放送人権委員会

放送人権委員会 ニュース・トピックス

2016年8月16日

「都知事関連報道に対する申立て」審理入り決定

放送人権委員会は8月16日の第238回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日に放送した情報番組『Mr.サンデー』で、舛添要一東京都知事(当時)の「政治資金私的流用疑惑」に関連して、舛添氏の資金管理団体が、ファミリー企業である舛添政治経済研究所に事務所家賃を支払っていた問題をテーマの一つとして取り上げた。番組は、同研究所の代表取締役で夫人の雅美氏を取材するため、同月20日朝、番組クルーを舛添氏の自宅兼事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
この放送に対し、親権者である舛添夫妻は代理人を通じてフジテレビに5月25日付で書面を送り、未成年の長男と長女を執拗に撮影したことは肖像権の侵害に当たると主張、また雅美氏の発言を「作為的に編集、放送した」等と抗議した。これに対しフジテレビは6月2日、長男、長女への「執拗な撮影はしていない」、雅美氏の発言は「ノーカットで放送されており、作為的編集・放送はしていない」等とする回答書を舛添氏代理人に送付した。
これを受けて、雅美氏と二人の子供は6月22日付で人権侵害を訴える申立書を委員会に提出(要一氏、雅美氏は子供両名の法定代理人親権者)。本件放送は雅美氏が「視聴者から誤解を受けるよう仕向ける行為であり、視聴者をも欺く」作為的編集、放送だったとして、番組内での謝罪、作為的な編集と未成年者に対する撮影の中止、放送局としての姿勢の改革、再発防止のための抜本的な改善策の策定・公表を求めた。
申立書は、番組カメラマンが自宅前で長男を執拗に撮影したため、雅美氏が「子供を映さないでください」と何度も抗議したが、その部分は放送ではカットされ、その後、執拗な撮影に対し「いくらなんでも失礼です」と抗議しているにもかかわらず、「それが、視聴者にはわからないように、あたかも同社リポーターの家賃についての質問に答えているかのように、都合よく、カット編集されて、放映された」としている。
さらに二人の子供への撮影行為については、「1mくらいの至近距離からの、執拗な撮影行為により、未成年者である長男と長女は、衝撃を受けた。そのため、両名は、これがトラウマとなり、登校するために、家を出る際、恐怖感を感じ、時には、泣いて家に戻ることもある」と訴えている。
この申立てに対しフジテレビは8月9日、「経緯と見解」書面を委員会に提出、申立人が指摘している放送部分は、「家賃収入に関する女性ディレクター(申立書ではレポーターと記載)の質問から雅美氏の回答部分を一連の流れとしてノーカットで放送したもので、その際には、女性ディレクターの質問の音声の場所を動かすなどの加工も一切していない」として、「申立人が主張するような作為的編集、放送は一切ない」と反論。そのうえで、雅美氏の「いくらなんでも失礼です」という発言については、「早朝であること、アポイントメントを取っていないことなど雅美氏への我々の取材姿勢について『失礼』という発言につながったと理解していている」と述べた。
またフジテレビは自宅兼事務所周辺の取材の主な目的は雅美氏への質問にあり、「取材スタッフには長男、長女を撮影するという意図は全くなく、二人に対する執拗な撮影行為など一切行っていない」と主張。そのうえで、番組では長男、長女の映像は一切使用しないという判断をしたことから、「雅美氏が子供の取材について言及した一連の発言は、当然放送では使用しなかった」と主張した。
長男に関しては、「雅美氏を撮影していた際に、ごく短時間映り込んでしまったものにすぎず」、長女については、「雅美氏を撮影する意図で撮影を開始したところ、2階出入口から出てきたのが長女であったために即座に撮影を中止した」と反論した。
このほかフジテレビは、家賃問題など一連の疑惑において、「金の流れの鍵を握る重要なキーパーソンが雅美氏であり、単なる『家族』ではなく、政治資金の使い道についての説明責任がある立派な『当事者』で、雅美氏を取材することについては、『公共性公益性』が極めて高いと考えている」と、主張している。
委員会事務局は申立人と被申立人に対し、話し合いによる解決を模索するよう要請したが、不調に終わり、申立人代理人から7月26日、改めて「委員会の判断を仰ぎたい」との申立人の意思が事務局に伝えられた。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。