BPO_20周年記念誌
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078しても。冒頭で紹介した三浦氏は結局、アフリカに残された日本人の子どもたちの話を社内事情によって勤務先の新聞で発表することができなかった。授賞式のスピーチで最後、彼はこう語る。「……でも一方で、やはりおかしいと感じてくれた編集者の方々や出版社の方々が、この難しいテーマを書籍として世に送り出してくれた。そしてこの作品に対して、本日、このように、立派な賞を与えてくれ、世に広めてくれた人たちがいました。どうもありがとうございます」「私はこの一連の連鎖に、この国に脈々と引き継がれてきた文化的な強きょう靭じんさを垣間見たような気がしています。たとえ、一つの方法ではうまく世に問えなくても、別のルートによって、問題を世に提起することができる。この多様性がうまく機能した結果、アフリカにおける日本人残留児の問題は、いままさに社会に提起され、後継企業によって、支援の枠組みに関する話し合いが始まっています」「小説が読んだ人の人生を変えていくものだとするならば、事実によって物語るノンフィクションというものは、社会や時代を大きく変えていく力があると私は思っています。大切なのはいつだって、勇気であり、誠実さです」三浦氏のスピーチにある「ノンフィクション」を「放送ジャーナリズム」という言葉に置き換え、多くの放送人に贈りたい。

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