BPO_20周年記念誌
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077BPOの20年 そして放送のこれから放送そしてBPO 14のメッセージ要因の一つは、労働基準監督機関に記者クラブがなく、役所側も警察のように懇切丁寧に「記者発表」をしないからではないのか? もし労働基準監督機関に記者クラブがあり、記者が常駐し、いろいろな事案を個別に記者発表し、警察取材のようにその狭い範囲での取材合戦が続いていたら、労働事件をめぐるニュースの状況は大きく変わっていたと思う(閉鎖的な記者クラブを作れと言っているわけではない)。放送人が自らに発する「内なる問い」が、今ほど重要な時代はない。取材・報道のプロセスは年々可視化され、取材方法や質問の内容はSNSを駆使する市民によって厳しい評価の対象になる。誰かに遠慮したかのような質問には「忖度だ」との声が飛ぶ。放送人ひとりひとりも、取材の現場も、番組そのものも、常に「晒されている」のだ。では、そうした批判を恐れ、無難な番組をつくり、首をすくめるようにして日々を過ごしていく――のか?米CBSの看板ニュース番組『60ミニッツ』を題材にした米国映画『ニュースの真相』(原題「Truth」)の中に、こんなセリフがある。著名なアンカーマンのダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)が移動中の機中で若いジャーナリストに向かって言う言葉だ。「質問することは重要だ。『やめろ』と言われたり『偏向だ』と批判されたりしても、質問しなくなったらこの国は終わりだ」自由を得るには、質問をやめてはいけない。取材相手に対してだけではなく、組織内の同僚や上司に対

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