。
3.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の審理
札幌テレビ(STV)は、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。番組では、男性が家で申請書類を記入するところや、北海道庁での申請手続きなどの様子を放送した。この放送に対して、取材の対象となった男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求め申立書を提出した。
一方の札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものだとして、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
今委員会までに双方からの書面が整い、委員会では通常どおりヒアリング開催に向けて手続きを進める方針が示された。しかし、手続きを進めるうえで確認すべき事項が指摘され、事務局において確認の上、次回委員会で改めて検討することになった。
4.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案の審理
今委員会では、まだ双方から必要な書面が整っていない状況が報告され、実質的な審理は行われなかった。
今事案は、フジテレビが2019年8月30日の『とくダネ!』で放送した都内の公園で大縄跳びが禁止された話題に対するもの。放送は、近所の進学塾が生徒たちに暗記手段として大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えさせていることに、周辺住民から苦情があり、行政が公園での規制を始めたことを紹介した。番組では、周辺住民が「本を読んだり、集中する日には、うるさいと思う」などと答えるインタビューが紹介された。
この放送に対して、このインタビューに答えた女性が、犬の散歩中に突然見知らぬ女性からマイクを向けられ、大縄跳びの騒音問題について聞かれた。「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに誘導尋問され、勝手に放送に使われ、「懇意にしている進学塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。
5.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」通知公表の報告
この事案に関する委員会決定第71号は2月14日に申立人と被申立人であるテレビ東京に対して通知され、通知後に記者会見を行い公表された。その報告とともに、委員会決定についてテレビ東京が報道した放送内容が紹介された。
6. その他
委員会運営規則に関する議論
運営規則の改正に関して委員会は、「苦情の取り扱い基準」を中心に検討を進めてきた。議論の焦点は、委員会として取り扱う事案について、これまでどおり委員会の審理を経てその都度決定することを前提としながら、委員会が審理対象としない決定をすることができるような明文規定を設けることにあった。第274回委員会から5回にわたる議論の結果、今委員会で委員会としての改正案がまとまり、これを決議した。今後改正案は、3月初めの理事会に諮られ、承認を得たうえで年次報告会で会員社に報告、ウェブサイト掲載などで一般に告知し、新年度から施行する予定。
以上