放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2019年12月10日

読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、12月10日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、長嶋甲兵委員の4人が出席し、読売テレビからは常務取締役(コンプライアンス、技術担当、社長担当補佐)ら3人が出席した。
委員会決定について升味委員長代行は、「プライバシーの観点から、取材でここまで踏み込まずにどこかで止まって欲しかった」と述べた。岸本委員は、「本件は多くの放送局にとって共通の課題だと思うが、放送後の対応には目を見張るものがあった」と述べ、また長嶋委員は、「報道と情報バラエティの境がなくなりつつある中で、良識のようなものが混乱している」と発言した。最後に神田委員長から、「意見書の冒頭に番組内で叱責した出演者の発言をあげたが、その内容には大変重いものがあり、その後の自主・自律的な対応につながったと言えよう。意見書だけではなく、その言葉を、今後の教訓として自局内で問い続けていってほしい」とコメントした。これに対して読売テレビは、「意見を真摯に受け止め、今後の番組作りに生かしていく。放送後、番組制作体制の強化とともに全社的な研修会を開催して人権意識の向上に取り組んでおり、今後も再発防止と信頼回復に努めていく」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社44人が出席した。
はじめに神田委員長が、「問題の放送は、特に性的少数者の人権や当事者の社会的困難への配慮が課題として議論されている時代に、もっとも感性が鋭敏であるべき放送が、著しく配慮を欠くやり取りを放送した点で看過できない問題があり、民放連の放送基準(3)に反し、放送倫理基本綱領や民放連の報道指針に反する放送倫理違反があったと判断した」と述べ、意見書の構成に沿って説明を加えた。続いて升味委員長代行が、「報道番組で培ってきた人権意識や裏取りの意識を貫いて、情報バラエティの番組作りにも生かしてもらいたい。また研修や日々の現場でお互いに意見を言い合うことなどを積み重ねて、人権への関心を高めてほしい」と感想を述べた。岸本委員は、「企画を成立させる、誰かがチェックしている、といった基準ではなく、多様性の時代の社会生活における普通の感性で取材や制作をすることが課題である」と述べ、長嶋委員は、「街ブラ企画には問題を生む土壌があるなと気になった。違和感を共有する場がなかった点も踏まえて、新たなワークフローの形を考える必要があるのではないか」と述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 特に性的少数者の人権などが議論されている時代、と委員会の判断にあるが、放送倫理違反があったとする今回の意見に時代背景が影響したとの認識でよいか。
A: プライバシーに関しては、性的少数者の当事者だけではなく、その背後にいて告白できない人たちも含めて守っていかねばならない時代であり、それを前提にして放送基準を理解しないといけなく、その解釈の中に時代は影響してくる。(升味委員長代行)
   
Q: この放送に関わってヒアリングの対象となった13人のうちで、女性は何人いたのか。
A: 2人。役職者ではない。(升味委員長代行)
   
Q: 感度の高いアンテナを張るよう期待するとあるが、その反面で気にし過ぎて萎縮して自由な表現ができなくならないか。そのバランスに関してはどう考えるか。
A: 出演者に言われてその重大性に気付いたが、出演者に言われるまで気が付かなかった、そのギャップの大きさの理由を知りたかったが、必ずしも明らかにならなかった。そこで、今後、感度の高いアンテナを張る必要性に触れたが、今回の事案や意見書の内容が今後の番組制作を萎縮させるようなものだとは考えていない。むしろ、放送に至るまでの間に、放送倫理に照らして議論をすることが必要であったと思う。(神田委員長)
  萎縮というのは、どこに触れたらいけないのかがわからない時に起こるものであり、研修などで知見を広めることによって、伸び伸びと制作することができるのだと思う。(岸本委員)
  気付いている人もいたが共有する場がなかったり、判断するのが1人の統括プロデューサーに任されていたりした点は、違和感や問題意識を丁寧に拾い上げるようなシステムではなかったということで問題である。(長嶋委員)
  自分が知るということがまずは大事だが、自分の関心事だけではなく現場の色んな人と意見交換をする場を持ち、別の見方があることを指摘され、それで知識が広がっていくと思う。(升味委員長代行)
   
Q: 意見書を読むと違和感を持った人もいたようだが、声を上げられなかったのは、仕事に追われていたとか放送時間が迫っていたとか、気持ちの面での弱さのようなものがあったのかどうか、ヒアリングで聞く機会はあったのか。
A: 元々ダブルチェック体制だったが1人の統括プロデューサーに任され、彼がコンプライアンス意識も高く上司や部下からの信頼も厚くて、何となくスルーしてしまった感じである。(長嶋委員)
  時間に追われているというようなことはなかった。前提として2部は問題が起こるようなことはないという油断があった。そして制作の過程で違和感を感じたスタッフもそれを共有し反映する場がなかったことがあげられる。(升味委員長代行)
   
Q: チーフプロデューサー(CP)と統括プロデューサー(統括P)について、CPは役職名で何人かいるプロデューサーの中から任命されていると思うが、統括Pもそのような認識でいいのか、それとも何人かを束ねる立場なのか。また、生放送時に対応すべきは統括Pであると定められているのか。
A: 番組には統括Pが2人いて、1部と2部それぞれを統括している。放送中に対応するのは統括Pである。(升味委員長代行)
   
Q: 放送を見ていないので教えてもらいたい。性別を表明していない客にどう接したらいいか悩むご主人というテーマで、興味本位だけの企画ではないと思っていたのだが、現実的にはどんな内容・コンセプトだったのか。
A: お好み焼き屋の店前をよく通る犬を連れた人が、男か女かわからないというお店の女性の悩みに対してお笑い芸人が応えるという内容。(長嶋委員)
(*回答を聞いて、質問者が勘違いしていたとの返事あり)
   
Q: もし同じ内容の企画がバラエティ番組で深夜の放送だとして審議されたら、同じ見解になるのか。
A: 私たちが解答を述べることは控えるべきであり、まさに放送局がその番組がどのような内容であるかを踏まえて自主的・自律的に判断してほしい。(神田委員長)

以上