放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第81回

第81回–2014年4月

「全聾で被爆2世の作曲家」と称していた佐村河内守氏の作品が別人のものと発覚した問題を討議。次回も討議を継続。

第81回放送倫理検証委員会は4月11日に開催された。
冒頭、BPO規約25条に従い、川端委員長が、任期を終えて退任した水島委員長代行の後任に是枝委員を指名した。
4月1日に通知・公表を行ったフジテレビの『ほこ×たて』「ラジコンカー対決」に関する意見について、記者会見での質疑や当日の報道などが報告され、若干の意見交換を行った。
委員会が1月に通知・公表した「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」に対して、当該2局から提出された対応報告書を了承し、公表することにした。
"全聾で被爆2世の作曲家"と称していた佐村河内守氏の作品が、別人のものだったことが発覚した問題について、NHKおよび在京民放キー局から新たに提出された6本の番組を視聴したうえで討議を継続した。その結果、この6本の番組の取材・制作過程についても当該局に詳しい報告を求め、次回委員会でさらに討議することになった。

議事の詳細

日時
2014年4月11日(金)午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、是枝委員長代行、斎藤委員、渋谷委員、
藤田委員(新任)、升味委員、森委員

1.フジテレビの『ほこ×たて』「ラジコンカー対決」に関する意見を通知・公表

フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(2013年10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚し、当該局はその事実を認めて、番組を打ち切った事案。同じように不適切な演出上の問題があったと当該局が認めた2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて スペシャル』とともに審議が続けられていた。
4月1日、委員会は当該局に対して、委員会決定第20号の意見を通知し、続いて公表の記者会見を行った。当日夜のテレビニュースなどを視聴したあと、委員長や担当委員から記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2.「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」への対応報告書を了承

1月8日に委員会が通知・公表した「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」(委員会決定第17号)に対する対応報告書が、関西テレビとテレビ熊本から4月初旬までに委員会に提出された。
関西テレビの報告書では、再発防止に向けて「選挙報道の原則の周知徹底」や「チェック体制の見直し」などの取り組みを継続すること、意見書の趣旨を周知するために放送倫理セミナーなどを開催したことなどが報告された。
またテレビ熊本の報告書では、「全社的な意識改革」や「チェック体制の強化」のための具体的な対策をさらに推進していくこと、BPO研修会を開催して意見書の趣旨の周知徹底に努めていること、今年4月から放送部の分離移管という組織改正を実施したことなどが報告された。
委員会は、両局の対応報告書を了承し、公表することにした。

3.「全聾で被爆2世の作曲家」と称していた佐村河内守氏の作品が別人のものと発覚した問題の放送責任などについて討議

全聾で被爆2世の作曲家と称していた佐村河内守氏の作品が、別人のものだったことが発覚したことから、同氏をドキュメンタリーなどで紹介した番組の放送責任などについて、討議を継続した。
NHKおよび在京民放キー局からは、これまでに、佐村河内氏を扱った7本の番組の映像が提供され、このうちの1本については放送に至る経緯をまとめた報告書も提出されている。
各委員は事前に、これらの番組と、NHKが3月16日に自局の情報番組内で放送したこの問題に関する調査報告(約7分半)を視聴したうえで討議に臨み、委員会として、どんなことを、どんな形で言うことができるのか、あるいはできないのかについて意見を交換した。
その結果、長期間全聾の作曲家を演じ続け、虚偽の自伝まで出版していた事案なので、裏付け取材を適正に行えば嘘を見抜けたとして放送倫理違反を指摘するのは適切でないかもしれないが、一連の放送が佐村河内氏の創り上げた「物語」を相互に補強し増幅させてしまったため、それを信じて放送に協力した人々の心に傷を残す結果になったことについて、委員会として何らかの形で考えを示すべきである、という点で意見が一致した。
そこで、残る6本の番組についても、取材から放送に至る過程を中心に、各局に詳しい報告書の提出を求め、次回の委員会でさらに討議を続けることになった。

[委員の主な意見]

  • 放送局が異なっているにもかかわらず、演出や編集内容は非常に似通っているものが多かった。なぜ、ここまで似たような内容のものになったのだろうか。各局の独自取材は、どこまで行われたのだろうか。

  • 結果として番組が、巨大な音楽・出版ビジネスの構造に組み込まれ、加担した感は否めない。言い換えれば、放送が佐村河内氏の創り上げた「物語」を増幅させてしまったと言えるのではないか。

  • 美談に利用された子どもたちのことについて、これまでに提出された各局の報告の中にはほとんど言及がないが、どのように考えているのだろうか。きちんとした反省が必要ではないだろうか。

  • 委員会に付与された権限の範囲内での調査では、詳細な真実を明らかにするには限界があるのではないか。別の視点で何が言えるのかを議論するためにも、残る6本の番組の取材から放送に至る過程の報告書を求めたい。

以上